絆創膏

絆創膏の種類と数は多いほうがいい

地獄のような暑さの季節が終わりつつある。
ストレスには気候のような環境からもたらされる身体的なものもあるというのは、言われてみれば考えるまでもないことだ。
この夏をどう過ごしただろうか。

私は8月の半分以上をリモートワークで家で過ごし、地味だけれど充実した夏を過ごした。

体質的にストレスに弱い私は、ある時期を境に徹底的にストレスの原因を避けるようになった。それはそれでひとつの知恵だけれど、人や社会と関わって生きる限りすべてのストレスが消えることはないし、贅沢な環境を一生維持できる保証はない。つい先日もインターネットを流れる暗澹たるニュースの数々にダメージを受けていたところだ(それに気づいていくつか工夫をして改善はしたけれど)。

薬箱を作る

日々避けがたいストレスを受けながら生きる上で、生きづらさを軽減する方法のひとつに、いつでも開ける薬箱を用意しておくことが挙げられる。

以前、サポートネットワークを書き出して外在化する方法を紹介させていただいた。

今回ご紹介したい方法は、自分で自分を助ける方法の外在化だ。
こちらも実際に手を動かしてやってみてほしい。

コーピングレパートリー、できれば100個

ストレスを受けたときの自分助けの方法のことを、「コーピング」と言う。
ストレスを受けたときの対処方法を書き出してみよう。
この時、自分の心や体を傷つけるものかどうか検証し、あてはまる場合は別のものに置き換えていこう。
(ちなみにその最たるものが「自殺」ということになる。自殺が救いに感じられるほどの状況である、ということかもしれない。別のもので置き換えられますように)

できれば、100個を目標に、質より量で書き出そう。
コツはひとつのストレス解消法を工程で細かく分けることだ(分けた分だけ楽しみは味わい深くなる)。
例として私のコーピングレパートリー100を以下に記しておく(長いのでスクロールで飛ばしていただいていいです)。

1.お湯を沸かして紅茶をポットに入れる
2.ポットにお湯を注いで紅茶が抽出されるのをぼんやり眺める
3.紅茶の香りをかぐ
4.紅茶を口に含み、味わう
5.紅茶を飲み込んで、あたたかさが胸にじんわり広がるのを感じる
6.どんなお菓子を作ろうか考える
7.出来上がりを想像しながらスーパーでお菓子の材料を買う
8.自分の作ったお菓子を家族が喜んで食べているところを想像する
9.無心でお菓子を作る
10.オーブンにセットして焼き上がりを楽しみに待つ
11.自分で作ったお菓子を味わって食べる
12.自分で作ったお菓子で家族に喜んでもらう
13.プールに入ってぐいぐい歩く
14.プールの壁を蹴って伸びる
15.平泳ぎでのんびり泳ぐ
16.前の人をクロールで追い抜く
17.プールから帰ってプロテインを飲む
18.友達とLINEやチャットで話す
19.友達と美味しいものを一緒に食べる
20.友達と一緒に何か作る計画をする
21.友達を連れてゴールデン街に行く
22.友達と一緒に写真を撮りに行く計画をする
23.友達と一緒に写真を撮りに行く
24.花とカメラを通して向き合う
25.写真の選定をする
26.写真の現像をする
27.現像した写真をSNSに投稿する
28.現像した写真をPCの壁紙に設定する
29.自分で撮った新しい写真を友人や同僚に見てもらう
30.自分の撮った写真を眺める
31.英会話の先生をプロフィールを読んで選んで予約をする
32.英会話の自己紹介で自分の撮った写真を見てもらう
33.海外の人と英語でおしゃべりをする
34.英語の記事を声に出して読む
35.レッスンの後に先生の書いたコメントやノートを読む
36.同僚とくだらない雑談をする
37.仕事で役に立ったことを思い出す
38.同僚たちと飲み会で面白い話をたくさんする
39.ランチのサラダバーをうまく盛り付ける
40.サラダバーで大量の野菜を食べる
41.カフェテリアで売っているコーヒーをタンブラーに入れてもらう
42.カフェテリアの店員さんと世間話をする
43.コーヒーの香りをかぐ
44.コーヒーを味わって飲む
45.デスクのがじゅまるとサンスベリアを眺める
46.がじゅまるとサンスベリアにお水をあげる
47.前の部署の同僚に連絡をしてランチの計画を練る
48.前の部署の同僚とランチで美味しいものを食べる
49.同僚とSwitchで遊ぶ
50.お菓子を買ってきて同僚とシェアする
51.帰宅して母に「ただいま」と言う
52.母の作ったお味噌汁を同じ食卓で食べる
53.頭からシャワーを浴びる
54.湯船にゆっくり浸かる
55.お風呂で鼻歌を歌う
56.ツイッターで本読みの人たちの詩などの引用を読む
57.本屋で気になる本や周辺の本を立ち読みする
57.気になる本をアマゾンで調べる
58.ほしい本やKindleをアマゾンで買う
59.お気に入りの古本屋さんに行く日を決める
60.現金を多めに財布に入れて古本屋さんへ行く
61.古本屋さんで宝物を探す
62.古本屋さんで買った本を持って雰囲気のいい喫茶店を探す
63.喫茶店で戦利品の本を眺めたり読み始めたりする
64.買った本を本棚の好きな場所に差し込む
65.会話をするように本を読む
66.おもしろかった本を友達に勧める
67.本の引用をツイッターに投稿する
68.気に入った個所をノートやiPhoneのメモに書き写す
69.本の引用を読み返す
70.引用集から引用してnote等で記事を書く
71.slackでいろいろなひとと話す
72.Amazon Musicで音楽を聴く
73.アレクサに気分に合わせて音楽を選んでもらう
74.ピンときた曲をマイリストに追加してインスピレーションの元にする
75.曲や詞がおりてきたらメモを取って味わう
76.頭で鳴っている音でギターを鳴らす
77.できるところまで曲や詞を膨らませる
78.完成した曲の演奏を練習する
79.完成した曲を頭の中で流す
80.ぬいぐるみを抱きしめる
81.ぬいぐるみ(自分の味方)に話し相手になってもらう
82.深呼吸をする
83.お香に火をつけて燃えているのを眺める
84.お香の香りをかぐ
85.アレクサに自然音を流してもらう
86.明かりを消して目を閉じて瞑想する
87.呼吸に注意を向ける
88.夜空の月や星を眺める
89.散歩をする
90.好きな人に優しくされたのを思い出す
91.なるべく早く逃げる
92.美容院でいつもの美容師さんと談笑する
93.美容院で髪形を整えてもらう
94.下北沢で安い服や古着を見て回る
95.明るい部屋で二度寝する
96.Netflixでクイア・アイを見ながらハイボールを飲む
97.TEDで興味のあるスピーチを見る
98.クラウドファンディングサイトを見ておもしろいものを探す
99.不安や心配事を「不安メモ」に書き出して客観視する
100.目標や向かいたい方向を再確認する

できただろうか。それがあなたの薬箱だ。

薬箱の中身を使う

薬箱はいつでも見れるところに持っておき、なにかあったらすぐに開いて、よさそうな対処を実際に行ってみよう。
効果がなければ別のものを試し続けよう(ひとつの方法にこだわらないこと。特にアルコールや食事は依存症や過食のリスクが生じます)。
どういうストレスにどういう対応が効果があるかは場合による(そのためとにかく数が重要)。
ちなみにこのリストは眺めるだけでも効果がある場合がある。
応援団リストと同様、こちらのリストも育てて行こう。

自分助けを無意識任せにしない

自分で自分を助けることは、無意識に誰もが日々行っていることだ。
ただそれを無意識任せにしてしまうと、悪い結果をもたらす対応を繰り返してしまったり、自分自身を傷つけてしまったりすることがある。
今回作っていただいたリストを咄嗟に見る習慣ができれば、無意識の行いにブレーキをかけることにつながるかもしれない。

それでも残るネガティブな感情

この記事で紹介したのは、ストレス反応に対する対症療法だ。
ネガティブな感情を完全に消す、ということは難しく、人生をよろしく営むために軽減する手段として考えるといいだろう。
次回以降、これらの対症療法の使い方もよりうまくなるトレーニングや、もう少し深い生きづらさとの向き合い方をご紹介できたらいいと思っている。

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参考文献:「折れない心がメモ1枚でできる コーピングのやさしい教科書」伊藤絵美 

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