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Stable Diffusionデモ版で西洋美術の展覧会を開こう

みなさんこんにちは。AI、使ってますか。
ChatGPTを滅茶苦茶にするの、楽しいですよね!

破壊に目覚めたChatGPT

でも、破壊しすぎて飽きちゃったな……。
GPT-4.0のプロンプトをある程度好きに弄れるようになったので、今日はGPTを触るのをお休みしてました。
というわけでせっかくですし、今まで一回も触ったことがなかったStable Diffusionを触っていきます。無料かつスマホでも動く、デモ版を


《AIが描いた茶髪の少女》

はじめてAIイラストを生成する

Stable Diffusionは有志が公開しているモデルを使えば本当になんでもできますが、まずは素の状態のStable Diffusionの乗りこなしかたを覚えることで、いろいろ応用が利くのではないかと思いました。
Stable Diffusionの拡張性や応用性はめざましく、いまとなっては人間とまったく区別がつかないAIPhotoだったり、ものすごく美麗な二次元イラストが出てきたりしていますが、それらを素の状態のデモで作るのはやはり不可能です。
しかし美少女は作れます。
なぜならそこに美少女の西洋絵画が学習されているから。
というわけで、今回は西洋美術史のかるい復習をしつつ、簡単なスクリプトを組んでみたいと思います。
ちなみに、自力でも約二時間でここからここまで出来ます。


ネットに落ちていたものを参考に、
見よう見まねで打ち込んだ最初のスクリプト。現実にはあまりいない緑目の少女。
かわいいイラストだが、ちょっと派手かも。

数時間後……。

《AIが描いた黒髪の少女》
ね、簡単でしょ?

基本的な考え方

ポジティブスクリプトは以下が基本です。

thick outline, masterpiece, super fine artistic oil painting, 任意の画家, cinematic angle, young woman, 1 girl solo,The girl is in the center of the frame, focus on the girl, beautifully painted, beautiful eyes, detailed 任意の色 hair, delicate and intricate hair, delicate detailed face, blush stickers, 任意の色 skin, 任意の装飾, beautiful detailed 任意の服, very precise detailed, highres, ultra detailed

ネガティブプロンプトはそこら辺に落ちているもので大丈夫です。
これでデカい額縁に入った油彩の女性のバストアップの肖像画が出力できます。任意の画家は一人でも大丈夫ですが、複数人入れると絵にバリエーションが出ます。ルネサンスの画家やフェルメールはそもそも学習できる素材が限られていますからね……。

実際に好きな画家を適当に入れてみました。

《AIが描いた宝石のヴェールの少女》
《AIが描いた物憂げな少女》


《AIが描いた黄金の少女》

とりあえず私が一生かかっても描けなさそうな例としてヤン・ファン・エイクの超絶技巧の宝石を入れ、そこに合わせる形で静かな画風の画家を入れています。二枚目はあきらかにロヒール・ファン・デル・ウェイデンの影響が出ていますね。

せっかくなので架空の絵画の架空の展覧会を開いてみましょう。
絵柄の変遷が非常にわかりやすい例として、ルネサンス、バロック、ロココ、印象派を挙げていきます。すべて少女・女性の肖像画です。

ルネサンス


《AIが描いたルネサンスの少女》


《AIが描いたルネサンスの少女・2》


《AIが描いたルネサンスの少女・3》

ボッティチェッリからレオナルド、デューラー、そしてティツィアーノまでごった煮です。正直ルネサンス、といっても画風が全員全く違うのですが、実際残っている作品のなかで女性が描かれている比率的にラファエロの影響が強いように思います。
一応同時代の作家でまとめているので、服飾はきちんと当時のものが反映されていますね。実際に絵を描くときに参考にできるかもしれません。

バロック


《AIが描いたバロックの少女・1》


《AIが描いたバロックの少女・2》


《AIが描いたバロックの少女・3》


良い感じですね。ただ、バロックといっても幅が広すぎるので、1と3枚目はフェルメール、ベラスケス、ムリーリョあたりの甘やかかつよりリアルな表現の画家、2枚目はカラヴァッジョ、カラッチ、レンブラント、ラトゥールあたりの光と闇が強烈な画家を入れています。2枚目は言うほど明暗が強烈にでているわけではありませんが、言われてみればそうかも、といった感じです。注目すべきは服の襞の表現の美しさでしょう。


ロココ



《AIが描いたロココの少女・1》


《AIが描いたロココの少女・2》


《AIが描いたロココの少女・3》


ブーシェ、フラゴナールといった巨匠の他に、ロココの文脈に入れられるかは諸説ありですが色彩感覚から見てティエポロ、そしてルブランを初めとする女性画家を多めに入れました。また、「貴族の子女」という指定を入れています。
読書をしている様子や寛いでいる様子といった、フランス宮廷で過ごす女性たちの開放的かつ優雅なポージングが出力されて、非常に良いです。特に三枚目ですが、服の襞のような場所は緻密に、雲は粗い筆致で描き分けており、全体として軽やかな印象を受けます。色彩も一気に明るくなりました。
画家以外はほぼプロンプトでもここまで違う構図が出てくるのは正直びっくりです。

印象派


《AIが描いた印象派の少女・1》


《AIが描いた印象派の少女・2》


《AIが描いた印象派の少女・3》

なんとなくわかります。ルノワールとモネとドガが喧嘩してます。
他にもベルト・モリゾ、マネ、メアリー・カサット、カイユボットあたりを入れたのですが、やはり少女をたくさん描いた画家が反映されがちなようですね。9割白いチュチュ状のドレスだったのですが、多分ドガのバレリーナだと思います。
印象派といえばチューブ絵の具の発明により屋外で絵を描くことが容易になり、陽光のやわらかさを取り入れた表現が特徴ですので、ここでは室内ではなく屋外、森を背景に指定しています。

静物画も描かせてみよう

ここまででさまざまな美少女を簡単に出力させられることがわかりましたが、静物画も試してみましょう。ヴァニタスです。


《AIヴァニタス》

悪くないですね。構図の巧拙はさておき、布やグラスの表現、(崩れていない)林檎の質感はかなりわかります。
本当は髑髏を入れたかったのですが、うまく学習されていないようでどうしても良い感じに出力できませんでした。画風を指定しているのは主な静物画家たちと、ボデゴンで有名なスペインの画家、あとは静物画の原点にして頂点でもあるカラヴァッジョです。

さて、ここからは……。一応、時代やグループ毎の画風が明白にわかる印象派までは、ある程度良い感じの表現が出てきました。ですがゴッホ以降の抽象に向かう絵画は正直「見よう見まね」といった感じで、画家それぞれの画風の面白さや美しさが再現できなかったため、省略します。

最終的に、自分好みの画家をどんどん詰め込んでいくと、無限美少女生成スクリプトを作ることが出来ます。


《AIが描いた腕がごつい金髪の少女》


《AIが描いたみどりのひとみの少女》


《AIが描いた髪を靡かせた少女》
《AIが描いた海辺の少女》


《AIが描いたふたりの少女》

おあそび

最後にパロディです。贋作だと認識されるのと困るので、真作の枚数がほぼ確定している作家と、あとあきらかにパロディだとわかる表現だけ載せました。

《AIが描いた、逆に、踊る女性、フェルメール風》


《AIが描いた、カラヴァッジェスキなラーメンを食べる女性》
《AIが描いたセザンヌのりんご》

これらのパロディは案外融通が利かないというか、セザンヌのiPhoneのように画家があきらかに一度も描いたことがないモチーフはなかなか難しいというか、出してくれません。ガチャを回しましょう。
とはいえ、絵が本当に一切描けない自分でもこういうおあそびができるのは楽しいですね。


《AIが描いたちょっと怪しい聖母子と洗礼者ヨハネ》

おわりに



《AIが描いた踊る少女》

AI絵は学習データをどこから持ってくるかなどでまだまだ論争がありますが、このように著作権が切れた画家で遊ぶ分にはさすがに問題ないと思います。週末のいい頭の体操になりました。
ちなみに美術史はBing AIが非常に強く、展覧会で見て、どうしても論文で引用したいけれど図録がない……ネットに画像が落ちてない……。作品リストの作家と作品名だけが頼り……といった泣けるほど画像がない作品を、Google画像検索がクロールしていないところから引っ張って、実際に内覧会に参加した信頼できるアートメディアの写真などを参照することが可能です。引用するのは難しいですが、私はそれを使って、どうしてももう一度見たかったとある江戸期の作品の筆致などを、他の作品と突き合わせて検討することができました。図録売ってください……

これからの時代、美術史の研究もAI抜きにはやっていけないと思います。
というわけでみなさんもAIを壊して有意義に活用して、最近話題のDX人材とやらになっていきましょう。


かなり頭の悪い回答をするChatGPT

GPT-3.5、君は休んで。


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