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賭け麻雀、どっから違法? 男気じゃんけんはOKなの?

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ざわ…ざわ…。
非常事態宣言も解除され、プロ野球の開幕日程も発表されました。
スポーツの面白さは、選手の真剣さの度合いと比例している気がします。高校野球やオリンピックに多くの人が熱狂するのも、選手の人生を賭けた勝負に心を撃たれるから。賭けている物が大きいほど、勝負はより真剣になり、選手の緊張感も高まります。一般人は、日常生活で人生を賭けた勝負なんて、基本的にそうそうしません。私たちは、他人の人生を賭けた勝負を見ながら、言い方は悪いですが、高みの見物で選手たちのドキドキを疑似体験しているのかもしれないですね。

そんな日常を送る我々でも、多少のスリルを味わうことができるのがギャンブルです。
ただ、ギャンブルは、日本では法律で許された競馬等の所謂公営ギャンブル等を除き、基本的に禁止とされています。また、ギャンブルの中毒性は、近年社会問題としても注目されていますね。(ざわ…ざわ…。)社会的に高い地位の人でも、その地位を失う可能性があるのに、やらずにはいられない…。ギャンブル怖い!

とはいえ、思えば幼少期の頃から、学校の帰り道にじゃんけんで負けた人が荷物を持つ、ゲームで負けた人がお菓子をおごる等、賭け事が身近で行われていた気がします。
テレビのバラエティ番組でも、じゃんけんで負けた人が食事等の支払をするといった人気のコーナーも存在していました。
あれ、このままだと全国民が罪に問われちゃうんじゃ…。なんだか違法の境界線が曖昧だな…。これから出世したときの為にも、賭け麻雀のNGラインを把握しておきたい!ということで、

「賭け麻雀、どっから違法?」について調べてみました。

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そもそも、賭け事はどの法律に違反するのか?

これはずばり刑法で禁止されている

賭博罪(刑法185条)
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

この条文の「賭博」がいわゆる賭け事に当たるのだが、ここで、「賭博」の意味を整理しておこう。

刑法上違法になる「賭博」とは、偶然の勝敗に関して財物を賭けてその得喪を争うことを意味する。

例えば男気じゃんけんは、食事の支払を誰がするのかについて、じゃんけんの勝敗で決める。これは、支払という「財物」を賭けて、じゃんけんをしていることになる。そしてじゃんけんは、勝敗が偶然の事情によって決せられる。この勝敗に従い、勝った人は無料で食事という「財物」を得、負けた人は代金を支払うことによって「財物」を失う。
…ということは…、ざわ…ざわ…。


男気じゃんけんは、違法!?

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男気じゃんけんは違法なの?
いやいや、公共の電波で放送されていたものが、違法なわけないだろ!という突っ込みがきそう。最後まで条文を読んでみよう。

賭博罪(刑法185条)
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

ここで注目すべきは、「一時の娯楽に供する物」の文言。
「一時の娯楽に供する物」とは、当該消費の即時性や娯楽性などから判断されるしいが、要は、飲食物やタバコはこれに該当するとされている。一方で金銭は、いくら少額でも「一時の娯楽に供する物」には当たらない。
つまり、「一時の娯楽に供する物」にあたる物を賭けた場合には、賭博罪にあたらないってこと。
そして男気じゃんけんは、金銭ではなくその場での飲食代などを賭けるので、それは「一時の娯楽に供する物」にあたるので、賭博罪にはあたらない、と考えられている。

常習賭博罪と賭博罪の違いって?


ニュースを見ていると、賭博罪って名称の他に「常習賭博罪」という名称を耳にすることも多い。両者の違いは「常習」性が認められるか否かにかかっている。

常習賭博罪(刑法第186条第1項)
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する 。

「常習」とは、習慣的に何度も行っていることを意味している。刑法的には、賭けた金額や今までの賭博行為の回数や過去に賭博罪で捕まっていたか等の要素を考慮して「常習」の有無の判断をしている。
ちなみに、常習賭博罪(刑法186条)は、悪質性が高いため、賭博罪よりも罪が重くて、懲役刑しかない。

賭け麻雀はどこから違法なの?

では、賭け麻雀はどうなるのか。
まず、麻雀の勝敗が偶然の事情によって決まるのか分析してみよう。確かに麻雀は当事者の技能が勝敗に相当影響するが、偶然性が多少でも認められれば「偶然の勝敗」にあたるらしい。よって、勝敗が偶然の事情によって決せられると言える。

そして、その勝敗に関してお金を賭けたなら…。それは「賭博」の定義である偶然の勝敗に関して財物を賭けてその得喪を争うことにあたり、違法な行為となる。お金を賭けた麻雀は、1円からでも違法な行為にあたると考えられている。

金銭を賭けた麻雀は、人生を賭けることになるんだね。

賭け麻雀をしたら、逮捕されるの?

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じゃあ、例のアノ人も賭博罪で逮捕されちゃうの? というと、これはまた別の問題。

刑事事件については、証拠の有無や罰する必要性(可罰的違法性ともいう)を考慮して、警察が事件として扱わなかったり、検察官が不起訴とすることができる。
賭博罪は、事件として扱われにくく、不起訴にもなりやすい。
なぜかといえば、賭博罪は証拠を集めるのが難しいから。現行犯なら賭博が行われたことは明らかだけど、そうで無い場合は証拠を集めるのが難しい。証拠がないと、罪を証明できない。なので、逮捕や起訴されることはそこまで多くない。

思い起こせば、家族との麻雀、大学時代の雀荘でも… (自粛)
ちなみに…昨今のニュースで気になったので以下も調べてみました。

検察官が賭け麻雀をしたら、クビになる?

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検察官は国家公務員。不正を行えば、クビや減給等の懲戒処分を受けることが法令で定められている。懲戒処分の種類はその重さ順に、免職、停職、減給、戒告の4種類(国家公務員法82条 )。
このほか、懲戒処分には至らないけど、口頭や書面で注意を受けるものとして訓告、厳重注意等がある。これらは懲戒処分ではないので履歴書の賞罰欄に記載する必要はない。

参考:◆「義務違反防止ハンドブック」(P15)(人事院)
https://www.jinji.go.jp/fukumu_choukai/handbook.pdf

国家公務員の人事に関する業務は人事院が司っている。この機関は行政機関等から独立し、中立的な立場にあるとされる。
この人事院が国家公務員への懲戒処分をする際の標準的な基準を作っている。
その基準が「懲戒処分の指針について」である。その時の気分とか、処分される人が友達だからと言った理由で処分の内容が変わるのは不公平だから一定の基準を示しているもの だ。これによると、「賭博をした職員は、減給又は戒告とする。」とされている。

第2 標準例
3 公務外非行関係
 (9) 賭博
   ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
   イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
参考:◆「懲戒処分の指針について」(人事院)
https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

つまり、その基準からすると、国家公務員の方 が賭け麻雀をした場合は、少なくとも減給か戒告になる。
減給とは、文字通り給料が引かれること。戒告とは、その責任を確認し、将来を戒めること。いずれも懲戒処分であるが、クビではない。

でも、例の人には訓告だけだったはず。戒告と訓告は一見内容が同じにみえるけど、訓告は懲戒処分ではない…

もちろん、最終的には 、この基準どおりでなくても良いけれども、この基準に従わないで処分をすることはどれくらいあるのでしょうか。


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