見出し画像

新人育成は「特化」あるのみ

こんにちは。ラクロス監督の陽一です。

◎テーマ
新人育成はシンプルに考えて


◉今回の内容は

今回は「新人育成」で僕が大事にしている考え方をお話したいと思います。

ちなみに、これを書いている6月1日現在、岩手大学はいまだに活動禁止が続いています。(もう半年くらい活動禁止されてます)
大会等の特別な理由があれば別のようですが、授業はすべて対面、そして食堂は毎日超密な状況にも関わらず、なぜか課外活動だけが禁止というおかしな対策がとられています。
当然新歓活動も禁止なのでまともに勧誘できず、新入部員は現在選手6名、スタッフ1名のみです。制限ではなく禁止なのがツラい。。

と、岩大はこんな状況なので、今はまともな指導ができないのですが、もし僕が今から指導するならこんな風にするよ、というのを今回はお伝えしていきたいと思います。(早く活動再開してくれ。。)

僕なりの新人育成論です!

◉「特化」という考え方

さて。
新人育成論の前に、権威を示す感じで大変恐縮ですが、この育成方法がどれだけの効果を生んでいるかについてお話ししたいと思います。

僕はこの育成方法を実践し、結果として一昨年、昨年と2年連続新人戦優勝することができました。ちなみに、去年に至っては、たった6人の選手でフライなしでウィンター優勝しました。(この指導が間違いではなかったことを証明してくれた部員たちに感謝感謝です)
このように、新人戦で優勝できるくらいの効果はあるかなと感じています。

というわけで、いきなりですが新人育成の結論です。

新人育成は

「特化」させよ

です。

つまり、指導して強化したいポイントを超絞って1つ(多くても3つ)にしてしまえ、ということです。「あれもこれもやらなきゃ」なんて考えなくていいということですね。

とはいえ、世の中にはいろんなラクロス情報が出回っています。特に個人スキル系はみんな発信していて細かいものがありすぎます。
こんな情報にさらされたら、コーチとしては「何をしたらいいのかわからない」「何から教えていいかわからない」と悩んでしまうでしょう。気持ちはとてもよくわかります。
でも、そんなコーチの皆さんに僕から伝えたいのは、わからないなら絞って絞って「特化」させてしまいましょう、ということです。

チームとしてこだわるポイントを決めてしまって、集中的に強化していけばいいんです。

まさに「選択と集中」です。

◉「特化」ってこういうこと

ここからはもう少し具体的な話をします。
つまり、「特化、特化って言うけど、具体的には何をするんですか?」という話です。

が、その前にまず大事なこととして、この特化というのは
「チーム練習」に対して行う
という前提を忘れないでください。
個人をどう強化していくか?という話ではないということです。
今回の話はあくまでチームの新人育成です。なので個人の技術指導は自由にやってください。
多くのチームがここを見誤っていて、「個人に対して何をすればいいでしょうか?」なんてのは正直どうでもいいんです。
チームのコーチとして新人育成に関わるのであれば、個人のことばかり考えるのではなく、チームのことを考えて、チームの軸(決め事)を決めるところからスタートしなければいけません。

というわけで、ここからは「チームの軸を特化させる」ということで話を進めます。

順序としては、
①特化すべきものを選ぶ
②選んだ内容をチーム練習でひたすら行う

という流れです。

①についてはなんでもいいです。コーチが「これやりたい」と思うようなものでいいです。でも、できるなら「個人練習で強化しづらいもの」の方がいいような気がします。なので「パス」とか「シュート」みたいな個人が勝手に楽しんで努力しちゃう系を僕はあまり設定しません。それよりは「グラボ」とか「キープ」とか「走り」みたいな地味なやつを設定します。

例をあげると、早稲田は毎年「1ON1」に特化させてますし、岩大は一昨年が「バリエーション」、昨年は「ゲーム感覚」でした。

そして②です。
ここが超重要ですが、決めた①を徹底的に、とことんやってください。

この徹底的にとことんやるというのはどれくらいやるのかというと、
例えば、さっきの早稲田の例だと
「合宿中に1ON1をチームで1000本(7〜8日間で)」
岩大だと、
「パスキャのバリエーションは毎日30〜40種類」
「毎日ミニゲーム」
みたいな感じでした。

相当やってるのがわかるかと思います。

これが「特化」です。

◉特化のために必要なこと

ここまでで、特化の概要はおおよそ掴めたかと思います。
では、ここからはこの特化をやり続けるために必要なことをお話しします。

実はこの特化というのは集中的にやり続けることになので、継続が難しく、「飽き」がきて「こなし練習」になりがちです。

だからこそ、特化練習を続けるための方法も同時に知っておく必要があります。

というわけで、特化を続けるために必要なことです。
それは
①入部すぐから当たり前のようにやること
②チーム全体で協力すること

の2つになります。

①は意外と大事なことですが、1年生は頭も体もまっさらな状態なので、入部後すぐに行う練習に抵抗がありません。
「ラクロスの練習ってこういうものなんだ」という受け入れ姿勢ができています。
このタイミングを狙って最初から意外と厳しめの特化メニューを行うんです。
そうすると、その厳しいメニューが1年生にとってのスタートラインになるので、その後さらに厳しいメニューをしても早くに適応してくれます。「厳しいメニューが当たり前」という感覚を身につけることで徐々に習慣化させるんです。習慣化できればこれほど強いことはありません。

②は最も大事で、チーム全体がこの特化を認めて協力していかなければいけません。
これについては昨年の岩大なんかは素晴らしいなと思っていて、僕は全く指示していなかったのですが、上級生は1年生のためにほぼ毎日ミニゲームの相手をしていました。
結局新人戦直前まで1年生は上級生に1度も勝てずボコボコにされ続けましたが、結果としては優勝できました。
何より良かったのは、新人戦当日、試合前アップでも上級生vs1年生のハーフコートゲームが行われていたことです。「上級生もクロスと防具を持参」というLINEが前日に流れ、最後の最後まで上級生が1年生のために相手をしてくれていました。
こんな感じでチーム全体で1年生のために協力する体制は特化のための最高の後押しになります。

昨年の岩大の1年生が「ゲーム感覚」に特化できたのも、僕が何かしたからではなく、単に上級生が素晴らしかっただけです。ゲーム感覚を特化させたのは僕ではなく岩大の上級生でした(ベタ褒めしておきますw)

以上、特化という新人育成を行うためには「練習を続けられるメンタル(基準)の養成」と「上級生の協力」が何より必要です。

◉特化は1年生だけじゃない

最後に、僕はこの『特化』という考え方は新人育成に限らず、ある2チームを除くすべての大学チームが持つべき考え方だと思っています。

ある2チームとは昨年全国優勝したチーム(男子なら慶應、女子なら日体)のことです。
この2チームは優勝したわけですから、やり方を大きく変える必要はありません。優勝した経験値というリソースを使って同じように強化すればいいだけです。それが最も効率的に良い結果を出す方法でしょう。
逆に、それ以外のチームは「優勝できなかった」わけなので、昨年のやり方ではダメだということです。つまり、絶対何かを変えなければいけない
そして、変えるのであれば、あれもこれもと色々変えてる時間はありません。そんなことをやっていては最終的に中途半端なものが出来上がってゲームオーバーです。
やはり早い段階で「特化」するものを決めて取り組む必要があります。

◉残念すぎる「特化かぶり」

「特化」をすることは良いことです。
ですが、最近この特化に残念すぎる問題が出てきています。
(数年前からその傾向がありましたが最近は特にひどいです)

それが何かというと、どのチームも同じことをやってしまっているという「特化かぶり」です。

それがはっきりとわかったのはつい先日のことで、たまたま関東のコーチ数人と話す機会があったのですが、「うちのチームはこういうラクロスをしようとしている」というラクロススタイルがどの大学も同じだったんです。笑

まさかの特化内容がどのチームも同じというレッドオーシャン。
ちなみに、それは学生たちが主で決めているらしいので、みんな差別化を考えてないんだなということです。

「自分たちのスタイル」というものがなく、どこかの何かの情報をそっくりそのままチームに採用しているだけ。そしてそれが丸かぶりしている。

最近ロースコアの試合が多い理由がちょっとわかった気がしました。

僕としては各チームでオリジナルスタイルを創り上げて欲しいと思ってます!
そうじゃないと、人数が多くて練習環境が整ってるチームが横綱相撲で勝つだけの大学リーグ戦になってしまいます。
それでは見てる側もやってる側もつまらない。
チームそれぞれにカラーがある方が面白いですよ、絶対。
まさにランチェスター戦略。
優勝できなかったチームはみんな弱者です。弱者なりの戦い方をしましょう!

今回は以上です。
それではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?