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暇だったから、ただ暇だったから。


無数の花が咲く花畑を、その人は、丘の上のベンチから眺めていた。

この中に四つ葉があるのだなと思うとすこし幸せだし、なにがあるか見えない深海の底には、恐れと好奇心を連れてくる。

その人は、靴ひもが片足だけほどけているのに気が付いていたが、そのままにしていた。

シャボン玉を吹くように息を吐く。
ビーチの砂利の大きさをバラバラにするために風を吹かせた。
それと同時に、何かの火が幾つか消えた。

その人は、ほどけた靴ひもを結びなおした。
別にどこかに行くためではなく、ただの気まぐれだった。

煙草に火を付けたら火の粉が飛んで、風に乗り、花畑の花をひとつ燃やした。ただの気まぐれだった。



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