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記憶術で行政書士試験に受かった話(その3)

その3. 具体的な使用例

 第一回では記憶術について、第二回では記憶術が行政書士試験に適している理由についてお話ししました。今回は具体的に記憶術をどのように使っていくか、行政書士試験の最重要科目たる行政法を例にご説明しようと思います。

 そもそも行政法とは、特定の法律の名前ではなく、行政手続法や行政不服審査法などの法律の総称です。それぞれの法律に特徴があり、覚える必要がある知識にも違いがありますが、今回はその中でも特に重要性の高い行政事件訴訟法関連の知識の覚え方を提示します。なお、前2回において「場所」の設定についての説明はしましたので、その場所に置くものをどのように変換するかに焦点を当てます。また、異なる法律に同じような概念が用いられることも多いので、法律ごとに異なるルートを設定した方が知識の混在を避けられます。

(1) 行訴法で必要な知識

 試験には六法が持ち込めませんので、ある程度は条文の内容も覚える必要があります。そして、46条までしかないとはいえ、行政事件訴訟法の条文もそれなりの分量があります。その全て覚えるのは大変ですし、そんな必要もありません。要求される知識は限られているのです。過去問やテキストで確認すべきですが、条文知識としては訴訟類型や出訴期間が頻出です。

 ただし行政事件訴訟法において必要とされる知識は、取消訴訟の要件に関する判例がメインです。その中でも、処分性の有無や(狭義の)訴えの利益が認められたかどうかについての判例が重要です。

 ここでは過去問を参照しながら、処分性の有無についての判例を必要最小限の労力で覚える方法を見ていくことにしましょう。なお、やり方を説明するだけなので、「処分性とは何か」を知らなくても大丈夫です。

(2) 処分性の有無

 行政事件訴訟法に関連する判例はたくさんありますが、行政書士試験に出題される判例は限られています。さらに判例に関する択一問題では、「ひっかけ」の選択肢が出題されることは少ないです。つまり、何の事件なのかさえ読み取れれば、あとは末尾の結論を読むだけで解けるのです。

 では、処分性の有無についての具体例で見てみましょう。以下の問題は「誤っているものを選べ」という実際の過去問です。処分性の有無を問うた問題ですが、どのような判例で処分性が肯定され、どのような判例で処分性が否定されたかさえ覚えていれば解けます。この問題であれば、「病院開設中止の勧告処分性が肯定された」という知識だけで持っていれば、その理由づけを知らずとも、この選択肢を選べます。

(旧)医療法の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められており、これに従わない場合でも、病院の開設後に、保険医療機関の指定を受けることができなくなる可能性が生じるにすぎないから、この勧告は、行政事件訴訟法 3 条 2 項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない。(H28-問題19-3)

 このように、どの判例で処分性が肯定され、どの判例で処分性が否定されたのかさえ押さえれば大丈夫です。以下の判例を覚えてみましょう。(実際に覚える必要がある判例はもう少しあります。)

処分性を肯定した判例→①病院開設中止勧告②保育所を廃止する条例の制定 
処分性を否定した判例→①ごみ焼却場の設置行為②農地の売り払い  

 「肯定→否定」の順番で覚えるという前提で、1つ目の場所に「病院」「保育所」から連想するものの組み合わせを、2つ目の場所に「ゴミ」「農地」から連想するものの組み合わせを置いていくことで覚えることができます。具体的には1つ目の場所に「担架に載せられた幼児」を、2つ目の場所に「野菜が入ったゴミ袋」をイメージすることで覚えることができます。

 ここでは2つずつしか覚えていないですが、判例数が増えても同様に覚えれば良いのです。ただし数が増える場合は、肯定例と否定例の境目を設けなければならないので注意しましょう。もっとも、自分の中で切れ目を表すものを決めておいて、それを置くだけですが。

 行政書士試験では、その多くが判例のキーワード(病院)とその結論(処分性肯定)を結びつけて覚えるだけで足りるため、行政法の他の分野だけでなく、他の科目についても上記の方法で十分、合格点に届きます。

(3) おわりに

 ここまで、3回をかけて記憶術を使った行政書士試験の勉強法を紹介してきましたが、何も行政書士試験に限って使える勉強法ではありません。記憶術は使う人なりにアレンジすることで、記述メインの試験にも対応できるようになりますし、その他の様々な場面でも使えるものです。

 より詳しく学んでみたいと思われた方は、記憶術で日本一になった平田さんの著書を是非お読みください。普通の記憶術関連の本では、「復習をたくさんしましょう」や、「寝る直前に覚えましょう」のようなありきたりなアドバイスがもったいぶって書いてあることが多いですが、この本では勉強法だけでなく、人の顔と名前や、数字を覚える方法など、具体的な記憶術の実践的な使い方が丁寧に紹介されていますので非常にオススメです。


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通りすがりの法学徒。
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