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『ネイサン・チェン 自伝 ワンジャンプ』感想など!

しつこく宣伝しております『ネイサン・チェン自伝 ワンジャンプ』

いよいよ明日発売ですが、書店には入り始めているようです。

ということで、少し早く読ませていただいたので、感想というか紹介というかをしてもいいだろ~~! という記事です。ネタバレ(?)はないつもりです。
※これもまた身内の勝手なアレです。KADOKAWA様は関係ありません。
※筆者は英語ができませんので原著も読んでいません。あとネイサンは大好きですが、背景等々全然詳しくなかったです。そういう人の感想だということを前提に読んでください。


手に取るとだいぶ分厚く感じますが、行間がゆったりめでそんなに文字ぎっしり! という印象ではありません。でも読みごたえは十分。そこそこ文章を読みなれている人間のつもりですが、2日で6時間くらいかけて読み終えました。私はこれを書くために集中してガッツリ読みましたが、みなさんはぜひお好きなペースでネイサンの語りに向き合ってくださいね。

ネイサン、こんなに語ってくれてるのか…

内容は充実の(?)9章構成です! ネイサンとオリンピックには運命的な結びつきがあったんだなと思わせる印象的なプロローグから始まります(あ、ベラの序文は置いておいて。。)。ご家族のこと、スケートとの出会い……とほんとうに順番に語ってくれています。
ネイサンの熱心なファンで、英語もできて、インタビュー記事とかを丁寧に追っている方とかは知っている情報ばかりなのかな? わからないですけど。私はほんとうに初めて知ることが多くて、へえ~! へえ~! と驚くことが多かったです。ご家族のこともかなり詳しく書いてあって、「このご家庭にして、ネイサン・チェンあり」と納得してしまうような感じでした。お母様の献身ぶりにはこの本を読んだら全員舌を巻くはずです。
自伝だからそりゃ語るでしょ、と思われるかもしれませんが、ネイサンは自分のことを盛ったり飾ったりせず、かなり素直な言葉で語ってくれているように思います。この時こういうことしてしまってアカンかった、みたいな話も結構しています。

ネイサンのスケート遍歴がよくわかります

ネイサンがどういう経緯でスケートを始めて、どうやって続けてきたかがかなり細かくわかります。お世話になったコーチや、練習していた場所など。
ラファエル(自伝のなかではラフ)との出会いもなるほどそんな感じだったんだ! とかわかって。また、そこに辿り着くまでの先生についても結構書いてあります。
コーチのみならず、振付師や、陸上トレーニングやメンタルのトレーナーについても詳細に書いてくれていて、ネイサンを支えてくれていた人たちについて、よくわかりました。
もちろん、確かな記録を参照したり、他の人の話もききながら補完していると思うんですが、どの人にどんなふうにお世話になったか、ここまできっちり書けていることには少し驚きました。きっと! ネイサンが感謝を忘れず、ひとりひとりと向き合っていたからなんだなと思うんですよね。どの出会いも、ネイサンのスケート人生というパズルがあったら、必要だったピースなんだな、と思えるような感じ。
ラフとの師弟関係は、少なくとも日本で想像するような常に二人三脚! みたいな師弟関係ではなく、それも私は知らなかったのでへえ~と思いました。ネイサンとラフの距離感、バランスがどのように保たれていたか、読んでみるとよくわかります。

アスリートとメンタルの話

この自伝はわりときれいな起承転結になっていて、「転」の部分はまさしく平昌五輪です。
もちろん故障などもありましたが(故障の話はかなり出てくる。でも淡々としてます)、ジュニアで活躍、シニアデビューでもブイブイ言わせて、4回転もめっちゃ跳べる。順調で無敵なのでは? って感じに見えていたネイサン。実際はそんなことは全くなかったようです。平昌オリンピック前から肉体的にも精神的にも追い込まれていく様子は、こんなにも大変だったのか、と読みながらこちらまで重苦しい気持ちになります。平昌の時は、少なくともあのショートの時までは心身のバランスが激ヤバだったことがわかります。

この話を読むと、アスリートにとって、技術面ももちろん大切ではありますが、その力を発揮するための精神状態を作ること、整えることが最も大切なんだということがわかるかと思います。
特にフィギュアスケートって、年に数回しか試合がなくて、その数分間のためにたくさん練習をしないといけないですからね。「ここで失敗したら、自分の数年は、いや一生はなんだったんだ?」って思ってしまったら……。足がすくむような気持ちになると思います。私でさえ3年の競技生活の〆の引退試合の前は似たような気持ちになったもん…。オリンピックに出るような選手なんて、もう、すごいでしょう。

同じ轍をふむネイサンではありません。平昌の失敗経験から、北京への4年間はそういった面にもしっかり目を向けています。メンタル面の話は、「いやほんとうに……頑張ってたんだな……!」とネイサンを抱きしめたくなります。漠然と「すごい人」って思っててごめんね、一歩ずつ頑張って、その状態を作っていたんだねえらいねって。でもそういうことができるから、やっぱりネイサンはすごいんだと思います。ほんとうに賢くて素晴らしいの。

平昌から北京までの間には、大きなトピックとして大学進学とパンデミックがあります。本を読んでほしいからあんまり詳しく書かないですけど、イェールに入ってからの文武両道の苦労とか。コロナについては相当注意を払って生活していたことがわかりますし、東京オリンピックが延期になったことで、北京がどうなるんだろう? と気にしていた(休学のタイミングに関わるから)話などもあり、そうだったのか~と思いました。そんな大きな環境の変化もありつつ、ネイサンが着実に対処していく姿が印象的でした。


まとめ やはり何事も一歩ずつ

この自伝は等身大のネイサンがわかるものだと思います。
ネイサンって本当にすごい人じゃん? スケートは上手いし、頭もいいし、性格もいいし、ピアノもギターも弾けて、イケボで、ついつい手放しで「あ~ネイサンはやっぱすごいんだよな~!」って思ってしまうんです! でもこれを読むとやっぱりネイサンも一人の人間なんだ、その時その時の年相応の少年だったんだなって思えます。そこから、目の前のことにどう向き合いどう対処していったか。まさに原題の元ネタ(?)であるone step at a time なのですよ!

ネイサンが好きな人には絶対読んでほしいし、フィギュアスケートが好きな人にもぜひ読んでほしいです。ネイサンのことが好きに、好きな人はもっともっと好きになるはず。
また、偉業を成し遂げた人のメンタルがどう作られ整えられたのか知りたい人も読むといいと思いました。アスリートの卵とかも…。

スケート知ってるリア友から、「ネイサン若いのに自伝出すんだ~」とか言われたこともあって、たしかに~と思っていたんですが、実際読んでみると記憶が薄れていない今だから語れるみずみずしさがあって、いや、今だからでしょ!! と思えました。
しかしみずみずしさはありつつ、本人が演技の後エモーショナルになることはめったにないと言っていたように、この自伝自体もクールでした。個人的には、訳もその調子がきちんと出ている感じがしていて、ひそかにお気に入りポイントです。

というわけで、なんだかんだ3000字くらいになってしまったので、ここらで切り上げます。ここまでお付き合いいただいた方がいらっしゃったらありがとうございます。

本書は書店や通販でお買い求めいただけます! 電子書籍もあります!
試し読みもできますよ~~!!! (見てみて結構読めるじゃんw となった笑

なにとぞ! よろしくお願いします~~~!!!!!

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