事業計画って何を書けばいいの?
おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。当noteでは、経営力強化につながる情報を経営者や支援機関に向けて発信しています。
経営者の皆さん、事業計画書にどんなことを書いてますか?
前回の記事にて、事業計画を作ることで業況が上向くことを説明しました。
しかし、特定のフォーマットが無いのがこの事業計画書。作る重要性が分かってもどんな内容のものを作れば良いのか難しいものです。
そこで今回は、事業計画に入れ込むべき項目をお伝えします。事業計画作成に役立てば幸いです。
事業計画書は、「経営理念」「現状」「ギャップ」の3項目から成り立ちます。
0.サマリー
サマリーとは、事業計画をまとめたものです。
毎日事業計画を読み通すのは中々大変な作業なので、まとめた内容を冒頭に作成します。毎日目にすべきはサマリーです。一目で内容を把握できるよう、A3一枚におさめるのが基本です。
Ⅰ.経営理念
経営理念のあるべき姿を示すものです。ミッション・ビジョン・バリューから構成されます。
(1)ミッション
不変のToDoのことです。
事業を興す上で何をすべきなのかという不変のやるべきことです。
(2)ビジョン
不変のToBeのことです。
事業を興す上で何を目指すべきなのかという不変の状態のことです。
(3)バリュー
ビジョンとミッションの関係性を保証する不変の価値観です。
ミッションを実行することでビジョンに到達できることを示す価値観のことです。
現状分析の大切はよく説かれますが、曖昧な概念である経営理念は軽視されがちです。しかし、経営理念ほど大切な項目は他にありません。経営理念が大切な理由は以下の通りです。
経営理念やビジョンの定義は、各人によって微妙にバラつきありますので、1つの考え方としてご参考にしてください。
Ⅱ.現状
(1)基本情報
企業の基本情報を簡単に記載します。企業名/代表者名/事業内容/沿革/従業員数 などです。
(2)外部環境
①マクロ環境分析
・PEST分析
マクロ環境分析の一種であるPEST分析とは、外部環境を「政治」「経済」「社会」「技術」の切り口で分析するフレームワークです。
自社の業界に直接関わることだけに関わらず包括的に調査すると良いでしょう。また、ネットにPEST情報についてまとめたものもありますので、情報を引っ張ってきて、それをたたき台にして厚くしていくのも良いでしょう。最近ならChatGPTで情報を引っ張ってくるのがより速いと思います。
②市場分析
・商圏分析
自社の商圏を設定します。総務省統計局のjSTAT MAPが使いやすいでしょう。
商圏が分かれば、商圏内の市場規模や年齢構成等が分かります。そこから市場機会を見出したり、競合他社を特定・分析できたりするメリットがあります。
・消費調査
業界内の消費動向を調査します。公的な調査を始め、大手民間企業が調査したものも数多くありますが、1番良いのは自社で商圏内の顧客に調査をかけることでしょう。
デプスインタビューやホームユーステスト、コンセプトテスト等があります。
・ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、競合を5つの力の切り口から分析する手法です。5つの力とは「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「業界内の競争」です。
どんな企業でもこの5つの力にさらされています。これらの競合の力を適切に分析することで、企業の基本方針が明確になります。
・ストアコンパリゾン(競合店比較)
具体的な競合他社を取り上げ、項目別に自社と比較していきます。市場調査のみならず、自社の強み・弱みを浮き彫りにすることができます。
(3)内部環境
自社内の環境について記載します。ビジネスはリソース×フロー(サプライチェーン)で成り立つため、この2項目に重点を置いて記載します。
①プロダクト
自社のプロダクト(製品・商品、サービス)について記載します。プロダクトの説明、特徴、価格等に触れると良いでしょう。
②サプライチェーン
自社のプロダクトのサプライチェーンについて記載します。サプライチェーンとは、プロダクトを供給するための一連の流れのことです。事業再生専門家の三枝匡氏は「商売の基本サイクル」と呼び、創る→作る→売るという3つのプロセスでシンプルに表しています。
③リソース(人・物・金)
自社のリソースについて記載します。リソースとは経営資源のことで、主に人・物・金から構成されます。
・人について
従業員数、スキルマップ(従業員のスキルを個人ごとにまとめたもの)等について記載します。
・物について
物件、プロダクト、設備等について記載します。
・金について
現在の財務内容について記載します。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書について直近3期分程度記載すると良いでしょう。財務内容を過去や業界指標(平均・中央値等)と比較分析します。
(4)SWOT分析
SWOT分析とは、強み(Strength)、弱み(Weekness)、機会(Opportunity)、脅威(Thread)の切り口で現状を分類する分析手法です。経営戦略を決める基となります。内部環境(強み、弱み)と外部環境(機会、脅威)を掛け合わせることで経営戦略として落とし込みます。
Ⅲ.ギャップ
(1)中長期目標
①KGI
KGI(Key Goal Indiccater)とは、重要目標達成指標のことです。中長期(3~5年後)に目指すべき指標を設定します。
後述するKPIの上位概念で、粒度の大きい目標を掲げるものです。計測できるものである必要があるので、実際に達成できたかどうかを具体的に検証できる形(数字等)で設定する必要があります。
(例:売上1億円達成)
②理想BS
理想BSとは、中長期的に実現すべき貸借対照表のことです。一般的な言葉ではありませんが、非常に重要な項目なので勝手に名付けました。
その重要さについては別途記事にする予定ですが、企業は決して「自己資本比率100%」を目指せば良い訳ではありません。貸借対照表が具体的にどんな科目・金額構成になるのが良いかKGIを起点に想い描いてみましょう。
③理想PL
理想PLとは、中長期的に実現すべき損益計算書のことです。こちらも同じく、決して「利益率100%」を目指せば良い訳ではありません。具体的にどんな構成の損益計算書になれば良いのかKGIを起点に想い描いていきましょう。
(2)基本方針
基本方針とは、理想と現実のギャップを埋める方策のことで、いわば戦う構えのことです。経営理念と現状を踏まえて設定します。経営戦略、経営戦術という2部構成です。
①経営戦略
経営戦略とは、理想と現実のギャップを埋める方向性のことです。どこで戦うかを示したものとも言えます。
経営戦略や事業戦略は、エーベルモデルによって決めるのが基本です。
エーベルモデルとは、事業ドメイン(≒事業戦略)を、「WHO(顧客層)」「WHAT(顧客機能)」「HOW(技術)」という三次元で決定するフレームワークです。
同モデルは、経営戦略ではなく事業戦略の文脈で語られるのが一般的ですが、経営戦略においても同様に活用することができます。
SWOT分析の外部環境と内部環境を組み合わせて経営戦略を決める「クロスSWOT」と呼ばれる方法もありますが、結局これもWHAT(外部環境の機会)×HOW(内部環境の強み)を組み合わせたものなので、エーベルモデルと同様の考え方なのです。
・WHO(誰に)
経営のターゲットを設定します。セグメンテーションを行った上でターゲティングを行うのが一般的です。
・WHAT(何を)
顧客に提供している価値を明確にします。プロダクトそのものではなく、そのプロダクトを消費することで得られる価値(消費者価値)に焦点を当てます。自社のプロダクトがどんな消費者価値を実現しているのか、改めて考えていきましょう。
・HOW(どのように)
HOWと聞くとプロダクトの具体的な提供手法をイメージするかと思いますが、そうではありません。ここでは、プロダクトを提供するための強みをHOWとして記載します。
経営戦略を実現するための具体的な戦術については、4Cとして後述します。
②経営戦術
経営戦術とは、理想と現実のギャップを埋める施策のことです。マーケティングミックスの4Pが有名ですが、4Pを消費者側から見た4Cをベースに戦術を明確化していくことをオススメします。マーケティングは最終的に消費者ニーズに依存するためです。
・Customer Value(顧客価値)
提供するプロダクトおよびその価値を明確化します。プロダクトそのものだけでなく、その見せ方についても考える必要があるでしょう。
・Cost(コスト)
提供するプロダクトを獲得し、消費するためにかかるコスト=価格を明確にします。
・Convenience(利便性)
提供するプロダクトにアクセスする方法を明確化します。BtoCのビジネスであれば、主に店舗販売、ネット販売があります。近年では店舗販売とネット販売と融合させた様々な販売チャネルが生まれています。
・Communication(コミュニケーション)
提供するプロダクトを認知する方法を明確化します。昔ながらのチラシや雑誌掲載、SNSを利用した口コミ等、様々な方法が考えられます。
(3)課題-ソリューション-KPI
◉課題-ソリューション-KPI
以上の項目を踏まえた重要課題を設定します。課題ごとにソリューションおよびKPIを設定します。複数の課題があれば課題ごとに設定していきます。
①課題:解決する必要のある問題
②ソリューション:課題の解決策
③KPI:重要業績評価指標。KGIを分解したもので、達成することでKGI達成につながるものでなければならない。
(4)中長期計画
①アクションプラン
ソリューションをプランに落とし込んだものです。いつ、誰が、何をするか記載する欄が必要となります。
②収益計画
ソリューションを実現していった上での損益計算書の推移を3~5年分想定します。貸借対照表やキャッシュフロー計算書も記載するとなお良いでしょう。
また、事業計画書はチェックシートとしての機能もあるため、振り返りとして実績とその要因を記載できる欄も設ける必要があります。
自力で作成するのが難しい場合
事業計画書を自力で作成するのは、難しく骨が折れるものです。そのため、経営革新等支援機関(以下、支援機関)と作成するのも一般的でしょう。
事業計画書は以下のような形で作成する選択肢があります。
支援機関に丸投げするケースも散見されますが、自分で作成していない計画書の実行にコミットするのは中々難しいでしょう。協力を依頼するとしても、あくまで②や③の形で共同作成するのがオススメです。
支援機関はネットで検索すれば出てきますし、私自身も支援機関として登録しています。
次回予告
次回は「事業計画書の正しい使い方」を投稿します。12月23日(土)投稿予定ですので、ぜひご覧下さい。
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