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レオナ・ペタス集中特集 レオナ物語 其の一(プロローグ)

LARA column series.1
レオナ物語~“泣き虫”加藤玲於奈が “石の拳”レオナ・ペタスに至るまで~ 其の一(プロローグ)

文責:大島健太

いつも泣いていた。

それがレオナ・ペタスこと加藤玲於奈の第一印象だった。レオナの当時の所属先「バンゲリングベイ・スピリット」のマネージャーを担当していた私の所感である。

2019年9月16日、東京・後楽園ホール。“格闘技の聖地”と呼ばれる晴れの場でレオナは、ずっと求めてやまなかったKRUSHスーパーフェザー級王者となった。7年前のプロデビューからこだわり主戦場として定めたKrush(K-1 KRUSH FIGHT)で追い続けたチャンピオンベルト。

その間に世界最強王者として一世を風靡した“スピードマスター”山本真弘、後のK-1世界王者、大雅に勝利。レジェンドファイター“爆腕”大月晴明とダウンの応酬を繰り広げる名勝負を闘い、元RISE王者であり「K-1以外の最高峰タイトル」といって過言のないBLADEトーナメントを制した超実力者、小宮山工介をノックアウト。

有象無象のタイトルと凡庸な王者が点在する日本キックボクシング界において、関係者やマニアが「真の日本最強」と目して幾年月を経て、やっと巻いたベルト。戦士としての基礎を叩き上げた名付け親、“青い目のサムライ”ニコラス・ぺタスが満面の笑みで、レオナが「世界最高のトレーナー」と断言する師、半澤英俊がはにかみ、常に最短距離からあらゆるサポートを尽くす弟、虎於奈が号泣しながら称える。

メインイベンターとして渡されたマイクで最愛の母、美香を呼び寄せリング上に招き、集合写真を撮った。ニット帽を目深にかぶりマスクをした母親は、長男・レオナから重量のあるベルトを渡されると、肩にかけることもできずによろめいた。一部で公表されていることだが、彼女はステージ4のガンで闘病中の身。万難を無理に排しての観戦だった(※1)。


そんなドラマティックの一言で表現するには余りある現実を知る数百人に及ぶ応援団とファンは、長々とスタンディングオベーションを贈りながら、その多くが涙していた。中には、嗚咽でまともに立っていられなくなる者まで見受けられる。

それなのにレオナが泣いていない。

私の驚きはそこだった。

若き天才児たる王者、西京佑馬が相手でもレオナが勝つことは確信していたし、試合に熱くなり過ぎ暴走モードでセルフコントロールが効かなくなる弱点も鳴りを潜め、想像以上にプロフェッショナルファイターとして成長していることは喜ばしかった。

しかし、それらは想定内。それにしてもまさか、これ程の場面であの“泣き虫”が泣かないなんてあり得るだろうか?

師匠に、仲間に、母親らに感謝の言葉を繰り返しながら絶やさず笑顔を輝かせ、マスコミが次の展開を訪ねると鋭い眼光と共に最大最強のライバルを思いやった。アマチュア時代、1勝1敗の星を分けあった“ナチュラルボーンクラッシャー”武尊を。そんな闘いの道最中にある今、涙など要らないということか。

アマで試合を始めたばかりの頃は、負けては泣いて、勝ったとしても思った通りに動けなかったことが悔しくて泣いて、プロになってからもそれは止むことがなかった。試合後、シャワーも浴びずに観客席に駆け込んで、その試合の勝敗がどうあれ、意見を求めた。「どうしたらもっと強くなれますか?」と何度訊かれたことだろう。そして、目を逸らさずこちらの言葉に「押忍、オス(※2)」と頷きながら顔をクシャクシャにしてまた泣きはじめる。それが毎度だったのに。

レオナが新チャンピオンとして求められた試合直後のバックステージ会見。
「7年間ずっとこのベルトを目標にやってきて、レオナ・ペタスの第一章に終止符を打つことができたと思います。第二章はこのベルトを守りつつ、このベルトと一緒に上のベルトを獲りにいこうと思います」と語った。

今冬の初頭、時を同じくして、レオナの学び舎、都内で有数の素朴なジム(※3)、バンゲリングベイ江古田が大きく変わる。半澤が会長となる最新鋭のメソッドと瀟洒な空間でキックボクシングエクササイズを提供するフィットネスジム「LARA TOKYO」が新宿区・高田馬場駅ほど近い神田川の畔にオープンするが、江古田ジムもグループに加わり、同じビルで階を移してリニューアルする。なにより、レオナはLARAの主要トレーナーに就き、キックボクサーに次いで「人を鍛えるサポート」をセカンドワークに定める。

堂々たる本格派王者と新ジム誕生で突入するレオナ第二章がいよいよ動き出す。

このシリーズコラムでは、そんな “泣き虫”玲於奈が “石の拳”レオナに成長するこれまでを、周辺のあらゆる仲間や家族の証言と本人の言を含めて大いに振り返ってもらい定期的に記していく。目の離せない現在進行形ドラマにご注目あれ!

2019年11月27日 其の一 了

※1 加藤美香の病状については、本人の承諾を得て掲載。

※2 レオナは、空手家であるニコラス・ぺタスの影響でキックボクシングでは使わない「押忍(おす)」を返事として常用する。

※3 10年以上の年季の入ったバンゲリングベイ江古田は、一般フィットネスのキックボクシングエクササイズとは対極にある「プロ育成・虎の穴」であり、中島弘貴など多くの一流選手を育てているが、素朴というより実はボロ。近日移転新装決定済みだからこその表現。
レオナ・ペタスのプロフィール
リングネーム:レオナ・ペタス
英語名:Leona Pettas
本名:加藤 玲於奈(かとう れおな)
所属:THE SPIRIT GYM TEAM TOP ZEROS/LARA TOKYO
(短称:LARA-TSG TEAM TOP ZEROS)
生年月日:1992年4月29日
出身地:埼玉県入間市
身長:175cm
血液型:A
戦型:オーソドックス・ファイタータイプ
得意技:右ストレート
プロデビュー年月日:2012年6月17日
戦績:31戦25勝(10KO)5敗1分
プロステータス:第9代K-1 KRUSH FIGHTスーパーフェザー級王者、
2016年英雄伝説アジア60kg級トーナメント優勝
アマステータス:第210回新空手道東京大会K-2トーナメント軽量級優勝(2011年)、第5回J-NETWORKアマチュア全日本選手権Aリーグフェザー級優勝(2011年)
キャッチコピー:石の拳
Facebook:https://www.facebook.com/reona.kato.77
Twitter:https://twitter.com/rerereoooo
Instagram:https://www.instagram.com/ktron04/
▶︎キックボクシング&フィットネス  LARA TOKYO
レオナ・ペタス、そして弟の加藤 虎於奈がインストラクターとして勤めています!
http://laratokyo.com/
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▶︎レオナ・ペタス 次戦大会情報
K-1 KRUSH FIGHTスーパー・フェザー級タイトルマッチ
・レオナ・ペタス vs 山本 直樹
K-1 KRUSH FIGHTウェルター級
・加藤 虎於奈 vs 牧平 圭太
https://www.k-1.co.jp/krush/schedule/16494/

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