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2021/8/2 2021/5/8②

「サンライズに乗った段階で旅の目的は果たした」と半ば冗談のように書いたけど、実際に旅の目的であるうどん屋に行くのは「サンライズの停車駅で行きたい所はあるか」という逆算から決めたものだったし、そうでなければ「うどん屋に行くために岡山まで(ほぼ)日帰り旅行する」なんてスケジュールにはせず、もう少し丁寧に行き先や見たい場所を決めていたと思う。
とにかく、GWにどこかへ行きたかったのだ。

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(CONTAX T2/SuperiaPremium400)

朝にうどんを食べた後、岡山駅まで戻り、お昼まで時間を潰すことにした。
普通なら岡山城やら後楽園やら見て回る所はあるはずなのだが、ノープランでサンライズに飛び乗ったせいで全く周辺の観光地を調べなかった。思えばこれで旅行が成立していたのは、行く先々で「ライブ」という時間も体力もマックスで使うような大イベントがあったから、もしくは友人と集まって何かするという計画ありきで旅行に行っていたからであって、本来ならばそれなりに行きたい場所を用意してから移動手段なりを考えるものなのだ。
こういうことを考えると、自分は本質的に旅行が好きなわけではないのかもしれない。正確に言えば「どこかに行く」のは好きだと思うんだけど、どこかに行くための軸が著しく少ないのだと思う。卒業旅行に一人で行った時は大阪にライブを見に行って、伊勢神宮に参拝して、友人と飲んで帰ってきたので、まさしく「ライブ」「歴史」「神社」「友達(オタク)」という数少ない旅行の軸をフルに使って旅行をしていた。その旅行の軸を見失った途端視野狭窄に陥ってしまうので、もう少しインプットを増やすなりして旅行をより楽しめるような人間、「教養のある人」になれたらいいのだけれど。

岡山駅周辺、といってもほぼ駅ナカで時間を潰し、適当な時間に岡山駅を出た。退屈するかと思っていたけど、新幹線のホームにキティちゃん新幹線が来るのを見に行くなどしていたら意外と時間が足りなくて、鉄道オタクも悪くはないな、と思った。

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(X-Pro2/ZEISS Touit32mm)

おそらく東京ではこの先走ることはないであろう、爆音で走る古い電車に揺られ、目的のうどん屋がある上の町駅についた。
駅前から伸びる県道をまっすぐ進むと、目的である松家製麺に到着した。

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(CONTAX T2/SuperiaPremium400)

松家製麺。
T2を買うキッカケにもなったミュージシャンが「最高のうどん屋」と写真をインスタに上げていたのを見て、いつか行きたいと思っていた。
なんとなく覚えていたので、せっかく西の方にいくなら、と思い立ったのだ。

厨房のある屋台とテーブルがあり、調味料のカゴと水が出るジャグ、プラスチックのカラーコップが並ぶそのお店は「オープンスペース」と呼ぶにはいささか無骨さを感じるような気もしたのだが、そんな気取らない雰囲気のおかげで入りやすくなるのか、親子連れや夫婦連れ、一人のおじさんなど、様々な層の客で賑わっていた。ご時世もあってか、旅行客は自分一人しかいなかったのだが。

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屋台のカウンターに並ぶメニューの中から、オススメと思しきメニューを注文する。
釜玉ラー油うどん。

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もはや薬味ではなく具と呼べるような自家製ラー油を絡めながら麺をすすると、細い麺に凝縮された小麦粉の力強い風味とラー油の旨味が混ざり合う。美味い。半分ぐらいまで食べ進めたところで卵を割ると、卵のマイルドなコクがプラスされ、また違った味で飽きずに食べられる。
細麺ながらボリュームがあったのだが、想像以上に美味しく完食できてしまった。

足りない、もっと食わせてくれと言わんばかりにもう一杯を求めてカウンターに並ぶ。
よりシンプルなうどんを味わってみたいと思い、釜玉うどんをチョイス。

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2杯目ながら、先程も感じた力強い小麦粉の風味をより強く感じつつ麺をすする。美味い。優しい出汁と薬味、そして途中で割った卵にも負けない麺の強さを感じる。麺の歯ごたえも心地よく、楽しく咀嚼していたら完食していた。

もう一杯……というにはお腹も満ちてきて、家族連れや自転車で来た小学生たちが次々入店し席も埋まりつつ、カウンターにも列ができつつあり、なおかつ次の電車も考えたらそろそろ退店すべき時間となった。
しかし、せっかくここまで来たのだから……というある意味貧乏人根性が炸裂し、テイクアウトできるメニューを買って駅まで向かうことにした。

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バナナジュース。
タピオカの後釜にしては流行りきらなかった印象だけど、満腹感を感じつつある胃袋にはちょうどよいボリュームで、ちょうどよい爽やかさだった。

岡山で見て回ろうと思っていた場所や行きたいラーメン屋、岡山からの帰りに寄り道したい場所等はまぁまぁあったのだが、うどんを2杯食べた所で満腹感から眠気と満足感が出てきたのでもう何もかもどうでもよくなってしまい(こう書くと大げさな気がするが本当に予定が全部どうでも良くなってしまった)、岡山まで戻る電車の中でさっさと東京に帰ることを決めてしまった。
東京まで帰る新幹線の中で、次はもっとしっかり計画のある旅行をしようと思いながら缶チューハイとじゃがりこを開ける。
大人、というか社会人になってから突発的な旅行ができるようになったのは素晴らしいことなのだけど、計画性のなさの言い訳に「突発的」は使えるのだろうか。
ちょっと後悔しながら目をつぶり、次に目を開けた時はもう新横浜の手前だった。
後悔は眠る前より少し大きくなっていた。

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