恐らくは報われない。
なるべく息を殺して走った。
夕方。カラスが鳴くには早い時間だが、ひとりで外にいる男の子には十分に罪悪感のする時間帯だった。
それでも走った。家とは関係のない方向へ走っている。
走るのなんて得意でもなんでもないが、草むらの中を進むと一度振り返ってから直感的にその場にしゃがんだ。
役目を終えたようにくたびれた色をした雑草は、頬のあたりまで背伸びしてくれている。
虫の声が、うるさい。
そして、それよりも自分の鼓動が鼓膜とあたり一帯を震わせているようで、うるさかった。
なんだかとても悪いことをしているような気がする。
はじめにそれを道端で見つけたときは、そんな風に思わなかった。何故だかわからないけどこうしなければいけないと思った。汚いとは思わなかったけれど、それを抱えてあてもなく、ただ自分の知っている所で穴を掘れる場所をめざして、そして今辿り着いた場所で、悪いことをしている気になっている。
でも最後まで終わらせなければいけない、そうも思った。
かぶせた土が、それを隠すと、すこし気が楽になる。
暗くなった空に、黒いカラスが鳴いている。
帰路につく。
一台の車、一羽のカラス、一人の男の子。それと、ひとつのそれ。
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