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『思考の整理学』という子育て本

化け物のような本だ。
感想文なんて書いたら大変な事になる。
少なくとも私に1冊を通した感想文を書く能力は無い。

冒頭の20ページを読んだだけで色んなことを考えてしまって進まない。

ここまでの感想なら書けるだろうか?
感想というより書き留めておきたいことのメモになることだと思う。

今を生きる大人ももちろんだが、むしろ子供を育てている親たちが読んで教育したり、読める年の子供におすすめするべき本なのではないだろうか?


わたしがこの本に興味を持ったのはとある書店で平積みされていたのを見た時だ。
POPの詳細は失念したが、だいたい「全大学生が読むべき本」とか「東大生のバイブル」とか、そんな内容の言葉と共に二冊並んでいた内の一冊だ。


著者は外山滋比古。
ソデにある著者近影のプロフィールを見ると、英文学者、文学博士、評論家、エッセイストとある。

わたしは最初、冒頭20ページと言ったが、それは正確ではない。
本に振られているページ番号は目次なども含むので実際は8ページから本文が始まる。

そして9ページ(実質1ページ)でもうズガンと頭を殴られたような衝撃を受けたのである。

ーーーこれは、間違いなく良書だ…。

わたしなどがそんなことを判断するのもおこがましいのだが、読書家が言うところの「数行読めば良書かどうかわかる」という感覚を初めて体感した。

これはわたしの読書のアンテナの感度が上がったのではなく、この書籍が持つことばの力が圧倒的でわたしの小さなアンテナにも存在をアピールしてくれたということに過ぎない。

本書の最初「グライダー」という章の冒頭で著者は人間の思考タイプをグライダー能力と飛行機能力のグラデーションとして表現している。

曰く、受動的に知識を得るのがグライダーで、発明をしたり、発見したりするのが飛行機。
飛行機能力で創造し、自力飛行する。
グライダー能力で追従する。

ーーーこんなに的確に言葉を使える人が世の中にいるんだ…。

この時点でわたしは例え話のうまさに魅了された。
最近はクリエイティブか否かで表現されがちだが、その表現には当てはまらない現象があると思っていた。
それをうまく表現できないでいたのだが「グライダー」と「飛行機」というありふれた一般名詞でここまで的確に表現されて目からうろこが落ちる思いだった。

飛行機とグライダーの用語説明の後は本書の趣旨説明だ。

自力飛行ができないグライダーになり切るのはいただけないが、初めから指導もなく飛ぶ人は危なくて仕方がない。
エンジンを搭載したグライダーになりたいね、というような本である、というここまでで大体6ページ。

全く無駄がないし、ものすごく引き込まれる。

「グライダー」の章は以下の文章で結ばれる。

グライダー専業では安心していられないのは、コンピュータという飛び抜けて優秀なグライダー能力のもち主があらわれたからである。自分で翔べない人間はコンピュータに仕事をうばわれる。

外山滋比古『新版 思考の整理学』ちくま文庫p14

この本の初版は1983年。
ファミコン発売と同年なので家庭向けコンピュータの足音が聞こえていたのだろうか?
だとしても、あまりにも的確に未来を予言しているように見える。

わたしが若者や、子供の親こそが読むべきだと考えたのは、年が若ければ若いほどその子供の生きる社会情勢に期待を持てないと思っているからである。
少子化が進むということは税収が減りその分だけ日本の財政が苦しくなる
=増税待ったなしだ。
つまり手元に残る給料が減って生活が大変になる。

好景気を経験したことがないわたしは悲観的になってしまうが、実際はもっと明るい未来が来るのかもしれない。

それでも科学は発展するので未来であればあるほど、専業グライダー人間に仕事はない。

グライダーに近ければ近いほど待遇の良い仕事に就くのは難しいのではないかと考えるのは自然だと思う。

#思考の整理学
#10代の自分へ


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