法学検定受験をおすすめするのはこんな人

最近、法学検定という資格を勉強し始めました。
その名の通り、法学検定は法律学の知識を問う民間資格なわけですが、日本では、公的な資格では司法試験、司法書士試験、行政書士試験、宅地建物取引士(宅建)試験等、所謂「士業」と呼ばれるものがあります。
それでは、日本では法律系資格が沢山あり、それに伴い資格勉強教材や講座などが充実している中で、この法学検定を勉強する意義とは?また、法学検定受験はどんな人におすすめなのかを考察していきたいと思います。



民間法律系資格

考察に入る前に、公的な法律系の資格は上記の通り、詳しい人でなくとも何となく名前を聞いたことがあるものばかりだと思いますが、実は法律系資格(検定)は、数が少ないものの民間のものもいくつか存在しています。

ビジネス実務法務検定

会社法を中心とした、ビジネスや会社のコンプライアンスに関する知識を問う検定試験です。
3つの級からなり、1級は合格率が10%程度になりかなり難しい検定試験になります。
僕も2級を勉強したことがありますが、覚えることが多く結構難しいため、士業の資格はちょっと…でも、法律に関わる仕事がしたくて、その知識を証明したい、という方にはおすすめです。

法学検定

今回のメインテーマですが、士業のように独占業務(その資格保有者でしかすることのできない業務)をしたり、実務的な知識を問うというのとはちょっと違い、まさに「法学」についての知識を問う試験です。
試験科目としては、一般法科目である憲法、民法、刑法に加え、3つある級(ベーシック、スタンダード、アドバンスト)の2番目(スタンダード)からは選択科目として司法試験科目や他の資格試験で出てくるような、商法/会社法などの特別法や手続法(民事/刑事訴訟法)を選択科目として出てきます。
法学検定もアドバンストレベルになると合格率が10%程度になる程の難易度で、アドバンストレベル合格を、司法試験に挑む程度のものと想定しているようです。
また、特徴的な科目として「法学入門」又は「法学」が必須科目として設定されています。
行政書士試験でも基礎法学という科目が出てきますが、法学検定がそもそも法学の知識を問うものなので当然と言えば当然でしょう。

法学検定受験のニーズは限られている

さて、今回の主題としての「法学検定」を受験する意義は?つまり、ニーズはあるのか?という議論ですが。
僕は、一番下のベーシックレベルを勉強してみた正直な感想として、法学検定のニーズはあまり広くないと考えています。
ただし、法学検定別にけなしているというわけではありません。
現に僕は今法学検定の勉強を始めたのは、この検定を勉強することに異議を見出しているからです。
ニーズがあるとしたら次のような場合だと考えられます。また、以下のニーズを十分に満たしてくれると考えています。

  1. 法学部に入る前に予習をしておきたい人

  2. 法学部で勉強して知識の定着度を確認したい人

  3. 法学部じゃないけど法学の勉強をしたい人

法学部で勉強することをそのまま教えてくれる

個人的には、法学検定の最大の特徴はここにあると僕は考えています。
実際にベーシックレベルのテキスト(公式問題集)を買って開いてみると分かるのですが、最初のチャプターは「法学入門」の問題が出ます。
僕もそうですが、最初から理由付けをして正答にたどり着くことはまずできないと思います。
それは、法学検定のテキストは法学入門のチャプターで、「法哲学」や「法制史」について扱うからです。
また、身近に大学の法学部に進んだ人に聞くと、やはり法哲学や法制史を習うそうで、最初から理解するのはほとんどの人が不可能だそうです。
憲法や民法、刑法についても法学検定ベーシックレベルのテキストでは理論や学説、判例などを交えて丁寧に扱ってくれます。
従って、法学部に入ることが決まっていて今から予習しておきたい人にはおすすめできます。
また、受験級の想定が、ベーシックレベルが法学部1~2年次終了程度、スタンダードレベルが法学士号終了程度としているので、
難関法律系資格合格を目指すわけではないけど、「自分はここまで法律を勉強した」という証明を残したい人に対してもおすすめです。

海外で初心者から法学部に入りたい人(僕の場合)

僕が法学検定を勉強し始めた理由がこれです。
外国語で、しかも未知の学問を勉強するというのは非常にハードルが高いです。
以前、元同僚のメキシコの弁護士に法学部学生時代に読んだというメキシコの「法学入門」という本を薦められて読んだことがありますが、全く意味がわかりませんでした。
ただ、これはネイティブの法学部新入生が読んでも、主に法哲学等について扱われているため、あまり理解出来ないそうです。
そんなネイティブが読んでも理解出来ないことを非ネイティブが理解できるはずがありません。
では、日本の法学部で一旦勉強してメキシコの大学に進学するか?それはあまりにも非現実的です。
でも法学検定は法哲学などの法学の基礎を扱ってくれて、憲法、民法、刑法などについても基礎の部分を扱ってくれているので、日本語で法学のエッセンスを学べると思うと、僕個人の場合においては法学検定は非常に有益だと考えています。

法務翻訳者になるなら法学検定はあまりおすすめできない

僕は、メキシコの弁護士の他に法務翻訳者を目指していますが、この点においては法学検定はあまりおすすめ出来ないと考えています。
基本的に、法務翻訳者は契約書等の実務的な法律の内容を扱うことが多いため法理論等で出てくる概念に関する言葉だったりというのは覚えても使わないことが多いはずです。
法務翻訳者を目指すのであればビジネス実務法務検定を勉強した方がより内容が実務的で役に立つと考えられます。

ニッチかもしれないけど有意義な検定試験

上記の通り、法学検定は取得したら「就職で役に立つか?」、「収入が上がるか?」の点については正直なところ疑問が残ります。
それは、士業の資格試験が強すぎるのと、もうひとつの民間資格のビジネス実務法務検定も実践的知識を問い、証明するものだからです。
ただ、多大な金銭的、時間的投資をせずとも、司法試験/司法書士/行政書士に挑戦するという心理的なハードルを排除して気軽に法学の初歩から高度なレベルまでを学習する機会を与えてくれる法学検定は、需要としてはニッチかもしれないけど、意味のある検定試験だと僕は考えています。


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