見出し画像

和語のしくみ

本記事は日本語の和語(倭語)について以下を記載する。
✔ 全体を見通すための見出し(インデックス)
✔ 和語に関するメモ、その他の情報

和語の世界はとても広大かつ複雑であるため、本記事では、
✔ 全体像を把握するための手がかりを提示する
✔ 本質に近づくために何が重要かを明確化する
を狙いとしている。

基本的に、記事の前半に概要を記載し、後半に向かってより個別の話題を扱うようにする。


インデックス

和語の仕組み・由来・全体像を捉えるための見出し項目を列挙する。(随時更新中)

基層音節

和語の基層音節は、ほとんどの場合、1音節に還元できると思われる。すなわち1音節の意味を解き明かすことができれば、和語全体が理解しやすくなる。一般に公開・販売されている辞書・辞典ではこの観点が不足している。

語の構成要素

複数音節の語は 「接頭辞+語幹+接尾辞」 のような構造をしていることが多い。一般に公開・販売されている辞書・辞典ではこの観点が不足している。

アクセント

和語(日本語)には独特の高低アクセントがある。

その他特徴

✔ 和語(日本語)にはオノマトペを含む多くの重ね言葉(畳語)が存在する。
✔ 音節について母音連続を回避する傾向がある

和語に関するメモ

母音連続回避について

母音が連続することを嫌う傾向は和語の主要な特徴であり、和語っぽさ(日本語っぽさ)の由来の多くはこのルールに基づくものかもしれない。

ここには mi (御) の 例をいくつか記載する。 現代では 接頭辞「御」は 丁寧な表現を示すものと思われがちだが、古代ではもっと幅広い用途で用いられたと考えられる。
mi + chi (路) > michi (道)
mi + tu (津)> mizu (水)
mi + ya (屋) > miya (宮) 

上記の例で分かるのは「丁寧さ」よりも対象を括ってグループ化・総称化のマーカーとして機能している側面が強い。

筆者(LangDicLab)の見立てでは、特定の語に mi を付与するという特徴はさらに広範囲なものである。mi の付与は 接頭辞に限らないということである。特に地名に適用してある種の固有名詞を作るという機能がありそうである。

例)
amami (ama・御) > 奄美, 天海
iwami (石/岩・御) > 石見・岩見・岩美, ...
itumi/izumi (出づ・御) > 泉, 和泉, 逸見
utumi (海・御) > 内海・宇津見・宇都美・宇津美

ここで母音連続回避の傾向を見ることができる。なぜ語頭ではなく 語尾に mi を付けているかというと、母音連続を嫌うためだと思われる。「あま」とか「いわ」の先頭にmi (み)を付けて「みあま」、「みいわ」となるのが嫌なので「あまみ」、「いわみ」のように語尾に mi を付けた。

上記から、母音連続を回避するというルールは mi を 付与して総称化するというルールに先立って(優先して)適用される発音のルールという事になる。母音連続を回避は重要な項目なので詳しくは別記事にしたいと思っている。

s音 と t音

s音とt音が対照的な意味を持つ場合がある。語幹として以下のような例を挙げることができる。また、複数音節(複合語)の場合は、接頭辞のように振る舞う場合がある。

s音 ➔ まばら(疎ら)・距離的に離れていることを示す
sa
  sam さむ(寒) ex)さむい(寒い)、さみし(寂し)
  sak さく(裂く) ex)遠ざかる 遠ざける

su
  sum すむ(澄む) (= 濁りが乖離する)
  suk すく(鋤く) ex)すきま(隙間)

t音 ➔ 密着・密集する・距離が近いことを示す
ta
  tam たむ(溜む) ex)たむら(屯・党)・たむろ(屯)している 
  tak たく(焚く・炊く・宅・卓)
  
tu
  tum つむ(詰む) ex)つめ(爪)
  tuk つく(付く)
 

語の構成について

se(せ)(= 瀬, 背)を例として記載する。

基幹音(音象徴) : s ➔ する(擦,磨), そる(剃)など摩擦を示す
語幹 : se(せ)
結合音
  
動詞をつくる場合、子音 gk, bm, r を後に付ける
  名詞を作る場合、語尾に母音a, o, u, e, i を付与して場所を示す
  (※)一般的な場所を示す場合 a で終わる場合が多い

動詞をつくる gk, bm, r の例
seg(u)/sek(u) せく > せき(塞,堰,関,咳), せかす(急かす)
seb(u)/sem(u) せむ(責む, 攻む) > せみ(蝉), せまる(迫る), せまい(狭い)
ser(u) せる(競る)>せり(競り)

名詞(場所)を作る例
seko せこ (瀬古)
sebu せぶ (世武)
seda/sera (世羅, 世良)
seta せた(勢多,瀬田)
seto せと(瀬戸)


各種情報など

和語を理解するに当たって、以下の情報が役に立つ。

ウェブサイト(外部)

(URL リンク) 「私家版 和語辞典」 補遺
あだち すすむ(足立晋)さんという方が公開されているサイトで、非常に優れた考察を多く公開されている。

青空文庫で閲覧できる記事

言語学者の橋本進吉(1882-1945) 氏の研究について青空文庫で『古代国語の音韻に就いて』など3件の文書が公開されている。


note に upされている記事

母音連続回避の傾向については、次の蘇我星河さんの記事が分かりやすい。


関連する記事(LangDicLab)

『日本語の基層音節を探る』 (最終更新 2022 0809)
  基層音節として *nup/*nop, *wak を取り上げて派生図を提示

✔ 『日本語の来歴とその構造』 (最終更新 2021 1121)
  スンダランドの端っこ 台湾から与那国島を経由して日本へ

✔ 『日本語の「ち」とは何か?』 (最終更新 2021 0826)
  単音節 「ち」➔ 枝分かれして、各所をつなげているもの
  地名の例 ちの(茅野) ちずちょう(智頭町)

脚注(Footnote)

(*1) 

改訂(Revisions)

2023 0713 初版
2023 1122 「語の構成について」を追記


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?