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世界の言語は根っこの部分ですごく似ている

この記事では世界の言語が根底で驚くほど似ている件について、その一例を記載する。

先日、次のテレビ番組で興味深いことが紹介された
2023 1109 NHKE 幸せ気分のスペイン語 #05 ガリシア語教育

番組で次のフレーズが紹介された
¿Cómo se dice "mariposa" en gallego?
「🦋(ちょうちょ)」はガリシア語で何と言いますか?

ー Bolboreta.
「ボルボレータ」(と言います)

ちょうちょ(🦋)を示す語

ここでは、スペイン北西部で話されているガリシア語で「ちょうちょ(🦋)を意味する "bolboreta" に注目したい。

ガリシア語はロマンス系言語で"bolboreta"は以下の🦋を示す語と発音が似ている。

ラテン語 : pāpiliō
イタリア語 : farfalla
フランス語 : papillon

世界の 🦋 の言い方の例をもっと見てみよう。

日本近辺では
アイヌ語 : heporap
沖縄語 : haberu
(*1)

日本語(および多くの言語)では、ハ行音は上古以前はp音で発音されていた可能性が高い。よって、上記アイヌ語、沖縄語は、 古くは 「ペポラプ」, 「パペル 」(または、「パーペールー」) のような発音であったと思われる。

例えば、太平洋では
フィジー語 : bebe
サモア語 : pepe
トンガ語 : pepe
マオリ語 : pēpepe

中南米の言語では次のような例もある
ナワトル語(アステカ語) : papaotl
ケチュア語(古くはインカの言語とされる) : pillpintu

ヨーロッパの北部
ウェールズ語 : pilipala
フィンランド語 : perhonen

中東
アラビア語 : فَرَاشَة (farāsʰa) (ファーラーシャ) 

言語進化を総合的に考える場合、上記はすべて似ている
考えたほうが多くの知見を得ることができる。

世界祖語のようなもの

世界中に様々な言語が分岐する前の「世界祖語のようなもの」があるとしたら、 🦋 (蝶, ちょうちょ) を示す音声はかなり良いサンプルになるのではないかと思っている。上記はその一例である。

言語音声の拡散と変化

子音p は f,h,b,w に変化しやすいことが知られている。

アイヌ語 : heporap, 沖縄語 : haberu
日本列島の南北で似ているというのは、いわゆる日本語の普及以前の縄文時代の言語に限りなく近いのではないかと思われる。

さらにユーラシア大陸の東西で似ている。
ガリシア語やラテン語のbolboreta, pāpiliō

アイヌ語や沖縄語のheporap, haberu
および古い形「ペポラプ」, 「パペル 」と似ている。

このような類似は、古い言語音声は「端っこ」に残りやすい性質を反映している。すなわち、もともと当該発音が広く使われた時代・時期が地球上に存在した痕跡であると想定できる。

似たもの探しは日本人に有利

日本人は難しく考える必要はない。本来直感的に理解できるはずである。

ほとんどの始原音声と思われるような音声(音象徴と言っても良い)は日本語オノマトペに保持されているからである。

羽ばたく様子を示すオノマトペ
パタパタ, バタバタ

厳密に特定はできないが、上記「パタパタ, バタバタ」という音のニュアンスや語感がアイヌ語や沖縄語、さらにはラテン語やガリシア語の言語音声と関連があり、それらの由来であった可能性がある。(個人的には、その可能性が高いと思っている)

もちろん、日本語が世界の言語の元になっているわけではない。

パタパタ, バタバタ」という音のニュアンスは、かつて
存在した「世界祖語のようなもの」のニュアンス保持してて、とても長い年月を経て、2023年現在でも、ユーラシア大陸の「端っこ」の日本に残っているのである。

諸説ある英語の"butterfly" の butter の部分は 「パタパタ, バタバタ」を引き継いでいると考えるほうが、よりまともな推論と思える。


似たものを膨らませる

言語のようなとても情報量の多いシステム(体系)を相手にする場合、英単語の日本語訳をひとつづつ覚えるような、言語(単語)の違いに個別対応する方法が横行している。

しかし、そもそも現生人類(ホモ・サピエンス)は1種類であり、発声・調音構造も、認知方法も、さらにはメタファーを生み出す方法も同じ出発点を持っているはずである。

それなら根本的に似ている部分を理解して、似ている部分を膨らませていく(= アナロジーによる推論・理解・展開) ほうが、効率よく全体像を把握できる場合が意外に多い。

違いに個別対応するのではなく、似たものを膨らませる
少なくとも、このような視点を常に持ち続けていることは、あらゆる面で有利に働くと思われる。

あとがき

「根っこの部分ですごく似ている」語を示す独自用語(独自タグ) として #根似語 を本記事に付与する。


脚注(Footnote)

(*1) 日本語 : chou(蝶), choucho(ちょうちょ)

日本語のchou, choucho は 中国語の借用と思われるため、この記事では比較対象から外す。

(*2) 🦋 (蝶, ちょうちょ)を世界の言語でどのように言うかをもっと知りたい場合は、wiktionary(英語版)の "butterfly"ページを開いて、Translations > insect を展開表示すると約500言語の例を閲覧可能である。リンクは以下である。

wiktionary(英語版)の "butterfly"

改訂(Revisions)

2023 1115 初版


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