原稿の作り方

あるドラマを観ていて、全体がうまい構成だなーと思いながら、原稿の作り方をふと頭に浮かべてみました。

雑誌編集者の業務は媒体にもよりますが、少なくとも私は、企画、構成、取材、執筆、校正に加え、営業、流通まで全てをやっていた時期がありました。今となっては幸せなことだったんですが、まあ、これ全てにそれぞれプロがいらっしゃる業務なので、100点満点で各々が及第点を取れていなかったと思います。

それでも、編集者はなんでも屋。全てを編集できるから編集者だと解釈をしていたので、大変でしたが、二度と戻りたくないですが、いい経験をさせていただいたと思っています。

実は季刊誌の編集長を務めながら、他社の雑誌のページ受けをしたり、他社の雑誌の雇われ編集長もしていました。労働時間は・・・今となっては、自慢にもなりませんが、いつ休んでいたのか?と思うほどでした。必死さを顔に出さないよう出さないようにして必死で働きました。

印象的だったのはある月刊の旅行誌のインタビューページに携わった時です。

アーティストの新作リリースに合わせたプロモーションインタビューなんですが、なんとかさりげなく旅に絡ませていくような原稿を作るのが最大のポイントでした。

もちろん、アーティストが新作で旅をテーマにすることなんて稀で(というか一度もなかったかな)、基本的には質問は毎回それほど変わらないモノでした。でも、アルバムのコンセプトや歌の聴きどころや伝えたいことを質問していくと、アーティストは自分が表現したいことをどんどん話してくれます。取材時は、とにかく多くを聞き出すことを大事にしていました。例えば、前の質問と後の質問の答えが繋がっていようがいまいが、とにかく時間内で多くの情報をその人の言葉でもらいたいと思っていました。

私の場合、多くの言葉の中で、ひとつだけ「あっ!これだ!これが聞けたから、この取材は成功だ」と思えるフレーズが必ず出てきました。それを耳と頭が聞き分けた瞬間、顔に出るくらい安堵感が体を包み、いつインタビュー終了時間が来ても問題ないと思っていました。

さて、本題である原稿です。

まずは、録音をテープ起こしします。何度も何度も聞いて聞いて文字化します。中には「あっ!これだ!」と思った言葉も出てきます。全てのテープ起こしが終了したら、「これだ!」フレーズを軸にして原稿を構成していきます。

このフレーズがいわば、文章のコンセプトと言い換えてもいいです。

質問の順番を度外視して、「これだ!」フレーズにつなげていく文章を構成していくんですね。「これだ!」フレーズは起承転結でいうと結になるように。

「これだ!」フレーズがあれば、面白いように構成ができるので、やっぱり取材時にそれを聞き逃さないことが大事です。

そして、旅雑誌のために、結の後に旅との繋ぎこみをして、文章を締めていました。実は「旅」とは、いろんなモノに置き換えることができると発見したんです。その時は書きながら発見したので、最初からこうしようというイメージがあったわけではありません。

でも、実際は「旅」に限らず、あらゆるもが、いろんなモノに置き換えられると考えています。

最近編集したばかりの雑誌は特定の日本のエリアを紹介するモノでした。この時は、あるエリア×映画(原作は小説)を置き換える=リンクさせることができました(これこそまさに「編集」という業務だとも思いました)。改めて、原稿ってこう書くんだったというのを久しぶりに自分の中で確かめられた瞬間でした。

そして、もう一つ。「原稿には必ず執筆者(自分)の想いが込められる」ということを大事にしています。もしかしたら伝わらないかもしれません。でも、読み手に行間にある想いを読み取ってほしいと考えて書いています。そこにも「これだ!」フレーズのコンセプトが秘められています。つまり、文章の中のそれぞれが、もっと言えばデザインを含めたページ全体が、このコンセプトに立ち返ることができるかを考えて書いているということです。

これらに気付くまで、私の場合は、編集の仕事を始めてから10年が経過していたと思います。

多くの先輩から、言葉では教えられても、本質は理解できていなかったんですね。当初は原稿を書くのがとても嫌でした。ライターさんてすげーと思っていました。書き方が見えてからというもの、産みの苦しみは毎回ありますが、取材&執筆はとても面白い!と思っています。そして編集全体はもっと面白い!

反響が少しでもあれば、具体的な原稿作成法を具体例とともにお伝えします。




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