行徳百景（４）旧江戸川の向こう側

行徳駅を出て、左にまっすぐ歩き続けると、川にぶつかる。

旧江戸川というらしい。

幅の広いまあまあ大きな川で、小さな船が止まっていたりする。

水辺は気持ちよく、散歩コースとしては最適。

ジョギングをしている人も多い。

私は晴れた日にこの川辺でマックを食べることを、

『お外でマック』と呼んでいる。

なんでも”お”をつければ上品に聞こえると思っている。

『お外でマック』を楽しみながら、ふと川の向こう側を眺める。

向こう側は、東京なのである。

泳いだら１０秒くらいでつきそうなこの距離で、

都民になりきれなかった上京女ですとも。

てりたまをやけ食い。

話が飛ぶが、かつてハムスターを飼っていた。

それはもう可愛がっていたのだが、

長期で家をあける時は、動物病院にハムを預けていた。

しかし、ハムを預かってくれる病院は限られている。

病院も、明日にでも死にかねない動物を預かりたくないのだ。

そんな中、預かってくれる動物病院があった。

川の向こう側、つまり東京江戸川区にある動物病院だ。

地図で見ると、川のすぐそば。

しかし、川を渡るには数キロ先の橋をぐるっと回らないといけない。

具体的には、行徳駅からお隣の南行徳駅まで電車に乗り、

そこからさらにバスで２０分ほど。

そして徒歩１５分ほどかかった。

この川さえ渡れば５ふんで着くのに。

ハムを連れて家を出る度、

壁に立てかけられた、趣味であるサーフィンのサーフボードが目に入る。

サーフボードにハムを乗せて、川の向こう側に行こうかな。

ハムもそのほうが楽だよな。

いやいや。ずぶ濡れで来られても困るよな。

そんなことを考えながら、

東京と私の間に立ちはだかる大きな川の存在を

ひしひしと感じていたのであった。