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遊牧民と農耕民の仕事観

モンゴル人の知り合いが仕事観について話してくれた。
はじめに言っておくと、彼はIT系スタートアップ企業を創業しているようなモンゴル人のなかでも相当エリートかつリベラルな考え方の持ち主と思われる。
彼の言葉をそのまま丸ごと「モンゴル人の考え方」として受け取るのはよろしくないと思うが、ひとつの捉え方として非常に興味深かったので共有したい。

彼曰く、モンゴル人には遊牧民の血が流れている。
だからモンゴル人にとって転職は当たり前のことなのだとか。

それは遊牧者がサラリーマンになる(=転職する)という話ではなく、生まれてから一度も遊牧生活をしたことがない人でも、遊牧民の価値観のもとに生きているから「転職が当たり前」だと思えるということだった。

ご存知の通り、遊牧民とその家畜は草を求めて大草原を移動する。

家畜の食料がなくなれば躊躇することなく移動する必要がある。
厳しい自然のもとで、停滞は命取りだ。

要するに、モンゴル人はより良い環境を求めて移動する生活を続けてきたから、それは就職においても同じということ。

遊牧するモンゴル人にとっての草原は、会社勤めのモンゴル人にとっての企業というわけ。

そういわれると確かに、日本人の仕事観にも同じことが言えるかもしれない。

農耕民である私たち日本人は、土地に根付いた生活を営んできた。

自然と向き合って生きてきたという点では日本もモンゴルも変わらない。しかし日本は狭く山の多い島国で、ある意味「逃げ場」がない。
私たちは環境に応じて移動するのではなく、一拠点で様々な環境に対して耐え、工夫を凝らしてきたのだ。

こう考えると日本で終身雇用が当たり前とされてきたことにも納得がいく。

なぜなら、農耕する私たちにとって、企業は田んぼなのだから。
家族代々で耕す田んぼを離れられないように、一度務めた企業からはそう簡単に移動できないのが日本人の性なのかもしれない。

じゃあ漁師はどうなんだとか、最近の日本人は転職に抵抗がないとか色々な意見があると思う。

そもそもモンゴル人がみんな彼と同じ意見だとは限らないから、モンゴルで英語を話せる人に出会えたらぜひ考えを聞いてみたい。

とにかく言えることは、モンゴルと日本を観察するとき遊牧民と農耕民という対比は面白そう。

出国前日、農耕的家畜(トリ肉)を食べながらモンゴルでありつけるだろう遊牧的家畜(ヒツジ肉)を楽しみにして。



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