ある雑貨屋にて3


 その店は雑貨屋のようだった。自分の作品を販売しているのか、どの商品も個性的で歪な見た目のものが多かった。
「誰もいないのかな」
私はそう呟くと、奥から店員が出て来た。身長は私と同じくらいの30代くらいの男性の店員さんだ。
「いらっしゃいませ。こちらを利用されるのは初めてですか?」
とその店員さんは私に問いかけると私は静かに頷いた。そしてその店員さんはこの店の説明を始めた。
「この店は人の思いを肯定してくれる品物を販売しています。例えば、醜い見た目を変えれるドレッサーや、承認欲求を満たしてくれる自撮り棒などを販売しています。さぁあなたはどんな思いを肯定して欲しいですか?」
店員の説明は荒唐無稽なものだったが、不思議と自分の思いを話したくなる話し方だった。まるで自白剤でも飲まされたかのように、自分の秘めた思いをありのままに話し始めてしまった。
「結婚してる年上の女性を愛してしまいました。今はもうその女性や旦那さんに会うだけで、嫉妬で我を忘れそうなんです。・・・その人への思いを断ち切りたいんです。そんな品物ありますか?」
僕はそう答えると、店員さんは少し間を置いて
「あなた嘘をついてませんか?嫉妬で我を忘れるほどの思いを、断ち切りたいと本心から思ってるわけないでしょ。教えてください。あなたの肯定したい思いを。」
と私に問いかけた。図星を疲れた為、わたしはしばらく固まった。そしてその後溢れるように本当の思いを話した。
「奪いたい。サラさんを自分のものにしたい。離婚した後とか、不倫とかでなく完全に自分のものにしたい。」
店員さんはその思いを聞いて、黒く笑い店の奥に私を誘導した。そこには白い粉のようなもので描かれた、直径1メートルほどの円があった。店員はそこで私に最終確認と言って質問してきた。
「今回あなたに販売できるのはその円です。使用方法はその円の中に入るだけです。それでは注意事項です。その円の長時間の使用はやめて下さい。もし使用したい場合は日にちを空けてからにしてください。そしてお代についてですが、全てが終わった後、あなたが決めて下さい。そして最後の注意事項です。強すぎる思いは罪になります。そして罪には罰がつきものです。自分の思いをどこまで肯定するかよく考えて下さい。それでは購入しますか?」
店員はひとしきり説明を終えると、私に購入するかどうかを聞いて来た。私はすぐに同意するとその円の中に入った。すると突然意識が薄れてきた。
「忘れないでください。その思いは罪になる、ならば罰は必ず降る。」
店員のその声を最後に私は自分の意識を見失った。