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たらい舟のロマン~夢の中の佐渡島

前回の記事で柏崎について書いて、或いは佐渡金山世界文化遺産登録のニュースに触れるうちに、子供時代をいろいろと思い出した。


柏崎の小学生の修学旅行といえば佐渡島だ。柏崎の子供はなぜかここで必ずたらい舟に乗せられる。



そして柏崎と佐渡の繋がりで全国的に有名なのは「佐渡情話」で知られる「藤吉とお弁」の民話だろう。

佐渡に滞在中現地の娘お弁と恋仲になった柏崎の藤吉。しかし柏崎に妻子を残している藤吉は一人地元に帰ってしまう。藤吉を忘れられないお弁は恋慕のあまり60kmの距離をたらい舟で毎晩訪れ、藤吉と逢瀬を重ねる。

しかしお弁のことが恐ろしくなった藤吉は番神岬の灯台の明かりを消し、暗闇で難破したお弁は数日後に青海川に打ち上げられてしまう……。

藤吉とお弁

これがよく知られているあらすじなのだが、別バージョンでは番神堂の僧侶に拾われた後その僧侶に惚れ込んでしまい、今度は板切れに乗って泳いで柏崎へ通い詰めるエピソードも追加されており(参照:柏崎市立図書館「柏崎の水」)パリ五輪のトライアスロン選手も真っ青の神がかった運動能力を発揮している。

幼く純粋だった私はこの民話をサンタさん同様完全に真に受けていたため、「柏崎から佐渡って目視だと遠いけど案外近いんだなあ」と思っていた。

柏崎を訪れた与謝野晶子もこの民話に感銘を受けたようで、
「たらい舟 荒波もこゆ うたがはず 番神堂の灯かげ頼めば」
という歌を残している。お弁の恋情が晶子自身の生とともに痛いほど伝わってくるたいへん情熱的な作品だ。

……ちなみに佐渡-柏崎のたらい舟の横断は実際に成功者がおり、物理的に不可能ではないことが分かっている。
体力と腕力に自信がある皆さんは試してみてはいかがだろうか。