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可哀想な男。

見えないものにまで名前をつける人間とは違うな。そう思いながら男はカエルを持ち上げ、鏡の前に立っている。
カエルに鏡を見せてあげているような格好で、両手でしっかりカエルの脇の下を持ち上げたまま男は考える。
人間だった頃なら、今のわたしのことを幽霊と呼ぶだろうか、と。
男の姿は、鏡には映っていない。

それは男が、この世から随分と遠くへ行ってしまったからなのか。

それは男の視力が、この世のものを見ることができなくなってしまったからなのか。

或いは、本当に男などそこにはおらず、只、カエルが宙に浮いているだけなのか。

カエルは恐怖を感じるのだろうか。
身の危険ではなく、「怖い」と。
ただ不自由さにストレスを感じるだけだとしたらと、男は寂しくなった。

カエルが鏡映って見える。
可哀想なカエル。


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