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たとえ何もできなくても君は尊い存在なんだ


とある女がいたそうな
女は自信がなかった。
とにかく落ち着きがなく、せかせか。

だからお化粧も美しく武装。
ブランド品で武装。
実績も権威性も必死に歯を食いしばって勝ち取った。

外から見たら無敵武装。

本当の弱い私を好きになってほしい。
でも怖くて見せられやしない。

でも中身はスッカスカ
自信がないまんまの女。

実績に群がる人々への嫌気がどんどん増えていった。女は恐怖で眠れなかった。

女は人が妖怪に見えて怖くてひきこもった。
街から山へ逃げるように引っ越しをした。


『あなた方が欲しいのは私ではない。私があなたに与えられるもの。それは私でなくていいものだ。私は何もできなくても私を選ばれるようになりたい』

女は川のほとりでボーとせせらぎを聴きながら過ごしていた。
そこにおじいさんがやってきた。

『これ食うかい?』
採れたてのりんごをくれた。

じいさんは地位も名誉も手にいれていた人だった。
じいさんもまた人間不信になった人だった。

『どうやってそんなにほがらかになったんですか?』
女はりんごにかぶりつきながら聴いた。

『鳥だよ。自然だよ』
僕がお金を見せびらかしても、鳥は変わらず傍にいる。
僕は六本木ヒルズに住んでいたんだぞ!
政治家がつうかなんだぞ!!
そう叫んでも蝶々は相変わらずヒラヒラと飛んでいる。

あぁそうか。

自然はありのままの私を忖度なく受け入れてくれている。
私もまた自然の一部なんだ。

おじいさんの言葉を聴いて、
女はなぜだか涙が止まらなくなっていた。

女は自分へ手紙を書いた。


お金を稼げてなくて 君は尊い
嘘をついても 君は尊い
宿題をやらなくても 君は尊い
ティックトックで10万再生しなくても 君は尊い
借金していても 君は尊い
ブランドを身につけなくても良い 君は尊い
何ものにもならなくていいんだ 君は尊い
何もしなくてもいいんだ 君は尊い


女は山で撮影した動画は配信し始めた。
『過去の自分のような人がこの自然をみて癒されたいいな』

女のなりたい未来は、お金持ちで商業出版をだしている売れっ子作家だった。

女のなりたい未来は大きく変わった。

平凡をただ味わう味わい上手な人。
それがなりたい未来像。

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