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どん底の私を救ってくれた人②

前回は私をどん底から救ってくれた人のことを思い出しながら書いてみた。

彼女はアメリカ人だが実はもう一人確実に私を救ってくれた人がいる。その彼女はブラジル人。 出会いは8年前の夏休み。その年は我が家では珍しくオールインクルーシブと言う宿泊食事アクティビティなど全て込みになったドイツでは人気のスタイルの休暇だった。 毎日いろいろなアクティビティが用意されているがその中の一つがズンバだった。ズンバをやりたくても近くにできるところがなくて諦めかけていたので大喜びで参加した。そこで先生よりも上手な、ものすごくかっこいいラテンの女性が前の方で踊っていた。よく見ると T シャツにはズンバインストラクターと書いてある。 ズンバが終わってから彼女に話しかけてみた。 

 「どこでズンバを教えてるんですか?」  

なんと彼女が住むのは私の隣町。 でもそこでは電話番号を聞けるような雰囲気でもなくまたねと言って別れた。 ほとんどがドイツ人ばかりのそのリゾートホテルでは彼女のファッションや雰囲気、褐色の肌とカーリーヘアはどこにいてもわかるほど目だっていた。 そのホテルにはバーやレストラン、ディスコまである。私の夫は早く寝てしまうので夜バーに一緒に行くことはなかったが、だんだん慣れてくると一人でも飲みに行くようになった。昼はテニスをやるので顔見知りも増えてきた。 ある夜、屋外にある素敵なバーで一人でカクテルを飲んでいた。なんとそこに彼女がご主人と入ってきた。バーはとても広いので私のことは目に入らなかったようだ。話しかけに行こうかドキドキしていたが席を立つことができなかった。そうこうするうちに彼女たちは立ち上がりたまたま私の前を通った。彼女と目が合い軽く挨拶を交わした。でもそれだけ。あと数日しかないのに話しかけるこんな大事なチャンスを逃してしまった・・・とガッカリしながらもカクテルをもう一杯頼んだ。

 信じられないことが起こった。彼女が一人で戻ってきたのだ。 「夫と子供達を寝かせてきたわ」 そう言っていたずらっぽく笑った。 それからは楽しくおしゃべりが弾んだ。私が大好きな音楽のこと、踊りのこと、ブラジルのこと、そしてドイツ人の夫を持つ女性の共通の悩みなど。しばらく飲んだ後ディスコに行った。 ラテンの曲がかかると彼女はそこにいる全員の目を釘付けにした。ラテン女性にしかできない腰の動きや素晴らしいリズム感。ドイツ人の中にいると特に際立った。 そして最後に彼女は電話番号を私にくれた。 私の休暇はそれから数日しか残っていなかったのだが毎晩彼女と会って飲んで踊った。 

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 休暇から帰ってきて彼女に連絡した。彼女のズンバの先生のクラスがあるから一緒に出ようと誘ってくれた。 そのまま家に招待してくれて素早くランチまで作ってご馳走してくれた。 彼女はズンバのクラスを持っていないが先生はジムで毎日のように教えているからと紹介してくれた。 その先生との出会いが私のズンバ人生の始まりだった。 ブラジル人の彼女はその先生に惚れ込んでズンバのインストラクターにまでなってしまったそうだ。その先生はドミニカ人で、ズンバだけでなくフィットネスプログラムも教えられるような本当のプロだった。 彼女のズンバを受けたくてジムに入ることにした。そのジムがあることは知っていたがまさか自分が入る日が来るとは夢にも思ったことがなかった。今でも覚えている。初めてそのジムの扉を開けた時の瞬間を。自分のようなものが入っていい場所だとは思っていなかったので扉は重かった。 人生の次のステージへの扉を開けて新しい世界に入っていくような感覚だった。 ジムにいるだけで心臓がドキドキした。数年後まさか自分がそのジムでズンバを教えているとはあの頃の私には考えもつかなかった。先生を追いかけて週に3回、時には他の先生のクラスにも出た。1ヶ月で体重が5キロ減った。毎朝起きると今日はどこでズンバだっけと考えてウキウキする日が続いた。 ブラジル人の彼女とドミニカ人の先生は私生活でも仲良しで、そこに私も入れてくれて食事や踊りに連れて行ってくれた。時には彼女らのラテンの友達が大勢加わりまるでドイツではないみたいだった。彼女達といるのは夢のように楽しかった。 YouTube のラテンの踊りのビデオを見ながら、(昔はこんな日もあったのに・・・)と泣いて過ごしていた私とは大違いだった。  

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ドミニカ人の先生は引っ越してしまったのでもうめったに会えないが、去年は久しぶりに会いに行ったし、コロナの時期はなんと先生が私のオンラインズンバにゲストとして登場してくれた。先生のオンラインクラスにも何回か出た。今でも私の大切な恩師である。ブラジル人の彼女は今でも隣町に住んでいるのでそんなに頻繁ではないが時々会う。 彼女には時々改めてついこう言ってしまう。 

 あなたが私のここでの人生を変えたのよ

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