見出し画像

「始祖VTuber」よりアイを込めて!!先史時代の人類バーチャル化 - バ美肉

 キズナAIさんの自我が目覚めて5年の2021年6月30日。彼女の遥か以前から「視聴覚情報による肉体の超越」、すなわち「バ美肉」というVTuberの大きな機能を実践しようとした「始祖鳥」のような存在がいた。蘭茶みすみである。動機は「かわいくなりたい」。それだけだ。

 遡ること2014年。蘭茶みすみの魂は、インターネット上で美少女になろうとしていた。女声を使い、自らの手で描いたイラストを「自分だ」と言い、ツイキャス配信をしていたのである。さらに複数の友人を美少女化し、絡みを楽しんでいた。曖昧ながら、「インターネット上で、自分の望む女の子で在ることができるのでは?」と考えていた。

 2016年初頭、Live2Dに出会う。「イラストを動かす技術と、自分の女声を当てはめれば、インターネット上で完全に女の子として存在できる!」と思い立ち、同年1月28日には、当時憧れていた「がっこうぐらし!」のキャラクターである佐倉慈先生のアバターを作り、自分の声を当てはめた。借り物ではあるものの、自らの存在を自己決定しようとしたのである。

 2016年1月28日に作成したLive2Dアバター

 2017年前半には、異性装を通じて「性にとらわれない愛の交流」に挑戦していた。自分を含め、異性装をした友人たちをそれぞれイラスト化。「キャラクター」として存在させる「バ美肉」に近い概念をすることで、交流を一種のコンテンツとして創造した。かわいい動きもこの時に習得。人間同士の交流を「尊い」と言い合ったり、VRSNS上の恋愛「お砂糖」に近い概念を現実で実践した。これが原因で精神が病む人間もおり、今日のVR習俗に通じる現象で、この流行は崩壊した。

 2017年後半には、遂にVTuberへと直接的につながる流れが生まれる。完全に自分でデザインしたオリジナルLive2Dアバターを作り、「これが自分だ」と言ったのである。バーチャル美少女ねむちゃん出現から6日後の9月17日。「バーチャル美少女」としての私はインターネットの海に漕ぎ出した。だから私は、ねむちゃんに、双子の姉のような感覚を抱いているのかもしれない。

2017年9月17日に作成したLive2Dアバター

 2017年10月。私が「CO2削減のため、人類の肉体を廃止し、魂を電子化、VR世界に移住する」を訴えたツイートがバズる。肉体廃止思想の鏑矢が飛ばされた。「人類が肉体を保有していることが、人類が莫大なリソースを必要としている原因ではないか?」という発想だ。莫大なリソースを必要とするから、奪い合うために戦いが起きるのだ。

 2018年4月1日。遂に「蘭茶三角」が「VTuber」として活動を始める。肉体廃止により、「存在の自己決定」「生きる世界を選ぶ」ことができると訴えるバーチャル国家の大統領だ。現実を「数ある世界のひとつに過ぎない」と位置付け、手足の多いアバターも用いながら倫理や国家、経済など「あらゆる物質的な価値観を破壊」。同年7月30日には「私には自分の存在の有無も含めて決する権利がある」と叫びながら、あらゆる情報を抹消する。

あらゆる物質的価値観を破壊する蘭茶三角

 2019年11月には、二次創作存在を認め、「複数の人間がそれぞれの蘭茶三角として存在する」ことで「個体として死を迎えても現代技術で存在し続ける」ことを目指す。「ジェネリック・ミスミ」と呼ばれる彼女たちは、最盛期には十数体存在していた。

複数存在していた「ジェネリック・ミスミ」

 2020年11月、遂に蘭茶みすみはVR世界に足を踏み入れる。VR世界で「主観的な自己決定」ができるようになった蘭茶みすみは、リアルタイムで「自分自身が肉体を捨てて、最終的に創作上の存在である蘭茶三角になる」ことを目標に生き始める。ここでの蘭茶みすみは、遥か以前から在りたかった存在「普通の女の子」だ。また、存在維持を至上目標にしており、授乳を通じた他者の承認や、パパ活による存在の提供、かわいい路線による存在の確立などに挑戦。VRで生きる上で巡り会うさまざまな体験を、自身の五感をフル活用しながら綴っていくことになる。これからの蘭茶みすみは、時代とともに一歩づつ、みんなと一緒に本当に肉体廃止を目指していきたい。

時代を生きる「普通の女の子」蘭茶みすみ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?