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空想にふけるのが、私のランチスタイル。

「チーズビビンバをひとつ。」
ランチを食べに、とあるまちの韓国料理店に入った。チーズに目がない私が頼んだのは、チーズビビンバ。

韓国料理を食べるのはいつぶりだろうか。空前のタッカルビブームがきて、わざわざ新大久保のお店まで食べに行っていた大学1年生の時以来かもしれない。

あの頃とはうって変わって、今は食への熱烈な興味は薄れてしまったように思う。胃もたれが激しい自分の老化を嘆く。


しばらくして、頼んでいたビビンバが届いた。溢れんばかりのチーズが、鉄板の中で騒がしく音を立てていた。

「よくかき混ぜてください」と言われたが、チーズをチーズのままいかしてあげたほうがいいのでは、と意味のわからないことを考え、鉄板の上で踊るチーズをぼーっと見ていた。

奥に引っ込んだ店員は、韓国語で独り言を言いはじめた。私には理解できないと思っているのだろうか。その通り、韓国語はさっぱりわからないので、会話に混ざろうと思っていてもレスポンスができなかった。

店員の様子を眺めていると、パリパリに焦げたチーズが、歯にくっついてきた。ついさっきまで憧れのまなざしを向けていたチーズが、ひどく鬱陶しく思えた。

もう一度、店員に目をやる。おそらく卵のようなものを机に打ち付けながら、うんうんと頷いている。料理をしているのかと思いきや、昼ごはん(まかない)を食べている。そして、独り言を呟いているのではないとわかった。電話の向こうから相手が聞こえたのだ。

一応、私がいるんだぞ。
鉄板はまだチーズがジュージューと音を立てている。お前は目の前に集中せえや、そう言われているみたいだった。

気になるのは店員だけではない。メニュー表にも、冷蔵庫にも貼り付けられた無数の👍シールが気になって頭から離れない。こんな感じで、飲食店に入るとつい妄想が広がってしまう。もちろん、目の前の料理には全く集中できていない。

熱々の鉄板で静かに音を立てるチーズが、最後の命を燃やすようにこちらに集中しろと言っていた。

だがな、チーズ。お前の下にはプルコギがあると思ったらないじゃないか。お前を引き換えに、私は牛肉が食べれなかったんだぞ。

自分勝手な言い訳をチーズになすりつけ、視点をあっちにいったりこっちにいったりしながら、なんだかんだで食べきった。牛肉がなくても十分美味しかった。今更なことは承知の上で、ごちそうさまでしたと、チーズと店員に深い感謝を述べた。

お金を払おうとレジに向かうと、店員が今新しいメニューの仕込みをしているんだと教えてくれた。やばい。心の声が漏れていたのかもしれない。

4月中頃にメニューをリニューアルする予定で、取引先の韓国の人と話していたようだ。今度は、普通のビビンバを食べにきます。店を後にすると、店名に👍があるのが見えた。これは、👍(グッチョブ)という意味らしい。

いつもは頼まないようなメニューを頼むときは特に、私は空想にふけってしまうらしい。まあ、それもまたグッチョブということで👍

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!