自律神経失調~体の異常に気付くまで⑤~
偏頭痛で受診した脳神経外科の漢方治療は続いていた。血虚と言われ、頭痛、立ちくらみ、めまいが毎日朝から晩まで。6月に入ると繁忙期で、精神的に追い込まれた。
多忙で頭から湯気が出る日々
朝から晩まで一つのことに集中しなければならず、頭から火が噴き出しそうだった。今まで味方かと思ってきていた人たちと距離ができた感覚もあった。自分の力だけでは及ばない、組織力というものが試される感じも。とにかく毎日、戦場の前線に送り出されるのに、後方援護が全くないという状況だった。
そんなある日の夜、耳に違和感があった。キーンという大きな音が聞こえたと思ったら、水の中にいるみたいに詰まった。「気持ち悪いなあ」と思って耐えた。次の日、仕事場に行くと、いつも以上にテレビやラジオの音が大きく聞こえた。
おかしいなあと思いながらも仕事をする。次の日は音がもっと大きく、次の次の日には耳をふさぎたい感覚に駆られた。イヤホンをして、自分のスマホから音楽を聴くも、周りの雑音が耳に入ってくる。
不思議だったのは、今まで雑音と思っていた音の一つ一つが鮮明に聞こえることだった。テレビのニュース、ラジオの音楽、人の話し声。何について話しているのか、歌詞、その一つ一つに神経を吸い取れられていくようだった。
自信喪失
今まで大得意だったマルチタスクができなくなった。録音を聞きながらタイピングをする「メモ興し」が最たるものだった。考えながら書くということもできなくなり、箇条書きをメモをつくって記事を書く。最終的には、会見に出席して聞きながらメモを取ることもしんどくなっていった。
「あーなんか疲れてるなー」くらいで終わらせていたが、「やっぱりおかしい」と思った決定打が二つあった。
目の前が真っ暗になった
一つ目。ある日、お腹も減ってないけど、何か食べねばとコンビニにいった。作業に集中していた頭からは湯気が出そうだった。サンドイッチとおにぎりのコーナーに行き着くと、そこが真っ暗だった。
これは本当にびっくりした。左側はレジで、右側には飲み物のコーナーがある。それは見える。けど、商品が黒塗りになっていて、種類や何が書いているかもはもはや分からなかった。多分、サンドイッチを買って食べたと思う。味はしなかった。
二つ目。うちは夫婦で家事分担をしており、日々の食事は私が担当。これまた完璧主義なので冷凍食品とか使わず、いつも私が手作りしていた。
スーパーに行って、今日は何作ろうかなーと思う。何も思い浮かばない。野菜のコーナーを見ても、何があるか目に入ってこない。価格も目に入ってこない。それが高いか安いかも分からない。「疲れてるわ」と思ってお総菜コーナーに行くも、また何が置かれているか分からない。
少しパニックになって、息を落ち着けてから買い物をして帰った。何を買ったかは覚えてない。けど、ハイヤーの運転手さんに「遅かったね」と言われた。時計を見たら、スーパーで1時間近く過ごしていた。時間の感覚もなかった。
6~7月は価格の判断力が鈍っていること(シャインマスカットとか買いまくった)と、買い物がストレス発散方法という二つが重なり、かなり出費がかさんだ。
体の力が抜けて卒倒
7月。3日間ほどお休みをもらったら、頭の中が整理整頓できて、少し余裕ができた気がした。だが、また繁忙期を迎えて、3日間ほぼ寝ない状況が続いた。
体調は悪くなるばかりだし、幻覚というか、物を見ても見えてないという現象が怖かったので夫に話しをした。その頃は先述の脳神経外科だけではなく、異常にお腹が減るなどの現象があったので内科でも検査を受けていた。
「でも、診断で異常がないってことは大丈夫なんちゃう。休めば」
だから、休めないんだってー。理解してくれない夫に腹が立った。もういいや、と思って立とうとしたら、全身の力が抜けてその場で倒れてしまった。
ただ、頭だけははっきりしていた。足と手に力が入らないのが気持ち悪かった。「手の先、さすって」と伝えて、手と足をさすってもらうと、30秒ほどで体に力が入るようになり、起き上がれた。
感覚的には一瞬、失神したのかなと思った。怖かったので、神経内科を受診。検査をしても、「異常なし」で終わりだった。
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