硬貨の使い道17

「1ルピー硬貨が伝言なんですか?」
僕は教授にそう尋ねると、教授は首を縦に振った。そしてあまりにも煮詰まっている僕をみて、教授はヒントをくれた。
「夏目くん、硬貨はどう使うものかな?そしてそれはどこで使うものかな。」
教授のこの言葉を受けて、僕は一から考えてみた。
「硬貨何かを買ったりする時に使うよな。でもどこでってさっき教授が言ってたインドだよな。それが伝言?」
僕は一通り考えると一つの可能性が見えてきた。そしてその可能性を信じるためには教授に聞かなくてはいけないことがあった。
「教授質問してもよろしいでしょうか?」
教授はまたしても首を縦に振る。そして僕は質問を続けた。
「宮部さんって今インドにいるんですか?」
教授はニヤッとすると
「そうみたいだね。卒業に必要な単位を急いで取得して、少し前からインドに行ってるみたいだよ。卒業式までには帰ってくるんじゃないかな?就職は日本でするっていうからね。」
と答えてくれた。そして僕はその答えを聞いて、宮部さんからの伝言の答えがわかった気がした。
「インドの硬貨を使うには、インドに行かなくてはいけませんよね。そしてこの伝言は宮部さんからのものです。その宮部さんはインドにいるわけですから。インドに来てってことか。でもなんでインド?そしてなんできてほしいんだろう?」
僕は一通り話終わると教授は
「正解。それが伝言の内容だ。」
と答えた。その後教授は自分の引き出しから写真を一枚取り出した。教授の若い頃の写真だ、隣には若い頃の教授と同い年くらいの女性が写っている。教授はその写真を見ながら
「なんでインドかっていうとね。僕がおすすめしたからなんだ。あんなにエネルギーに溢れていて、情熱を感じる国はないと思っている。それに今や経済大国にまでなろうとしてる国だ。見ていて損はないと思ってね。それに私が妻と行きたかった国なんだ。インドの硬貨を渡すって行為そのものはね、昔私が妻とまだ付き合っていた時にプロポーズとしてやった行為なんだよ。それを彼女に話したことがあってね。多分それのせいじゃないのかな?夏目くんは彼女に告白したんだろ初対面で、それにそれからも色々あったんだろ。その答えを伝えたいんじゃないかな?」
と言った。少し照れながらだったが力強い言葉だった。そんな力強い言葉に背中を押されたのだろうか僕の気持ちは決まった。宮部さんへの疑念を疑惑も未だにあるけど、僕はあの人を追い続けよう。嫌いな部分も好きな部分も全部まとめて愛してしまおう。
「教授ありがとうございます。僕は宮部さんに会いに行ってきます。」
僕はそういうと教授は
「出発の予定が決まったらまたおいでその時は飛行機のチケットを渡すよ。お金のことは気にしなくて良いよ。チケット代は彼女から預かってるから」
と教えてくれた。僕は教授に一礼して、その部屋を出た。