11/14~20

日曜
神保町へ歩く途中の電柱に猿楽町の文字を見つけた。映画のポスターを見たときはなんとなくもう少し郊外か、京都のような町かと思っていたけど意外と都心にあった。目に入ったビストロで情けないビールの注ぎ方をされて、東京堂書店で乗代雄介『旅する練習』、永井玲衣『水中の哲学者たち』を買ってまた歩く。水道橋経由で飯田橋、エクセルシオールカフェの2階は今まで入ったチェーン喫茶の中で最も静寂が保たれていた。1時間ほど寝てしまう、日に照らされた川が見える窓のその上空に深い低気圧があったから。川べりを旅するサッカーボールと叔父と少女の旅の続きを三度しまって、会社の冷蔵庫を開く。
目黒までタクシーを走らせている間、その日の日記を書きながらオードリーANNを聴き始めてものの3分で吐きそうなくらい気持ち悪くなる。この3日で4万歩近く歩いても、ずっと低気圧の圏内からは逃れられなかった。
仕事はいつだってウザい。すっかり暗い一本道を歩きながら、目黒川を渡っても何も思わない。
気が付くと赤羽じゃない方のアングラの前に立って、半年ぶりに明かりがついたその様に心底安心する。ビールはうまい、新しい店長は少しだるい。だけど、久々の開店に感動すらしている店員側のパフォーマンスもだらしない日の終わりにはちょうどいい。モニターでQPLOを流すと、オーガやぺトが好きな誰かの父親が良い反応をしてくれて、きっとこの人とも半年ぶりにこうやてカウンターで話しているのだけど、働き始めてから半年という単位がグッと縮まっているせいで、QPLOが伝わった嬉しさ以外の歓びはないんだな、と思いながらもう一杯を注文した。

月曜日
『マツコ会議』に出演した松永の発言に非難が上がっている。放送初日は涙を流す松永のサムネとともに好意的な文章で広まっていたので、少し珍しいような、何十回も見てきたことのような、そんな気分。若林も松永も、多忙を極めてメンタルがぶっ壊れた状況がテレビの中で涙として発露していることを心配に思う。
人生のケツをもたないくせに発言を編集するテレビへの恐怖と怒りをあちこちオードリーで叫んでいた2年前から、30分番組で2時間話すようになるまでの期間は密度がすごかったんだろうな。

夜、「川島明のねごと」千鳥ゲスト回を聴きながら散歩する、テレビで人気のある芸人に共通しているラジオという母体を持たないことと、大悟の最近の毛量がずっと気になっていたのだけど、ノブの育毛話が出て、そっちか!となる。「川島は1スベりでもしたアウト」「結婚のご祝儀の折り紙」山里と久保田もそうだけど、この世代の大阪芸人の会話はすごいと思う。
懐かしくなって、ノブが遅刻したネタパレ2013年を見る。ここが良いターニングポイントになるんだから、当時のテレビってすごかったんだな。世代が一つ上がって、「日曜サンデー」爆笑問題と中川家のトークも聴く。なんにも変わらない日曜日の朝って感じを、自分が爺さんになったときに何から受け取れるのか想像したら寂しくなった。

1時間で芯まで冷える。「ヴェノム」はサッと観られるアトラクションで、EDの「スパイダーバース」に触発されて5年ぶりに待ち受けを変えた。
silk sonicのアルバムを聴きながら、こんな日にパーフェクトな手ごたえを感じられないならこの先キツいと想像しながら逃げの入眠。

火曜日
「空気階段の踊り場」を「伊集院光とらじおと」を挟んで聴きながら出社。伊集院の「連結」というワードが絶妙にダサいし、自分からこの後収録があると言えない空気階段も楽しくはない。
完璧とされるパフォーマンスも、きっと9割既視感があるが故の快感だと思うので、それ通りだったらまた文句をたれたくなり、それ以下だと、ファンであるが故の肯定に進むので、俺は何が楽しくてこんなことをやってるのか寂しくなる。

喫煙所で囲まれる空気がだんだん冷えてきた。向井秀徳を聴きたい。鉄風の季節。一方でロマンチストはどこへ行くかと言うと、年明けペペのチケットの報せ。

いつぶりか、半年よりももっと長い。一休の端の席でボブを待ちながら「What's up danger?」を耳に流す。
ソニーのスパイダーユニバースの話から始まる。ヴェノムは面白いけどそれだけで、2Lのコーラをドンとおかれたみたいな。一方で『マルコム&マリー』はウイスキーかシャンパンか。えぐすぎるから人に勧めづらかったとボブは言うけど、俺はもっと感覚的な部分で笑えるから、全然進めていいと思う。そのうえで、どうだった? をしなくちゃいけないから、勧める自分の問題だろう。「あれってなにかっていうと~ 」ボブの新しい口癖が毎度うるせえ。あれの監督が白人で、そういうところで泥がついて賞にはひっかからず、結果影が薄い作品になったのではという話は興味深かった。最近話した大人がアララのことを褒めてくれたというボブに、じゃあ更新せいやと言うのは互いが「あーーーー」と発声しているのと同義なので、もっとうまく話せるようになりたい。でも、
「俺は毎回、月に一回は更新しなくてはいけないチキンレースに負けているんだ!」ビールの大ビンが次々運ばれてきて、閉店まで居座るのはいつだって俺たち、だけど開始時間はずっと遅くなった、今日は19時半過ぎ。会計は5千円、いつまでも一休でいい。

水曜日
・10時公開のスパイダーマンNWHトレーラー第二弾解禁にソワソワする。
・公開時間10時半だった。
・上司に話しかけられる。いろいろ終わりの出ない諸々のことを会話
・10時47分喫煙所脇の階段でイヤホンをしてトレーラーを見る。
思っていたよりも思っていた通りで、ゲームのルールを握るのがストレンジっぽい。『ワットイフ』の逆みたいのことだろうか。昨日話していて思ったけど、結集系の画が呼び出す興奮はもう感動まではいかない。

夕方にどこか出かけたくなり、大江戸線で川を渡って森下駅から清澄白河まで歩いた。夜は街の明かりでどれくらい飲食できる店があるか一目瞭然なのでいい。チェーンじゃない店が多い碁盤目の街を歩きどおし、商店街のどら焼きが本当に美味しかった。
半蔵門線で渋谷まで出て、LOFT9でゼンモンキー荻野、ダウ90000蓮見、ハチカイ警備員のトークライブに。ブルックリンラガーとパンクIPAを合わせて3本飲んでフラフラになって帰る。布団の温かさよ。
トークライブは換気休憩含む2時間弱で配信もある。あの内容で2000円なのだから、世の中トークライブってぼろい商売だと思う。有名税はこの付加価値から捻出されている気がする。
可愛げのある陰キャ、不敵な大喜リスト、明るい野心家、芸歴2年目の三者三様同世代、友達が舞台で緊張しているのを見る感覚になる自分がうざったい。
アパートが広がる景色を前に、泣きそうになる警備員の話も分かるし、ここで暮らす人々の中で自分が面白さビリなわけないから絶対自分にも「家」はあるなと思う蓮見の話もめちゃくちゃ分かる。面白さが最初の物差しとして生きている人、舞台に立っているか否か、レールは少しずつ分岐していくのだと思うとそれを見て泣ける。

蓮見さんの話くらいは覚えておこう。さまあ~ずを憧れてお笑いを始め、女の子が爆笑しているのが好きだからダウ90000があると言っていたのが印象的。椅子取りゲーム・だるまさんが転んだみたいな、遊びをルール無視で楽しんで盛り上がる女の子たちのコントがあるらしい。マームとジプシーの藤田さんが女の子のためにスープを作るのが好きと書いていたエッセイを思い出した。お笑いをやっている人の中で、この角度でやってる人はきっと最近までいなかった気がする。
考えたトークテーマを事前に自由律俳句にして、会場中からモニターに流す演出はかなり「らしい」んだけど、全体通してどれくらい楽しむために自分の感度を調整していいかわからず、何もしないでただビールを飲んで帰った。それでいいと思ってる。
帰り道セブンのwifi乞食になってポッドキャストを更新。

木曜日
最近職場でなかなか日記が書けない。抱える案件が増えてきて、数えたら動いてるものだけで7件ある、うち3ヶ月やってきた施策が来週本番なので戦々恐々、やたら電話をかけまくってる。対面打合せができる会社も増えてきて、外出の量もそこそこ増えてきたせいもあるか。休日仕事も今週は4回、うち2回は7時~21時とバイト時代のやつなので、当然飲みに行く日も増える。時間がない、金すらない、乾杯ニッポンの衆

13時にM1準決勝進出者発表。金属はいい加減見たい。ヨネちゃんから「ももきた!」とLINE

TVerで、ゴッドタン、あちこち、バチくるオードリー、霜降りTV

20時に家について「ドキュメンタル3」を見た。12月に配信を控えるシーズン10のチャンピオン大会トレーラーに映る参加者6人があまりにかっこよくて、見た覚えのない山本圭一優勝回をつけたらあっという間に24時過ぎだった。トレーラーの話に戻ると、天才鬼才と言われるメンバーだから当然かもしれないが、一挙手一投足、声のトーンや発音すべてが画になりすぎていて感動した。お笑い芸人と一括るものの、映像で生まれる華のようなものは、テレビドラマに出る役者よりよほど個性が個性のまま供給されるから表現者として優れているように感じる。
シーズン3、終盤に差し掛かる手前まで本当に面白かった。TKO木下の戦い方を見て、本物と作り物の境界を視聴する側がジャッジされる気分になる。(これは回を重ねるごとに薄れているけど、もともと1000万円がガチを誘い出す要因なわけで、それを無視してパフォーマンスだけで評価するのは危うい。逃走中の自首と全く同じだ)春日のうな重にひっくり返るくらい笑った。
Twitterを見ていたら、風俗嬢が木下を接客したことをストーリーズに挙げたのが拡散されていた。誰か木下を愛していますように。

金曜日
ネバヤン「おわかれのうた」MVを見た人はみんな小松奈々の元カレ、という縦軸でラジオをする村上が本当に浅くて、野田が言う通り何も話していないラジオだった、時間が経過していたら何か発生していると思っていたという村上の返しが好き。
若林のエッセイを読みながら出社。前回のANNで『キッズリターン』とそのときの日本の閉塞感いわゆる「規定路線から外れた後の人生は存在しない」という根拠のない圧迫感を的確に描いている印象を感じた、と話していて、宇野さんのいう「物はなく物語がある」時代との時系列が気になったのを思い出した。

久しぶりに平日週5で働いているのでそろそろ身体がウーッ!となる。今夜をどうすればいいのか分からない。

加納さんのラジオ聴いてて、朝8時から白武さんちで各々別のリモート打ち合わして、その後収録に出かけて。
タクシー乗り場でガチャピン見つけて、写真撮ろうとカメラを向ける2秒前にはもうポーズ決めてた、
早かったなーもう構えてるやんと思った。ガチャピンはガチャピンやったよ。嬉しかったなー。今日はそんな偶然がありました。
なんか、この話を聞いたとき、大人になるってこういうことなんかなと思った。

アングラに寄ると拓が新店長と二人で立っている。赤羽店に慣れたせいか、タップ8種類は少なく感じて、しかもディフェンダーIPAとか豊潤とか、わざわざ飲まないものも多数あって、結局2種類で5杯飲んだ。(帰りに吐いた、最近調子が悪い)店舗拡大に向けて社員を雇用して店長にした結果、営業時間や企画などについて、オーナー親子と社員の間に齟齬が生まれているらしい。ビールの知識には長けているものの、面白かったらやってしまえ精神が無い店長に対して、あくまでオーナーの息子ではあるもののバイトという立場の差ができて心労が溜まっているらしい。十条に逃げてきてる理由が分かった。面白そうだからやってみよう精神で規模を拡大した結果、意思決定の権利が希釈されてしまった、ありそうな話だけどリアルな組織の現場だ。しぶしぶ赤羽シフトに拓が向かったので(宇宙QUEST Citra缶のデリバリーは叶わず)新店長と彼の友人と喋る。スラックラインをやる人たちのようで、まだ歴史が浅いスポーツのトップ選手の動画を見せてもらった、崖の間に張ったベルト上をクルクル跳ねる様子は、スリルを求めた異常者が無理矢理自分の趣味をスポーツ化したのではないかと思うほど、異常だった。クライミングと似ている。

土曜日
なんにも予定がない土曜日で、ずっとYouTubeを見ていた。最近ワンピース解説動画をよく見ていて、ユデロンという人の動画が、連載話数の数字を語呂合わせして考察する珍しいものなのだけど、どうも的を射ているというか、確かに単行本のSBSで尾田っちは語呂合わせを多用している印象があるので、あながち説得力があるようで、とにかく面白い。だけど、第何話の話だからと伏線や関連性を意図しているのだとしたら、それはもう超人ではないのかと思う。これを一人の人間が作ったものなのかと不思議になってくる。
ダイパリメイク、粗品チャンネル(生涯収支マイナス1億円君)、さらば(ガムテアウトレイジ蹴り)、かもめんたるう大×しずる村上、大喜る人、ZAZY、
何も食べずに時間を溶かしていく罪悪感と焦燥が徐々に膨らんでいくのだけど、ピークを過ぎるとむしろなんていい休みの使い方なのだろうと充足感がやって来る。
その中で、天竺鼠・川原とランジャ国崎のYouTubeがとても面白かった。
他人から聞いた話を交互に話す趣旨がタイトルからわかる動画、尺が40分あるのだけど、理由がある。

充足感は感情に起伏を生み、一休に着いた時には怒りが爆発しそうだった。不思議な感覚で、何かに当たり散らしたい気分で俺が遅れてきたせいで、変な感じにしてしまった。入りがそんなんだから、ボブの豆知識にもなんだかイライラして(状態が先にあって後からやってきた現象に腹が立つ、まったく迷惑なコントロール)結局早く帰った。家をでるまではすごく楽しみだったのに。
ボブのところで断った話らしいのだけど、谷頭君経由でロフトの空きスケジュールでアララにも話が来たらしい。こういうときに動けるような、ポテンシャルと母数を貯めておければいいなあと思う。
考えてみると、面白くて満足できたトークイベントの打率はめちゃくちゃ低い。書籍に関連するモノは事前に登壇者と参加者の間で共有できている情報量が担保になるので該当しない。そうではないトークイベントって、いったいどこに観客の満足ポイントがあるのかわからない、それはきっと登壇者自体のファンによる、何にせよ肯定する眼差しが向けられているもの、なのか。そう考えたら、久保みねヒャダとかは実力で上り詰めたのか、それはすごい。
グラデーションで責任とか交流する人が増えていって、お互い別の立場にいる前提でコミュニケーションの一歩目が始まる視点というか。そんなのを、いつか備えるのかもしれない。

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