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念願の介護事業スタート!〜そして苦悩の裏街道本格化〜

9月に入り、介護事業のスタート準備が整った。

突貫工事だったが、本社の労務にも縋り付いて、必要な手続きや資料作成をお願いできたお陰で、10月オープンの手筈が整い、想定より早くのスタートが切れる事になった。

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都内でまず訪問介護事業を1店舗開設、スタートスタッフは合計4名確保、うち2人は日本在住歴の長いフィリピン人とインドネシア人の女性で、人員層的にはあと3店舗拡大しても足りる程度は余力があった。

だが、まずは最初の1店舗目をきっちりとスタートさせることが最優先だ。

高齢者層が多く利用が見込める、且つ収益面でも期待できるという点で世田谷区を第一店舗と決めていて、賃料の点から駅から割と距離がある立地をチョイスした。

初期投資として、300万を本社から融資してもらい、賃料と当面の人件費に充てる見込みで、集客が予定通りに回れば2年半で回収でき、3年経過時には充分貯金ができる算段だった。

これは自分の計算だけでなく、名古屋でお世話になった佐伯にも見てもらい、シミュレーションは念入りに行っていた。

自分達の事業としてはこれを皮切りに都内だけでなく神奈川、埼玉で3年で10店舗拡大することを目標としていて、加えて副業的に資金を得るため、佐伯ら東海エリアで集客コンサルティングや人材紹介を並行して行うことを決めていた。

もちろん、大迫にも何度かの却下を食らったものの、最終的には決裁を得て辿り着いた。

その間、裏稼業の手伝いもちょくちょくあったが、オープンが近づくにつれオフィスに帰れないことが多くなっていたため、この頃はだいぶ頻度は少なくなっていた。

正式にオープン日が決まったことを受け、大迫や、本社の責任者と数名を集めた最終確認のミーティングが行われる事になった。

その席には、僕と大迫を引き合わせた社長の東田も同席し、改めて収益面の見通しを伝え、大迫との邂逅の日に提示された

・3ヶ月やってみて、見込みがあるか検証(証明)する。

の条件を確認するスタートラインに立ったことを伝えた。

まだ事業開始したわけではないので見込みが立ったとは言えない状況だが、与えられた準備期間で走り出すための用意は出来た自負はある。

その間大迫と東田はちょくちょく会っていたようなので、恐らく進捗は伝わっていただろうがー。

本社での打ち合わせを終え、店舗予定の物件に向かい、内装工事の段取り確認をこなすと、次は近所のカフェに呼び寄せていたオープニングスタッフ4名と9〜10月のスケジュール確認を行った。

フィリピン人のラケルさんとインドネシア人のチョナさんは対照的で、ラケルさんは太陽のように明るく常に喋っている人で、片やチョナさんは穏やかで相手の話をしっかり聞ける性格で、非常に良いバランスの人選だった。

日本語のみで通して全く問題ないミーティングは1時間ほどで終わり、17時に赤坂オフィスへ戻ることができた。

次は、佐伯らと進めるコンサルティング・人材紹介の契約書面を作成するー、という段になって、例によって大迫から着信が入った。

「今から新宿のプラザホテルに行ってくれ。17時45分までに頼む。俺はどうしても今外せないから。」

大迫は、ゆかり、という女がロビーにいるからピックアップして指定の部屋に連れて行け、と言うといつものように、こちらの返答を言う前に切ってしまった。

いつもの事ながら、アポがあるわけじゃないから仕方ないが…もし俺が行けなかったらどうするんだ?と思いながら、一先ず荷物を整理し新宿へ向かった。

初めてプラザホテルに行くということもあり、僅かな時間しかないと焦りながら向かった。新宿駅から都庁方面に向かうルートは単純な地下道の一本道、とは言え距離がかなりあるから、急いで行く事には変わりはない。

まだ暑い9月の夕暮れ、汗だくになる一歩手前で何とかプラザホテルに着くと大迫に段取りを確認した。

ロビーにいる女子をピックアップし、指定された部屋にお連れする、但し料金は事前回収ー

女子を待たせる間が嫌なので、僕は先に部屋に向かい、客からの金を回収した。

この日は特筆するような相手ではない、普通のサラリーマンのようだった。申し訳ないが、どこにでもいるような、40〜50代の普通の男性だった。まぁ、強いて言えば、こんな普通の人もこういうサービスを使うんだな、としみじみと思ったくらいだろうか。

特に名前を伺うこともなく、一応丁寧な対応になるよう接客し、今回料金の五万円をきっちり回収し、ロビーへ向かった。

急ぎ足で宿泊客がごった返すロビーに向かうと、1人だけ服装もメイクもしっかりした、白のブラウスに薄いピンクのフリルが付いたカーディガンを羽織った、色白の女性が目に留まった。

恐らく彼女だ…

その女性に目を向けながら、大迫から伝えられた電話番号に掛けてみた。

やはり、あの子か。

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「ゆかりさんですか?」

その女性は電話に出ると、「はい。」と静かに応えた。

すぐ傍にいる旨を伝え、合流すると僕は今日の段取りを伝え、彼女への取り分を渡した。

5万受け取り、2万渡す

ゆかりは、21歳の大学生だった。顔立ちが整ったとても清楚な女性で、AKBの渡辺麻友に似た雰囲気があった。

正直、7月から度々こういうシチュエーションがあるが自分自身とても忙しくあまり気に掛けていなかった。ただ、彼女の前でお金を受け渡し、特に印象に残る訳でもない男にこんなかわいい子を送る、なんて不条理な事を自分はしているんだろう、とこの時ばかりは感じてしまった。

2万でこういうことをするのか、ということもショックだった。自分がウブなだけなのだが…

サービス内容も一応伝えるのだが、密室内では何があっても分からない。恐らく本番行為までしてるんだろう。

ただ、戸惑いながら説明する僕よりも、話を聞いている女の子たちの方が慣れているというか、肝が座っている。

淡々と説明を聞き、分かりましたー。とその場所へ向かう。何て逞しいんだ、と思いながら、ゆかりを指定の部屋に連れて行った。

女性を送る時、いつも情に駆られるというか、本当にこんな事しないといけないの?と聞いてしまいそうになる。

ただ、彼女たちにはそれぞれ理由があり、その道やその稼ぐ方法を自分で選んでいるのだ。

何も手助けできない僕が無責任に声を掛けるのは、違う。

いつもそう思い、何も言わずに見送った。

ここでも、ゆかりが部屋に消えていくのを後ろから見届け、一仕事が終わった。

ふぅ…と一息つき大迫に報告をした。

「はい。そしたらオフィスに至急戻ってください。」

それだけ告げると、また一方的に電話を切ってしまった。

溜息を吐きながら、急ぎ来た道を早足で戻って行った。移動中の電車内でも、普段から携帯やPCで作業をするのだが、この日はゆかりのことで頭がいっぱいになっていた。

別にタイプな訳でも好きになった訳でもなく、ただただ感じた不条理に対して、やるせない想いになってしまっていた。

そんなモヤモヤを抱え赤坂に戻ると、大迫はまだ戻っていなかった。

再度大迫に電話を掛けると、これからまた女性が来るから色々ヒアリングをして欲しいとの事だった。そしてヒアリングの後は写真撮影をし、大迫に写真を送れー…との指示だった。

完全に大迫の仕事に加担させられてるやんか…

うんざりした気持ちを抱えながら、ヒアリングシートとカメラのセッティングをすると(大迫からは、使い方を一度レクチャーされていた)、予定の18時半きっかりにインターホンが鳴った。

ドアを開けると、入ってきたのは肩まで伸びた、ウェーブ掛かった茶髪の女性だった。

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「こんばんは、エバです」

今度はコロンビア人のハーフが相手かー…

続く










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