微生物の視点で見ても複雑な「ヨーグルト」の世界
日本人にとって非常に馴染み深い発酵食品といえば「ヨーグルト」。
日本では様々な種類のヨーグルトが販売されています。が、実際問題何がどう違うのか、わからないまま食べている方も多いのでは。
微生物が専門の私も、実はヨーグルトのことはあまり知らなかったので、この機会に〈そもそもヨーグルトとは何なのか〉というところから、調べてみることにしました。
そもそもヨーグルトとは?
独立行政法人農畜産業振興機構のホームページによりますと、
と記載されています。
また、かつてFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)は、ヨーグルトについて
と定義していたそうです。
微生物の名前(学名)が出てきたので、馴染みのない方にとっては、なんのこっちゃと言う感じですね。
また現在は、
とのことです。
非常にざっくり言うと、2種類の乳酸菌が活躍しているのがヨーグルト、なんです。
2種類の乳酸菌の「共生」
2種類の乳酸菌の関係について、明治のホームページに詳しい説明が掲載されています。
ヨーグルトの中では2種類の乳酸菌が働いていて、それぞれ物質のやりとりをしながら助け合っている、と言うことなんですね。
ブ:「ギ酸をつくるよ〜」
サ:「ギ酸うめー、代わりにペプチドあげるよ〜」
ブ:「ペプチドうめ〜」
続く...
と言う世界でしょうか。なんと言う優しい世界。これを「共生関係」と言っていてます。
ヨーグルトの乳酸菌の共生関係は、両者ともにメリットがある例です。これが「相利共生」です。
しかし世の中「相利共生」ばかりではなく、一方だけに利益が出る「片利共生」、一方だけに害が出る「片害共生」、一方には利益が、もう一方には害が出る「寄生」があります。
そしてこの関係は、状況によってダイナミックに変わりうる、と言うことが知られています。共生と言うのは「ズッ友」と言うよりは、一歩間違えば相手を滅ぼしかねない、非常に緊張感を持った関係です。
それじゃあ「ビフィズス菌」って何?
ビフィズス菌は「ビフィドバクテリウム属」に分類されます。先にあげた乳酸菌は「ラクトバチルス属」「ストレプトコッカス属」になりますので、ビフィズス菌とは分類群が違います。
とは言え、ビフィズス菌は乳酸(に加えて酢酸)、乳酸菌は乳酸をつくることができるので、全くもって性質が異なる微生物と言うわけでもありません。
ビフィズス菌といえば、森永乳業の「ビヒダス」かなと思います。ビヒダスはビフィズス菌だけで発酵しているわけではなくて、製造には乳酸菌も使用していることが明記されています。
通常のヨーグルトに加えて、色々な効果が知られているビフィズス菌をプラスしていると言う捉え方を私はしています。
それじゃあ「ガセリ菌」って何?
雪印メグミルクやカルピスの製品に登場する「ガセリ菌」とは一体何なんでしょうか。
ガセリ菌とは乳酸菌「ラクトバチルス・ガセリ」のことです。先に挙げた2種類の乳酸菌「ラクトバチルス・ブルガリス」の親戚だと思ってください。つまりガセリ菌は乳酸菌なんですね。
結局私が選ぶヨーグルトは!?
と、言うことでヨーグルトに関わる微生物についてお話しして来たわけですが、最後に私が選ぶヨーグルトを。
私が選ぶのは、グリコのBifiXです。その理由は、「綾瀬はるか腸」になりたいから、ではありません。
寒天が配合されることでプルッと固めの食感になっているから。「なめらか」「とろける」が主流の昨今にあっては異色の存在です。
結局は、おいしいと思うヨーグルトを選んでいます。と言う身も蓋もないお話しでした。
ハードタイプのヨーグルトと言えば、かつてエルビーが発売していた「エルピアヨーグルト」というものがありました。日本食糧新聞の記事を見る限りは、ゼラチンが配合されていたようですね。
この「エルピアヨーグルト」は、BifiXヨーグルトとは比べ物にならないくらいカチコチのヨーグルトでした。インターネットを検索しても画像ひとつ出てこないところを見ると、一時期しか販売されていなかった、まさしく幻の商品だったようですね。
明治の「ブルガリアヨーグルト」や森永の「ビヒダス」と比べると、若干地味な印象もあるグリコ「BifiXヨーグルト」。この世から忘れられないように、私は食べて応援したいと思います。
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