人を導き、マチを導くコンビニを目指して
全国にあるローソンのオーナー・クルーに、マチの魅力とご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。
今回は、熊本県の4つの市で10店舗を経営する、株式会社あきん堂の坂田光智社長と、熊本砂原町店の店長を務める坂田雄哉店長の親子にインタビュー。社員さん、クルーさんを導く坂田社長と、その意志を受け継ぐ坂田店長。コンビニ経営・店舗運営を通じて、マチに残したいものとは。
コンビニで経営者として働く父、その背中を追いかける息子
本日は、よろしくお願いします。まずはお父様である社長にお話を伺えればと思います。
社長:よろしくお願いします。
社長はどういった経緯でローソンを始められたのですか?
社長:元々は酒の小売をしていたのですが、27年前にローソンを始めました。最初のお店は上天草の大矢野町でしたね。私がコンビニに業態変更しようと思った時と、ローソンがちょうど上天草に1号店を出そうというタイミングが一緒だったので、その流れに乗る形でオープンしました。
最初から複数店舗経営を狙っての業態変更だったのですか?
社長:いや、15年以上、開業の一店舗だけでした。2店舗目を始めたのは11年前で、そこから11年で10店舗まで増やしました。ローソンが複数店の経営ができるということをあまり知らなかったんです(笑)。こうやって増やしていけるんだっていうのを聞いて、そこから考え始めましたね。
5〜6店舗ぐらいになると、お店のシフトに入ると他の仕事ができなくて「これだと駄目だな」ということで、お店のシフトに自分が入らなくても、サポートできる体制を作らないといけないと考えて。そこから一気に回り始めた感じです。
そのタイミングで法人に?
社長:酒の小売業だった時から法人化はしていて。でも、体制を組み始めたのは、複数店を軌道に乗せはじめてからですね。今は、社員は10名程度です。クルーさんが130名程度で経営をしています。ほとんどの社員、店長がクルーさん出身なので、1号店からの付き合いのクルーさんもいらっしゃいます。
なるほど。では、息子さんである店長にもお話を伺いたいのですが、店長はいつからこのお店に関わり始めたのですか?
店長:4年くらい前に入社しました。それまでは東京で飲食店の共同オーナーをやっていたりして、30歳頃のタイミングで地元に戻って、この会社で働き始めました。
いつか、父親の会社に入るんだ。という気持ちはありましたか?
店長:ないと言えば嘘になりますね。個人的には「せっかく父親の会社という保険があるんだから、やりたいことを自由にやってみたい」と思って上京したんですね。でも、いざやってみると、経営者の苦労って本当に大変だなと…。
コンビニって、24時間お店が開いているので、両親のどちらかが常に家にいないことが当たり前で。コンビニってすごく忙しそうだなっていう印象で。でも、実際に経営を考える立場になると、他にも大変なことはたくさんあるなって。そこで、これだけの組織を作り上げたのはすごいと素直に思って、この会社で働きたいと伝えました。
社長:自分でコンビニ業態を選んだものの、当初考えていたよりも大変でした。やっぱり最初の店舗は田舎だったので、深夜のクルーさんっていうのがなかなか集まらなくって、私のシフトはほとんど深夜だったので。そんな姿を見せていたので、息子が自分の会社で働きたいって言われても、最初は半信半疑で(笑)。若い時は色々やってみていいよみたいなことは言っていたんですが、本当に来るの?って。でも、素直に嬉しい気持ちもありましたね。
クルーさんを導く店舗経営を目指して
でも、クルーさん社員さん10人で10店舗ということは、社員は店長さんだけ、ということかと思うのですが…。
社長:全然、人は足りていますよ。店長である社員以外は、全部クルーさん。
なるほど。信頼できる歴の長いクルーさんと協力して、という感じですかね。
店長:そういうクルーさんももちろんいらっしゃいますが、このお店は、歴の長いクルーさんは少ないかもしれません。特に夕方以降はほぼ学生さん。早い子だと、高校生でクルーになって、専門学校か大学に進学しても働いてもらって、学校を卒業すると同時にお店も卒業するみたいな感じのクルーさんが多いです。なので、育ったところで卒業していくんで悲しいという。これが学校の先生の気持ちなのかなみたいな感じです(笑)。
そうなると、育成って大変じゃないですか?せっかく覚えてもらっても、またイチから教え直しというか。
社長:クルーさんに常々言っているのは、目標を持って毎日を過ごしてもらいたいということ。本当に、ちっちゃな目標でいいと思うんです、私だったら毎日散歩3分するみたいな。そういう目標を持っていると、普段の意識・生活も変わってくると思うんですね。だからクルーさんにも、そういう目標を持ってもらいたいというのは、社員に伝えています。
店長:なので、僕らお店の社員は、まずはクルーさんと一緒に目標を考えるところから始めますね。入ってきたばっかりの子だと、目標と言われてもどうしていいか分からない子が多い。なので「〇ヶ月でレギュラークルーになろう」「最終的にはサブリーダークルーを目指そう」みたいな具体的なポジションの目標とかを決めたり。他にも学生のクルーさんって、やっぱりアルバイト代というのが一番大切だし、インパクトもあると思うので、「今月はいくらくらい稼ごう」「これくらいまで時給を上げよう」みたいなお金の目標もしっかり持ってもらって。
社長:目標を持ってもらえれば、クルーさんは自分たちから成長していこうとするんです。もちろん急激に育つ子とゆっくり育つ子といるのですが、その子なりに一生懸命に頑張ってくれるようになるし、いろんなタイプがいるので諦めずに、一緒に考えてあげないといけない。特に、学生さんだと、社会に入る一歩手前の段階だと思うので、なかなか社会に出る時の考え、心構えが最初は分からないというか。でも、レジに立つということは社会に出るということなので、嫌でもそこを考えないといけない。
そういった気持ちの部分でも経験を積んでもらうことで、本格的に社会に出る前に、他の学生さんよりも一歩前に育ててあげたいと思って育成に力を入れています。もし育った状態で社会に出すことができれば、もっとスムーズに、早く社会で活躍できるんじゃないかなとも思うので。たまに、卒業したクルーさんがお客様としていらっしゃったりするんですよね、立派なスーツを着て。そういう時は、本当に嬉しい気持ちですね。
クルーさんの中に、独自のボランティア活動をされているクルーさんもいらっしゃるとか。
店長:お店のクルーさんを中心にしたボランティア活動を立ち上げて、近隣の水路掃除をしています。
それはお店の宣伝ということを兼ねているものになるのですか?
店長:いえいえ、全然(笑)。むしろ近隣の方にご迷惑にならないように、朝にこっそりやったりしています。元々、これもクルーさんの「目標」の一つだったんですよね。昨年までいた大学生のクルーさんがボランティア活動をしたいという気持ちを持っていて。でも、公募されているボランティアに参加する形だと、場所や時間の都合で参加が難しいことも多いじゃないですか。なので「それなら一緒に立ち上げて、やってみようよ」「絶対に自分で立ち上げる方が楽しいよ」ということで、僕とクルーさんで一緒に始めました。そういう、業務時間以外の目標も、一緒に考えてあげられるような存在でいたいと思っています。
社長:導こう感謝っていうのがうちの企業理念で。小売業だと、どうしてもお客様から感謝される行動フォーカスされますが、それだけではダメで。社会から支持される、仲間から信頼される。目標を持ち達成に向かう行動を取る。これも本当に大事。このボランティア活動も、社会から支持される行動っていうのの中に入ると思うんですよね。そういうことを自然とやってくれているのが、嬉しいですよね。
お店の売上を上げることが、人を育てる余裕に変わる
でも、ただでさえ人の少ない環境の中で、ボランティア活動って大変じゃないですか?
社長:なかなかできないですよね。お店を閉める時間があってもいいのであれば簡単ですが、そうもいかない(笑)。
店長:だから、お店としてちゃんと利益を取って、その利益をしっかりとクルーさんとに還元できる、分けられる形になればいいなと思いますね。そうすると、自然とクルーさんも増えるし、クルーさんたちが自分のやりたいことに取り組めるようになる。
なるほど。社長は、利益を獲得していくためには、何が重要だと思いますか?
社長:無駄を出さないことでしょうね。廃棄もそうでしょうし、棚卸しをするにしても、キチっとした管理ができていれば、棚卸しのロスが出ることもない。そいいったモノ、カネの管理ってよく言うんですけども、そこを徹底的にやっていれば無駄がなるなく。
一方で、モノ、カネと並んで管理するのがヒト、と言われていますが、人件費は無駄ではないんですよね。無駄な人件費っていうのはない。正直、余分なところもあるかもしれないですけども、育成を考えると、人件費は必ず必要になってくるじゃないですか。だから、それ以外の無駄をどう削って利益を上げて、最終的な店利益を上げていくか。
やっぱり、お店で利益が出ていないと余裕が生まれないです。余裕がないと、いい発想も生まれないし、どんどんヒトの経費をカットしないといけなくなる。だから店利益っていうのは必ず必要。それがあってこその育成だし、アイデアだと思うので。さっき学生さんの話が出てきましたが、学生さんの時から、そういうところに関心が持てるって働いてからでも違う味が出てくると思うんですね。
最後に、息子さんである店長にも、何か目標提示をお願いします。
社長:なんでしょうね。あんまり期待掛け過ぎてもいけないし、全然期待しないのもいけないしみたいな難しいところはあるんですけども(笑)。やっぱり社員・クルーさんみんなの生活を自分が守るんだっていう気持ちを忘れないで欲しいですね。その為に、業績、お金っていう部分も非常に大事になってくるので、そこもしっかり見ながら自分のペースでやってもらえたらなって。
一方、自分自身には、組織体系をキチっとさせて、お店が増えてもそれをちゃんと受け入れられる体制づくりをやらないといけないなと。この会社を次の世代に、いい形でバトンタッチして、そこからまた栄えてもらうための土台作りが今の目標ですね。信念を持って取り組んでいれば、普通にお店は増えていくと思うので。
坂田社長、坂田店長、今日はありがとうございました。