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竜とそばかすの姫

歳を重ねるに連れて自覚している本当の自分と
実際の自分は乖離しているように感じるし、
いくらありのままの自分みたいな
自己啓発を目にしても、
そう簡単に変わることができない。
友達や周りの人達にもっと自信持ってとか
自己肯定感低すぎるだなんて言われても
新しい自分になれる訳でもない。
まず私自身がそういう私の価値みたいなものを
自覚できないからだ。

仕事でボロボロの1万円札を両替した時、
1万円札なのに、なんでこんなボロボロになってしまったんだろう。もっと大切に扱われるべきなのに。
そう思った時、初めて自分が言われてきたことを
主観的に理解することができた気がした。

誰かの言動を疑問に思ったり、理解できないでいた時、
その人の気持ちのようなものを
主観的に理解できた時の衝撃は大きいものだと思う。
理解しようとしてできたのではなく、
何かが一気に繋がるような、
これってそういうことかと思えた時
初めて解ることができる。

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鈴の母親は見知らぬ女の子を濁流の中から
救い出すことで命を落としてしまう。
行かないでと泣く鈴を振り解いて行ってしまった。
なんで私より見知らぬその子を選んだの。
どうして、私は大事じゃなかったの。
母親を失った悲しみとそんな母親に対する強い疑問を
抱いたまま、心を閉ざして歌えなくなってしまった鈴。

Uの世界でBelleとしてなら歌うことができ、
一躍有名になった時、
ライブを邪魔される形で出会う竜。
竜の背中のあざや圧倒的な強さの中に
見透かされることを恐る姿が気がかりになって
接近していく。

物語のクライマックス。
Belleが自らアンベイルし、鈴の姿で歌うシーン。
鈴がBelleとしてやっと変わることができた世界を
捨てる覚悟で歌う決意をする。
そして歌っている中で鈴は気づく、
突き動かすこの気持ち、今自分がしていることは
あの時の母親と同じだと。
"私が救わなきゃ"という強い思い。
誰かに諭される訳でもなく、
自分が同じ思いになることで理解できた時、
鈴の根底にあった大好きな母親への不信感が
一気に消え去り、鈴とBelleは一体化したのだと思う。

___________

映画の中で様々な社会問題を取り上げつつも
鈴の成長が大きなテーマに感じた。
潜在能力的なものをアバターに反映するUの世界。
そんな機能は現代にまだないけれど。

自分の魅力を過小にも過大にも評価せず、
等身大で自覚することができたら
きっと今と違う選択をして、違う生き方をするはず。
多くの人が抱えている
在りたい自分となれない自分。
自覚すらしていない自分がいるかもしれない。

鈴の母親の例ほど顕著ではないけれど、
色々な理由や経験を固定概念のようにして
塞ぎ込んで、なれるわけがないと思い込む。
映画ほど大きなアクションはなかなか起こらないし、
根底をひっくり返す気づきなんて相当無いけど、
通じるところはたくさんあるように感じた。

映画全体の感想というより、
私の印象に残った部分のみになってしまったけれど、
漠然とした個人対人の悩みの糸口になる部分が多く、
観てよかったと思った。

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