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コロナ禍で注目が集まる電子契約サービス。どんな電子契約サービスが良いのか、電子署名法の点から問題点も含めて検討してみた

今、コロナ禍で注目を集めている電子契約サービス
日本は「書面文化」、「印鑑文化」が深く根付いており、長らく電子契約は普及しませんでした。ところが今は移動が制限されソーシャルディスタンスが叫ばれる世の中。リモートワークを導入したはいいけど、ハンコ押すためだけに出社!なんて話も耳にします。対面することなくネット上で契約を結べる電子契約はこれからスタンダートになるでしょう。

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と言うわけで、電子契約めっちゃ便利じゃん!この波に乗っていこう~と思い、電子契約について調べてみました。今の時代様々な電子契約サービスがあるんですね。けど、電子契約って色々問題もありそう。その辺りちょっと整理しようと思います。


契約書が必要な理由

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まずは、契約の原則について押さえときましょう。

日本においては、契約の効力は当事者間の意思表示によって生じるとされています。

民法522条1項
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

つまり、契約書がなくても、契約は有効に生じます。ただ、口約束では言った言わないの水掛論になる。そこで契約の内容を書面にしておく。そうすれば、契約当事者間で、契約の内容の認識の違いが出にくい。だから、契約書を交わす意味があると言えます。

契約書において、署名や押印が必要な理由

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契約書といえば、必ずあるのが署名や押印。その役割は、契約に関して紛争が生じたときに大いに発揮されます。
例えば、その契約書が本当に契約当事者によって書かれたのか、という争いが生じたとき。契約書は偽装される恐れもあるので、契約書が偽装でなく、本人によって書かれたことを証明する必要が出てきます。
でも、本当に契約者本人が当該契約書を作成したことを証明することは難しい。そこで法は契約者等の署名又は押印がある場合には、当該契約書は契約者の意思に基づき作成されたと推定する規定を置いています。

民事訴訟法228条4項
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

この規定により、署名又は押印がある場合には、契約書が偽装ではなく真正に成立したことを証明する必要がなくなります。裁判での証明が楽になるんです。

ところで上記の推定規定ができたころは、当然電子契約書なんて概念は一般的ではありませんでした。ところが、その後インターネットの普及に伴い、「電子契約書の場合はどうするのか」、という問題が生じることになるのです。

電子契約書において、真正に成立したことはどうやって証明するの?


そこで2001年に施行されたのが、「電子署名法」。この法律の3条は、上記の民訴228条4項にあたるもの。書面の場合の署名・押印の役割を、電子契約書においては電子署名が担うことになります。

「電子署名及び認証業務に関する法律」
第二章   電磁的記録の真正な成立の推定
第三条  電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

この規定により、電子契約においては電子署名があれば、電子契約書が真正に成立したものと推定されることになりました。

ちなみに、電子署名とは電子サインの一種。実印のイメージです。
電子サインは電子署名の上位概念と言ったところ。

◆電子署名法の概要と認定制度について(法務省)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji32.html
◆<資料1>電子署名の仕組み(法務省)
http://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION/GUIDE/refer01.html

電子署名法の問題点

コロナで注目を集める電子契約。それに伴い電子署名法の問題点も明らかになってきました。

【問題点1】なりすまし問題

電子署名法は、電子署名が本人によって行われたことを証明するサービスの内、大臣が定める技術的安全性の基準を満たしたものについて「特定認証業務」と呼び(電子署名法2条3項)、そうでないものと区別しています。そして「特定認証業務」を行う業者のうち、国の認定を受けているものを法務省や経産省のホームページ上で公表しています(電子署名法4条)。国の認定を受けている業者が行う認証は、住民票等の提出が必要で本人性も担保され一定の信用性が得られるようになっています。
◆電子署名及び認証業務に関する法律による認定認証業務一覧(経済産業省)https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/esig-srvlist.html

ただ、大臣が定める技術的安全性の基準を満たしていない証明の場合も、国の認定を受けていない業者の証明の場合も、文章が真正に成立したという推定は生じるのです。

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ここで電子署名法3条をおさらいしましょう。

「電子署名及び認証業務に関する法律」
第二章   電磁的記録の真正な成立の推定
第三条  電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

条文上、大臣が定める技術的安全性の基準を満たすことも、国の認定した認証局による認証も、推定の要件とはしていないのです。

そして、技術的安全性が欠け、国の認定した認証局以外の認証の場合には、そうでない場合の認証に比べ本人性の確実性が低くなります。要は、署名者と実在する人物との一致率が低くなるということ。その結果、なりすましが容易となります。

なりすましが可能になると、現実に実在する山田太郎さんが、山田花子さん名義で電子契約書に電子署名をしたとしても、その契約書が真正に成立したことは推定されてしまうのです。

◆電子署名法における認証業務・特定認証業務・認定認証業務の違い(サインのリ・デザイン)
https://www.cloudsign.jp/media/20181211-tokuteininsyougyoumu/

【問題点2】電子署名法は契約内容の保証はしない問題

電子署名法は契約の内容の真正を推定したり、保証したりするものではありません。この問題点は、電子署名法の問題と言うよりも電子契約自体の問題で、新たな法整備が必要とも言えるかもしれません。

電子契約サービスの一部には、契約書のテンプレートを提供したり、リーガルサービスの提供を謳ったりするものがあります。ですが、当該サービスが、契約書の内容の真正を保証することまでサービス内容に含んでいるかは、注意したほうがいよいでしょう。


電子契約システムサービス比較

以上のことを踏まえたうえで、どの電子契約システムサービスを利用するのか検討をするのがよいでしょう。大事な契約は国の認定認証局を通しているもので行い、重要度が下がるものは、国の認定認証局を通していないシステムを使うといった感じに使い分けるのも一つの策かもしれません。


★主な電子契約システムサービスのうち、電子署名法4条の国の認定した認証局を使用していることが明示されているのがこちら。

◆リーテックスデジタル契約 リーテックス株式会社

特定認証機関「DIACERT」を使用と明記。電子記録債権(電子手形みたいなもの)の利用も可能。
https://le-techs.com/service/
下記のページの下の方に、特定認証機関「DIACERT」を使用と明記
https://le-techs.com/


★国認定の認定局ではないが、大臣が定める技術的安全性を満たした認証局(電子署名法2条3項)を使用していることを明記しているのがこちら

◆GMO電子印鑑Agree GMOクラウド株式会社 (2020年9月1日に「GMOグローバルサインホールディングス株式会社」へ社名変更予定)

電子署名と電子サインの2パターンに対応。使用認証局は、国認定の認証局ではないが一定の技術的安全性は担保されている。ちなみに、使用認証局はGMOのグループ会社の「GlobalSign」
https://www.gmo-agree.com/about/


ちなみにかなりのシェアがありそうな以下のサービスは、電子署名法上の国の認定認証局の使用はありません。

◆クラウドサイン 弁護士ドットコム株式会社

https://www.cloudsign.jp/
国内シェア80パーセント。電子署名法上の認定認証局は使用していないが、国際規格WebTrust for CAを満たした認証局を使用。弁護士監修と明記あり
https://www.cybertrust.co.jp/pressrelease/2019/0418-cloudsign-itrust.html


他の比較ポイントは、他のアプリとの連携や国外との契約が多い場合は国外にも広く対応しているサービスかといった点も考慮ポイントになると思います。

ちなみに、定期借地契約、定期建物賃貸借契約等、電子契約ができないものもあるので、要注意!

【電子契約サービス比較のポイント】

・電子認証局を使用したシステムか
・他のアプリ(Salesforce等)との連携具合
・国外対応か
等々

電子契約サービスの比較サイトでは、資料請求も出来るようです。無料プランの提供をしているサービスもあるので、気になったところを利用してみるのも手ですね。


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