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仮想世界で見つけた乾杯の本質

2020/05/15

緊急事態宣言の中、30人程が集まった宴会が行われた。
誰一人として密な状況を気に留めず、マスクもせずに、楽しく談笑していた。何故ならここは仮想世界、バーチャルの世界でアバターを身に纏い、3DCG空間を自由に歩き回れる場所である。

私はDJ-09と名乗るただのサイバーパンカーだ。
ヘリーハンセンのジャケットに、3Dプリンタ製のマスクがトレードマークで、現実でも仮想世界でも同じ姿をしている。
好きな酒はビールとウイスキーで、マスクを着けたままどうやって飲んでいるのかはまぁ想像にお任せする。

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バーチャルの世界と聞いてSFだとか漫画だとか思う人も居るかもしれないが、自分は大真面目に現代において日常的に行われている行為の話をしている。
メディアでは通話アプリケーションを活用したオンライン飲み会が取り上げられているが、ここでもう一歩踏み込んだ試みをこの機会にご紹介したい。
それが「VR飲み」である。

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VR飲みはソーシャル系VRゲームでは一般的な行為である。
VRゴーグルを被った状態で、酒を飲む。
ただそれだけだが、VRゴーグルの映す世界は自分の視界に広がる目の前の出来事であり、平べったい画面の向こう側で起こっている何かではない。
紛れもなく眼前に広がる自分自身の体験であるという不思議な感覚は、実際にやってみなくては理解できないほどに形容しがたいものだ。

バーチャルの世界だから、真冬の季節であっても真夏の海の家にも行けるし、春以外でも桜舞い散る公園に行けるし、2020年の日本に居ても西洋ファンタジーな酒場でくつろぐことができるなど……あらゆる世界を選ぶことができる。
自宅に居ながら美しい様々な世界を歩き回り、自分で準備した酒を飲む。
絶景を肴に飲むということが、気軽にできてしまうのだ。

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「場」という要素は酒を飲むにあたり大切であるが、更に重要なのは世界中の人々がこの世界にアクセスして集まることができるという点、つまり「人」という要素だ。
ソーシャル系VRゲームにたいてい存在しているVR飲み向けのワールドは、手元に酒を用意した人たちで毎晩賑わっている。
隣の人に気軽に声をかけてリアルでは何を飲んでいるのかを聞いてみたり、酒の趣味が合えば話は弾んで、宅飲みのいいツマミに関する情報や、スーパーやコンビニで買える新発売の酒の話でも盛り上がる。
もしその人と仲良くなれば、Facebookのようにフレンド申請をする。
そして、もちろん「乾杯」もする。

自分はVR飲みを去年から始めていた。
都心から地方に引っ越して飲みに行く店があまりないし、知り合いも居ない状況だった自分にとって、VR飲みはこの上なく魅力的だった。

そして、仮想世界というオンライン空間で知り合った人達と現実で顔を合わせて飲む「オフ会」も楽しみの一つだった。
年末や盆にでも集まって飲もう、オフ会でもしよう!なんて話をしていた。

しかし、そんな「顔を突き合わせて酒を飲む」という行為が大きなリスクになる時代が突然訪れた。

さて、ハイテク好きが集まるこの界隈。
ダメだと言われてタダで起きるような連中ではない。
リアルで集まるのがダメならば、バーチャルでやろう。
それも、リアルと同じ姿で!

そんな訳でバーチャル空間に現実世界の自分のうつし身(リアルアバター)を持ってきて集まったのがこの「第一回リアルアバター集会」である。

ご興味ある方は是非、上記の動画を最初から見て欲しいが、忙しい方は 1:30:00 あたりから見て欲しい。
バーチャル空間に30人近くのリアルアバターが集まった。
外出自粛が定着して暫くの頃だったので思わず「懐かしい」という感覚と共に、日常だったはずの「飲み会」の楽しさを思い出していた。

突然、乾杯の音頭を自分にお願いされた。
特に何も考えていなかったが「また、リアルでも集まって飲みたい。」という想いを簡単な挨拶と共に述べた。

「乾杯!」

グラスを交わしても当たった感触や音はない。
仮想世界を嘘の世界や非現実と捉える人は少なくはないだろう。
だが、この乾杯に込められた願いや想いは紛れもなく本物である。

この日、リアルに近い状況をバーチャルで再現することを試みたが、宴において場所も酒も、ある意味それは盛り上げるための道具でしかないという風に自分は理解した。
もちろん、いい道具は間違いなくその楽しみをより上質なものにしてくれる。これは紛れもないは事実だ。
よく冷えたグラス、よく清掃されたビールサーバー、開けたてのビール樽、適切な圧力のボンベ、自宅ではどうしても準備はできない。そんな、お店で飲む最高の生ビールが恋しくて仕方なくなった。

だが、そいつで乾杯する相手が居ないことには、どうしようもない。

その為に、どうかこの難局を生き延びて欲しい。
元気に生きてなければ乾杯はできない。
バーチャルでも、そしてリアルでも。
また、乾杯しよう。

もしも、どうしても居酒屋のような賑わいが欲しくてたまらないなら、VRの世界で乾杯することを自分はおススメします。
実は、VRゴーグルが無くてもソーシャル系VRは遊べるし、その方が酒を飲みやすかったりする。

未来の新しい「乾杯」、やってみませんか?

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