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ラテンアメリカという名前【うすくちラテンアメリカ_5分エッセイ no.1】

「ラテンアメリカ」という名称は、どことなく不思議な魅力を醸し出している。「中南米」と言わず、あえて「ラテン」と付けるところが、一言で言えば、ずるいと思う。

ラテンというのはそもそも、イタリアの首都ローマ、つまりはローマ帝国の中心部が築かれた「ラティウム」という地名に由来するそうだが、アルファベットのことを「ラテン文字」と言うし、「ラテン語」と言えばギリシャ語と並ぶ西洋文化の源流である、と、専門家ではない多くの人は勝手なイメージを持っているだろう。

そんな西洋文化の重要な根っこともいえる「ラテン」の名を冠し、その下に地名である「アメリカ」と続く。アメリカという名前が人名に由来することはひとまず置いておいて、とにかくこのラテンアメリカという名称は、西洋の覇者たる威厳をまとっているようにも思えるが、実際にはヨーロッパの進出以前のマヤ、アステカ、インカ文明の伝統も息づき、更にはアフリカ系の文化まで内包する、多種多様な文化が入り乱れている。

いわばネタ盛り沢山の海鮮丼である。

多様な民族が歴史的にどのように行き交い、その間に何があったのか、どれだけの血が流されたのかは想像に難くないが、今のラテンアメリカには、独特のエネルギーが満ち満ちているように思う。

かの地を離れて暫く経つが、どうしても心が離れないのは、そのエネルギーの持つ吸引力によるものだろう。風景、歴史、文化、さらに細かく言えば食文化に音楽、美術工芸、スポーツ、そして今現在ラテンアメリカに住む何億人もの人々と、彼らが操る言語、語るべき側面は山ほどあるので、コツコツと、いろいろな形で触れていければと思う。

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