燦鳥ノムの定期動画更新休止発表に思う、企業広告塔Vtuberの着地点

サントリー公式バーチャルYouTuber、燦鳥ノム。

その活動の今後について、10/26の配信「【生放送】ノム友のみなさんへ大事なお知らせ」で以下の発表がありました。

〇YouTubeの定期的な動画更新は、年内でいったんお休み
〇来年以降もYouTubeの生放送などは予定あり
〇年内にオリジナルソング制作発表あり

デビューから3年と少しの間、彼女が定期的に続けてきた動画投稿、生放送などという役目については年内で終了し、今後は不定期な活動となる、という今回の発表が具体的に何を意味するのか?という事については、今後の活動を実際に見てみないことには何とも言えない部分が多いのですが。

少なくともこれまでは形式上「動画投稿者」「歌い手」「配信者」というジャンルで活動する「バーチャルYouTuber」だったの彼女の立ち位置が、今後は企業の宣伝活動時にだけ登場する「マスコットキャラクター」的立ち位置により近づいた、という事だけは間違いないのではないかな?と感じました。

なので今回の発表は「引退」とまでは言わないにしても、「バーチャルYouTuber」としては一旦、「半ば卒業」ととらえて良いような気がします。

「オリジナルソング製作」という好材料こそありましたが、彼女の歌声や味のあるトークが好きな一ファンとしては非常に寂しい限りです。



少し話はズレるのですが、先日ユーザーローカル社が発表したところによると、現在バーチャルYouTuber(通称Vtuber)は、ついにその数が16,000人を超えました。(https://www.userlocal.jp/press/20211019vs/

また、界隈ではチャンネル登録者数が10万人を超えるチャンネルも、300~400チャンネルと増加の一途を辿っており、またそのVtuberの過半数が、今や特定の事務所に所属をしてグループとして活動を行い、案件放送やライブ、投げ銭やグッズ販売等、タレント的な活動によって収益を上げるタイプのVtuberになりつつあります。

そこを考えると一企業がプロデュースしたVtuber単体がそのタレント群の中に混ざり、企業の宣伝を行いながら、他のタレントVtuberに負けない頻度とクオリティで視聴者の目に触れ続ける活動を行うというのは、物理的にも、費用的にも、もはや限界なのかもしれないなと思います。

そういう意味では、「燦鳥ノム」運営が今回下した「企業広告塔Vtuber」への「定期動画更新休止」という決断は、企業経営的な判断としては、時代に即した正解なのかもしれません。



しかしながら、彼女のこれまで行ってきたVtuber活動は、現在チャンネル登録者数16万人超と、他の企業広告塔系Vtuberの中でも群を抜いた、タレント的なVtuber達にも劣らない実績を残していたこともまた事実ではありますし、

サントリーという企業がデビュー時に意図したであろう「Vtuberという新しい文化から若年層への企業認知拡大を図る」という役目について、この3年間大きく貢献した存在であったこともまた事実です。

今後の「燦鳥ノム」の活動が、はたしてどういった形になるのかは私達にはまだわかりませんし、今回の「定期動画更新休止」によって「燦鳥ノム」は、一般的なVtuberにはいつか必ず訪れる「引退」を迎えることのない恒久的なキャラクターになった、と見ることも出来るのかもしれませんが。

叶う事ならその彼女の先行きはどうか「立ち絵だけが所々に宣伝物に登場する」「定期的に絵柄や『中の人』等の彼女を構成する要素が入れ替わる」ような従来の企業マスコットキャラクターが辿る道筋ではなく、これまで活動してきた「バーチャルYouTuber燦鳥ノム」という唯一無二の存在の個性が大事に扱われるものであって欲しい。

そう、思います。




<追記>
記事作成後も「燦鳥ノム」関連の話題をちょこちょこ追っていたら、いくつか興味深い記事を見つけたので貼っておきます。

また見つけたら追加するかもしれません。


KAI-YOU.net
「サントリー公式VTuber燦鳥ノム、定期更新を年内で休止」
https://kai-you.net/article/81830

「燦鳥ノム定期動画更新休止」に関するWebメディアの記事は色々ありましたが、その中でもこのKAI-YOU.netさんの記事はこれまでのオリジナルソング等についても触れていて、「燦鳥ノム」を詳しく知らない方にもわかりやすい良い記事でした。


サントリーグループ企業情報
10/15掲載「グループ会社再編のお知らせ」
https://www.suntory.co.jp/news/article/14010.html?fromid=top

これまで燦鳥ノムを運営していたと思われるグループ会社「サントリーコミュニケーションズ(株)」が2022年1月から「サントリーホールディングス(株)」に合併する、というプレスリリースです。

燦鳥ノムというプロジェクト活動が年末で一区切りつくのは、時期が同じであることから、どうもこの会社合併の影響が大きいのではと推察されます。

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