見出し画像

デリバリーシステム大改造! アイデアを声に出して実現した「みんなの」チャレンジ

 手が離せない、体調が良くない、外に出かけたくない……という時に、食べたいものや飲みたいもの、生活必需品などを届けてくれるデリバリーサービスが、ローソンで進化しています。今春から取扱い商品数は、約700品から約3000品へと順次拡大中。店頭在庫に合わせて販売可・販売不可を自動で切り替えするシステムを開発したことにより、お客様にご注文通りの商品をお届けしやすくなったほか、店舗オペレーションの削減に。サービスを展開する店舗は47都道府県で6000店を突破し、売り上げアップにも貢献しています。プロジェクトを推進している尾形元希さんにお話を伺いました。

株式会社ローソン インキュベーションカンパニー クイックコマース部/尾形元希
1988年、北海道生まれ。俳優養成専門学校を中退後、セールスプロモーション会社を経て、2016年にローソン入社。北海道で店舗社員、営業部スタッフを歴任した後、クイックコマース部に所属。現在はローソンデリバリーシステム(販売ステータス自動連携機能)のプロジェクトマネジャーを担当する。休暇の楽しみは、家族で東京都内を観光すること。

俳優を目指していたが……

──俳優を目指していた過去をお持ちとは。それに前職では管理職まで就かれたと伺いました。
 
 人前に出るような仕事がしたくて俳優専門学校に進学したんですが、必修だったダンスの授業でつまずいてしまって(笑)。運動が苦手だったこともあり、断念してしまいました。
 
 その後、セールスプロモーション会社に就職しました。いろいろと経験させていただいたところ、販売戦略を考えるようなことが天職だったようで、社内でアイデアが採用されたり、接客のコンテストで評価されたりして、執行役員まで務めさせていただき、自信をつけることができました。
 
──今春からローソンデリバリーシステム(※販売ステータス自動連携機能)が実装されました。どんなシステムで、プロジェクトに至るまでどういった経緯があったのでしょうか?

(※ )販売ステータス自動連携機能とは、ローソンのデリバリーを利用する際、店頭の在庫有無をUber Eatsなどの提携先のアプリ上に自動で反映させる機能のこと。

 在庫がある商品のみお客様のアプリに表示させ、在庫がない商品は表示させないことを自動化しました。これまでデリバリーの取扱い商品数は700品目あったのですが、その在庫数をすべて店頭のスタッフが確認して、手動で入力していたんですね。スタッフの負担も大きいうえ、お客様が商品を購入するたびに在庫状況は変動します。精度を高めるにも人力では限界があるので、システム化しなければと思ったのが、プロジェクト発案のきっかけです。(一部デリバリープラットフォームで開始。対応するデリバリープラットフォームを順次拡大予定)

デリバリーの様子

「今、欲しい」。ニーズに応えるローソンのデリバリーサービス

──ローソンのデリバリーサービスについて詳しく教えてください。
 
 主に飲食がメインのサービスになっていて、「Uber Eats」はじめ「Wolt」、「menu」、「出前館」という外部のデリバリーサービスのアプリから、ローソンの商品を選んで配達していただけます。
 
「今、欲しい」というニーズを捉えたことで好評いただいています。具合が悪い時とか外に出たくない時、ゲームに熱中している時もあれば、仕事や家事などでタイムパフォーマンスを重視されている方、など多くのお客様に利用いただいているかなと思います。
 

デリバリーで「からあげクン」が頼める


20コ入りの「からあげクン」


 たとえば、からあげクンが20個入った揚げ物のBOXシリーズが人気です。清涼飲料水・うどん・薬という注文もあるので、体調を崩されたような方への配達もあります。他にもトイレットペーパーなど生活必需品も揃うので、食事だけでなく、デザート、お酒、日用品、医薬品(一部店舗でOTC医薬品対応)など幅広い品揃えが特徴になります。
 
──プロジェクトによって解決を目指した課題とは?

 
 販売ステータス自動連携機能を実装する前は、お客様が注文したものが届かないということが起きていました。たとえば、サラダとドレッシングを注文したのに、サラダが売り切れた後だったため、ドレッシングしか届かないとか、先ほどの例で言うと、清涼飲料水とうどん、そして薬を頼んだのに、清涼飲料水と薬しか配達できなかったために食事が摂れないというケースも起きてしまっていたのです。

「アイデアを声に出して、行動しよう」


 この状況を何とかしたいという思いで、ローソン社内にある『億チャレ!』に応募したんです。『億チャレ!』とは、グループ理念の実現につながるアイデアを出して、採用されたら最大1億円の予算がもらえるという社内の大プレゼン大会です。
 
 そこでデリバリーシステムに、リアルタイムで在庫状況が反映される自動連携機能を実装するプロジェクトを提案したら、審査の段階で「これは『億チャレ!』に関係なく、ぜひ進める案件だ」と評価いただいて、予算とともに始動できました。
 
 ローソンWAYに、「アイデアを声に出して、行動しよう。」という理念目標があるんですが、まさにこの理念に向かって、進むことができた一例だと手応えを感じています。

「ローソンWAY」

──プロジェクトの販売ステータス自動連携機能を実装するにあたって、苦労したところは?

「Uber Eats」「Wolt」「menu」「出前館」という国内外の企業と連携して、システムを構築していくことです。例えば、当社とご協力いただく各社のシステム開発手法の違いにより、調整に時間がかかることがありました。海外の方ともやり取りも発生し、言葉の壁や、文化の違いなどがあり細かい認識調整のMTが続きました。 議論は尽きませんでしたが、考え方は異なることがあっても、「共にお客様にとって良いものを作る」という方向性は同じだったので、言うべきことをすべて話して、先方の考えもしっかり受け止めて何とか着地させることができました。 

「すべてはお客様の利便性を高めて、店舗スタッフの負荷を減らすため」 

──デリバリーサービスのメリットについて教えてください。

 まずは、商圏が広がることです。デリバリーによって、ご自宅にいるお客様と直に繋がることができます。通常、店舗ごとの商圏は歩いて数分で来られる半径350メートルほどですが、デリバリーによって例えば1キロ先のご自宅からでも注文が入るようになります。 注文が入った店舗では、商品を見つけて、それを袋に詰めて、配達員の方に渡すだけです。

 プロジェクトチームみんなで、お客様の利便性を高めて、店舗スタッフの負荷を減らすことを目指したからこそ、実現できました。 実は、このデリバリーサービスを実現するのに関わった方々は100人以上います。

 ローソンだけでも、私たちクイックコマース部の他、ECシステム部・店舗システム部などのIT本部の皆さん、さらにローソンデジタルイノベーション(LDI)の皆さん、システムを作ってくださったベンダーの方々。それからUber Eatsさん、Woltさん、menuさん、出前館さんと、デリバリー会社との連携に尽力してくださった方々もいます。

 こうした方々と全員で作り上げたので、皆さんには感謝の念に堪えません。 それから日々、配達を担ってくださっているギグワーカーの皆さん。どうやったら感謝を伝えられるかを考えて、微力ではありますが、今なら「暑いなかありがとう」の気持ちを込めて、お茶やデザートのクーポンを配布したりしています。

デリバリーのみなさんに感謝を伝えたい

チャレンジをみんなで実現する幸せ


──ローソンの仕事で一番嬉しかったことは?
 
 やっぱり今回のプロジェクトのように、チャレンジすることを声に出して、実現できたことです。しかも、一人では絶対にできなかったことなので、みんなで実現した喜びを共有できる幸せを感じています。
 
 店舗用にデリバリーシステムのマニュアル(ガイドブック)を作成したのですが、先日これが完成した時も、エンジニアの方々がマニュアルを見て、「これが7000近くの店舗に配布されるんですね」「娘に自慢しますね」としみじみと実感を語ってくださっていて、チームみんなにとって大切に思える仕事ができたんだなと感動しました。

店舗用に作成したデリバリーシステムのマニュアル(ガイドブック)

──今後チャレンジしたいことは?
 
 ローソンデリバリーシステムのセカンドステップです。販売ステータス自動連携機能は、ファーストステップなんです。店舗自体が、コピー機やLoppiを設置して進化してきたように、加盟店やお客様からの声を反映した新機能を拡張して、さらなるお客様の利便性向上と、加盟店の負荷削減に向けやり切りたいと考えています。

お店をバージョンアップする楽しみ

 
──お店のためのアイデアを練ることが本当に好きなんですね。
 
 そうなんです。想像するのが楽しくて。そういえば、幼い頃からお店屋さんごっこが好きでした。僕はひとりっ子だったので、父にお客さんになってもらって、仕事で帰ってくるまでに自分の部屋をお店に見立てて、お菓子を集めては並べてました。
 
 小学生1、2年生だったと思いますが、学校に行っても「次は何を並べようかな」って考えてました。同じことをしても面白くないから、今度はスルメを割いたものを商品にしたりして、バージョンアップしていました(笑)。それが今の仕事にも役立ってるのかもしれないですね。

取材・文/松山ようこ