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アニメ「地獄楽」とキメラ作品

注意事項:この記事は「地獄楽」という作品のネタバレを含みます(アニメ版のみ)

「地獄楽」というアニメを見ました。

ジャンププラスで連載された、ちょっと大人向けな和風・中華風なサバイバルもの。

大まかなあらすじはこちら

江戸時代末期となる頃、かつて最強のとして畏れられた画眉丸は、死罪人として囚われていた。そんな中、打ち首執行人・山田浅ェ門佐切極楽浄土と噂される島から「不老不死の仙薬」を持ち帰れば無罪放免になり、誰からも二度と追われなくなると告げられる。画眉丸は「愛する妻にもう一度会うため」に、仙薬探しの道を選ぶ。無罪放免を求める他の死罪人達やそれに同行する山田一門と、一見美しいが恐ろしい化物の住む謎の島で仙薬を巡る戦いが行われる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%8D%84%E6%A5%BD


息つく暇もない怒涛の展開で、超面白かったです。

1クール最終話が放送されたばかりなので、細かな感想を書くと未視聴の方に障りがあるかなと思い、
なるべく核心には触れないよう、アニメを見ながらつらつらと思ったことをまとめています。

ただ、どうしても微妙なネタバレを含んでしまいますので、以降の閲覧は自己責任でお願いします……

主題歌

わたしがこのアニメを知ったのは、主題歌から。

「millennium parade」と椎名林檎のコラボした『W○RK』という曲がアニメOPになっています。

「King Gnu」の常田大希さんが主宰している「millennium parade」と椎名林檎さんのコラボで、かなり話題になっていた気が。
自由自在な「King Gnu」の楽曲は、超高級な古着っぽいガレージ感とオシャレさと上品さがあるんですが、「millennium parade」(というか常田さん個人?)は、上記の要素にプラスして「混沌」とか「アンダーグラウンド」な特色がありますよね。
マニア向けというのか。寺山修司っぽいキレ感というのか。天井桟敷みたいな。お分かりいただけるだろうか……。

そこへ椎名林檎さんのイメージを加えると「和風」「性」「生と死」「混沌」「アンダーグラウンド」……などのキーワードが思い浮かびます。アニメもそんな内容なのかな、と思っていました。
そしてそんな内容でした。

知名度の高いお二人の豪華なコラボで、アニメ自体もおそらくお金をかけて作っている。
クオリティが担保できる作品だから、お金をかけて作っている(稀に例外もありますが)。

きっと面白いんだろうなぁ、と思いつつリアルタイムでは追わず、二日前に11話を一気に見て、昨日配信された最終話を見ました。
変なとこ天邪鬼ですいません。でも、ほんと面白かったです。

敵のキメラ感

期待したのは、敵のキメラ感。

「一見美しいが恐ろしい化物」がはびこる島が舞台ということで、化物のキャラデザがすごく楽しみでした。原作を読んでいないので、OP映像に差し込まれるキモい映像にワクワクです。
百花繚乱の花々、溶けるように分裂する顔、池に沈む仏像、地獄かと思いきや楽しげに酒宴している美男美女……地獄と天国を取り合わせたじわじわくる違和感。

実際に人間の顔とハチが融合してる虫や、口から指が出てるムカデ、仏像と魚の合いの子、生殖器に吸盤がついてるっぽい海の怪物など、キモいofキモい敵が次々と現れ、目が奪われます。

主人公たちを襲いながら、仏像が儒教の教えを説いてるチグハグな感じも狂気じみてて良かったです。

ググったらそれぞれの敵に名前と役割がついてました。

島には神仏をかたどった像も放置(?)されているのですが、仏教と道教、その他さまざまな宗教が入り混じった不完全な像のようです。
神仏習合でもないらしい。というか、神道が出てこない。
和風仕立てなのに、八百万の神様もいないし鳥居すらないなと思いつつ見ていましたが、日本文化はそんなに関係ないことが後に判明します。

仲間の中にオタク野郎と杉田玄白ファンの解剖マニアがいて、五話くらいから島の考察や敵の生態調査が始まります。

ちなみにわたしのお気に入りの像は、第4話でオタク野郎が島の解説をしているシーン。
一瞬映る、大仏様から首がたくさん伸びている像が素敵です。
ビジュアルを出せないのが悔しいですが、ぜひ4話を見てみてください。苔むしてていい感じです。

世界観のキメラ感

江戸の町では「極楽浄土」と呼ばれる島。
3話まで、鍔迫り合いの殺陣があったり、首切り人の矜持とか、冷遇される女侍の苦しみと言った、いかにも日本的な葛藤が描かれています。

主役の二人は忍者の男の子と侍の女の子で、それもまた和風な定番キャラ。

ところが話が進むにつれて、世界観が中華風へスライド。
陰陽道や神仙思想、道や丹田、気功的なエネルギーワークが強さのポイントになって行き、ごく自然にジャンルが変わります。というよりも、和風と中華風が混ぜこぜになっていると表現した方が的確か。
メタ的に見ても和風と中華風のキメラな物語になっています。⁠

味方側は「極楽浄土」、敵側は島を「蓬莱」と呼んでおり、双方で認識が違う。
敵さん側の言葉を使うなら「極楽浄土」じゃなくて「桃源郷」という言い方が合っているのかもしれないなと思いました。

その他のキメラ作品

「地獄楽」を見終わったあと、こういったキメラ色のある作品は他にあるだろうかと考えました。

日本文学はキメラというより欠損

わたしはアニメや漫画よりも文学を読む方が多いので、どうしても小説作品を例に挙げてしまうのですが、

作品の和風なテイストやエログロな雰囲気、狂気に侵食されるキャラクターは江戸川乱歩・夢野久作・芥川龍之介などの作家を彷彿とさせます。
ただ彼らの作品内で何かが融合しているキャラクターはいただろうかと考えても、思い浮かびませんでした。

むしろグロテスクな作品は、身体が欠損していたり、五感を損失していることが多い印象です。

キメラで思い浮かぶのは「鵺」ですが、その他に日本文学で別々のものが入り混じる作品はあるだろうか。浅学が災いして全然思い浮かびません。なんかありますかね……?

デモナータ

神仏の融合と真逆を行きますが、「デモナータ(作:ダレン・シャン)」という作品で、いろいろな動物が融合した凶暴な悪魔が出てきます。
頭がワニで身体が犬の悪魔とか。
凶暴な動物のハイブリットアニマルみたいなのがたくさん出てきます。
魔術を使う主人公たちとキメラ悪魔のグロテスクなバトル、主要キャラが次々と死んでゆく容赦ない鬱展開は「地獄楽」とけっこう似ています。
このアニメが好きな人は「デモナータ」シリーズと相性が良いかもしれない。

作中のキメラ悪魔たちは、人間が持つ「想像力」や「創造性」が欠如しているため、実在の動物を混ぜ合わせて自らの肉体を作り上げている、という設定でした。

見えない都市

また他の記事でも取り上げた「見えない都市(作:イタロ・カルヴィーノ)」という幻想小説で、キメラっぽい人間たちが住む都市が紹介されています。

占星術師たちが神の意図である天球や星を読み解き、計算や選定をして構想された完璧な都市・ペリンツィア。
その都市に生まれた子供たちは頭が三つあったり足が六本あったりという異形の者ばかりでした。
現在、占星術師たちを悩ませているのは、自分たちの計算が間違っていたのか、あるいは神が定めた秩序こそ怪物まみれの街であったのか、ということです。

……みたいな話。
短編ですが、インパクト絶大の大好きなキメラ小説です。

ドラッグオンドラグーン3

あ、花と人間の融合で不死でいくと「ドラッグオンドラグーン3」の主人公がそんな感じでした。
片目に花が生えていて、花が意識を侵食してくる。
肉体を殺そうすると身体から花が生えて、その中から脱皮する形で再生するから死ねない、みたいな。

人智を超えた力って、神聖なるものと結びつけられることが多いですが、それをひっくり返して俗っぽいグロテスクさを帯びるとアツイですよね。
「地獄楽」にもそういう、聖と俗の反転が垣間見えて魅力的です。

その他、つらつらと考えたこと

陰陽五行

1クール終盤で個々人の持つ「道(気)」に相性があること、「相剋」と「相生」が出てきたので、今後のバトルの中心は木火土金水の陰陽五行的なアレになっていくのかなと思っています。

物語の中盤でピンク髪の幼女が「強い、弱い」というセリフを繰り返していますが、あれは「中庸を意識しろ」みたいなことかなーと思いました。
陰陽五行を用いる東洋占星術では、各属性の偏りは一般的に悪いとされていて、それぞれ五行(相剋と相生)の均衡が取れる時期に開運するといわれています。

丹田

第二チャクラとも呼ばれる丹田は人体のヘソらへんにあるエネルギーポイントで、中国武術は丹田を重視しています。
エネルギーを貯蓄することができるそうで、丹田を鍛えると精神が安定したり身体が強くなるらしい。
丹田を鍛える方法はたくさんあって、わたしはたまに「たんとう功」をやっています。
いつか本場のプロの元で覚えたい「たんとう功」。
フォームが上手くできると効果ある気がする。

作中だと仙人たちが修行の一環で性交してますが、伝承における仙人修行でもそんなものがありました。昔何かの本で読んだんだけど、なんだったかな。忘れちゃいました……。作中のあれは丹田ではなく陰陽バランスを整えるための修行なのかも知れませんが、丹田って大事ですよね。

罪人の首切りとは異なりますが、お侍さんが切腹するときにお腹を切るのは、「腹にイチモツ抱えていませんよ私は!」 との意思表示らしいというのも何かの本で読んだんだけど、忘れちゃいました……。

おわりに

知的好奇心くすぐるアニメっていいよね

すごいどうでもいいこと、本題から逸れまくった小話をつらつらと書きましたが、

「神仙思想ググってみよう」とか「山窩とか遠野物語に出てきたな」とか「丹田でも鍛えるか」とか色々な方向へ考えが飛んでいく良いアニメでした。知的好奇心をくすぐるアニメっていいよね。
オカルトが好きなので、信仰や霊的なものが土台になっていると、さらに知見が広がって楽しいです。

余談だけど少年漫画の修行って、宗教やスピリチュアルと紙一重な部分多いですよね。精神性を重視するというか。チャクラ練ったり、なんとかの呼吸法やったり、丹田鍛えたり。
エネルギーワークめっちゃやってるイメージがあります。

座頭市先生

全然キャラクターに触れませんでしたが、座頭市っぽい先生には二期も頑張ってほしいです。キャラがすぐ死んじゃう+山田浅ェ衛門〇〇が多すぎて、名前をあまり覚えていない……。
この作品、異様にキャラ立ってる人が多くて、花魁殺人犯や念仏殺人犯や首斬り人の先輩たちがほぼ即死でモブ扱いなの、勿体無い感じがしました。
アニメ化にあたって、原作を割愛している部分があるのだろうか。あの罪人たちはセリフすら与えられていませんでしたが、原作だとちょこっとは活躍しているのかな。
それか作者が細かい設定を考えるのが好きなのか。
仮に割愛しているにしても、キャラ立ちしまくってるやつが一瞬で死ぬの、バトルロワイヤル感があって良かったです。座頭市先生も油断なりませんね。女子供も容赦なく死ぬなら、あの山の子も油断ならぬ……。

原作漫画で内容を先取りするより、きれいな作画のキモい敵にワクワクしたいので、二期の放送を楽しみに待っています。

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