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わたしの日々の続きを

ただいま、って言ったはずなのに
再び三日坊主になっていました。

知らず知らずのうちに、自分の気持ちに蓋をしてしまっているな、と気付いた数ヶ月前。
本当は、見て見ぬふりをしたかった。変わらない日々の続きが、突然途絶えてしまうことが怖かった。
でも、一旦立ち止まらなければならないと思ってしまった。

それから、この気持ちや現実と、ちゃんと向き合おうと決めて、もがいて、泣いて、悩んで、葛藤して、なんとか自分らしさを取り戻そうと走ってきた。とっても不器用で、きっとださかったけど、真っ直ぐに生きてみた。

そうして、一つの、大きな大きな決断をした。

この先も、連れ添い、くだらないことで笑い合うんだろうと、信じて疑わなかった大切な人と、別々の道を歩むことを決めた。

彼と過ごした二年と九ヶ月は、私にとって、柔らかなあたたかさをもつ愛そのもので、当たり前のようにそこにあった。
でも実は、全く当たり前なんかじゃない、とっても儚いものだった。

無邪気に笑う彼は、無敵の鎧を纏っているように見えて、実は誰よりも繊細で脆かった。
そんな彼を包み込めるだけのゆとりを、私は持ち合わせていなかったのだと思う。


「おかえり〜!」ってお夕飯の支度をしながら仕事帰りの彼を迎えて、できたてのご飯を並んで食べて、お笑い番組を観てはけたけた笑った。くだらないことで喧嘩して、そうして一緒にまるまって眠りについた。
彼はコーヒーが飲めないのにカフェに付き合ってくれて、私はサウナが好きになった。記念日や誕生日にはちょっぴり背伸びをして、非日常を体験させてくれた。どの季節にも隣には彼がいて、日々は濃く彩られ、とりこぼさないか心配になるほど、たくさんの些細で小さな幸せが溢れかえっていた。
こんなにも性格も好きな物も違う人と一緒にいるのは初めてだったけれど、多分本質の部分は似ていたんだろう、彼の隣はとても居心地がよかった。

多分わたしの時間は、誕生日旅行に連れて行ってもらった去年の秋から、既に止まっていたのだと思う。
あの日の夜、彼はプロポーズをしてくれて、その翌朝に休職することを決めた。きっと人生で何度も経験することはない、幸せの絶頂を得たと共に、大きく荒い不安が押し寄せた。
でも彼と家族になる一心で、つよくつよく生きようと覚悟を決めた。

旅行から帰ってきてすぐに彼は、遠く離れた実家に帰って行ってしまった。お付き合いを始めて間もなくして二人暮らしを始めたわたしたちは、その日初めてひとりとひとりになった。どんなに悲しくても、弱音を吐いている場合ではなかった。共倒れしないように、わたしだけは立っていなきゃいけなかった。
そうしてがむしゃらに生きようとしたおかげで、無意識にわたしはわたしとして生きられなくなっていたようだ。

おかしな話だけれど、本当に知らないうちに、気付かぬうちに、季節は移ろいでいた。まるで長い長い夢から目を覚ましたら一年も経っていた、そんな感じ。

そうした今、彼のいないひとりの日常は、どこか危なっかしくて、薄くて、空虚だ。

わたしはガタッと、静かにしずかに体調を崩した。

熱が出て、味がしなくなって、四肢末梢の感覚がなくなって、力が入らなくなった。箸すらこぼれ落ちるようになって、情けなく笑った。口角が上がらなくなり、笑えなくなった。頭の回転が鈍くなって、思考が纏まらなくなった。すごくすごく苦しくてつらいのに、涙が出なかった。
自分の身体なのに、まるで、自分じゃないみたいだ。

もしこの一連の症状が、彼を失ったゆえのことだったとしたら、効果覿面すぎる。

すぐに全部が全部、大丈夫にはならないかもしれない。また現実に直面しては、つらくなるときがあるかもしれない。でもそのときは立ち止まって、落ち込むだけ落ち込んで、そうしてまた歩き始めたらいい。

たくさんの人に迷惑と心配をかけてしまっている。たくさんの人が、寄り添ってくれて、優しくしてくれた。わたしは一人暮らしになったけれど、ひとりじゃないんだな、って思った。大丈夫になったら、何倍にもして、ゆっくり返していきたいと思う。

彼はわたしにとって、初めて将来を考えた人で、家族に会ってもらった人で、彼の家族や友人にも会わせてもらった。こんなにもいいところもかっこ悪いところも引っ括めて、愛おしく想って、赦せたのもまた初めてだった。


ひとりで生きることは、ちょっぴり、いやだいぶ、寂しくて、かなしくて、空虚だけれど、そんな気持ちたちのことも優しく受け止めて生きていこう。ちょっとずつ、笑顔と元気とやる気を取り戻していこう。

また、本を読んで、言葉を紡いで、旬の食材でごはんやおやつを作って、仕事に励んで、家族や友人とも笑って、自分の時間を取り戻そう。新しく頑張りたいこともできた。

わたしはわたしの道を、頑張って生きてみる。
わたしはわたしの日々をやさしく丁寧に紡いでいくんだ。

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