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米国戸建て分譲業者に吹く追い風(21/01/12掲載分)


新型コロナ禍にもかかわらず米国戸建て分譲業者は好調な業績を持続中です。上場会社上位15社の売上高合計は前年比14%増(販売戸数は前年比13%増)となっております。それらの時価総額合計も1,060億米ドル(約11兆円、本年3月末より25%の増加)に達しました。昨年のパフォーマンスでは、S&P500のプラス14%、エクイティREITのマイナス10%を凌ぐものでした。上位15社のうち、低中価格帯で全国展開(ただし、NVR社は東海岸のみ)している以下の戸建て分譲上位4業者は投資対象として注目に値するかもしれません。

1. D.R. Horton社(Ticker “DHI”)市場シエア:25%、時価総額:262億米ドル
2. Lennar社(Ticker “LEN”)市場シエア:23%、時価総額:246億米ドル
3. NVR社(Ticker “NVR”)市場シエア:15%、時価総額:157億米ドル
4. PulteGroup社(Ticker ”PHM”)市場シエア:11%、時価総額:121億米ドル

戸建て分譲業者の業績好調の背景には、①ミレニアル世代(1989-93年生まれ)の持ち家比率の大幅増加、②2010年以降、戸建て供給不足が継続していること(全人口比戸建て供給数が5-6%〈1990-2010年〉から3%まで低下/半減)、③住宅ローン金利低下(低下幅約1%)による住宅需要の増加、④新型コロナにより、3密を回避した在宅勤務浸透により「都心型アパート」から「郊外型戸建て」の人気が増加したこと、さらに、⑤戸建て賃貸業者が割安な戸建て賃貸の需要を後押ししたこと、等がありました。

戸建て分譲業者にとって、5つのL(Lending〈融資環境〉、Lumber〈木材価格〉、Labor〈人件費〉、Land〈土地代〉、Legislation〈税制/法制度〉)が業績を左右する要因として重要と言われております。2019年以降5つのLに追い風が吹いておりましたが、2021年も同様の環境が継続すると市場関係者は見ております。一方、リーマン危機以降、戸建て分譲業界の利益率の低さとサブプライムの後遺症から、投資家層による不人気により、戸建て分譲業者のバリュエーションはEBITDA倍率が10倍以下の低位に推移しておりますので、戸建て建築に資本投下が十分に行われてこなかったと考えられます。

戸建て分譲業者銘柄への投資に関わるバリュエーション上のネガティブ要因としては、①分譲業者の薄利多売体質、②金利上昇に対する感応度の高さ、②建築コストの上昇しやすさ、③2013年以降個人所得増加以上に住宅価格が上昇してきており、住宅ローン金利が上昇すれば賃借することの方が割安になりやすい傾向にあること、④ミレニアル世代にとって、住宅保有コスト増加・学生ローンの返済負担増加、等が戸建て保有の妨げになる可能性、等が考えられます。

これらの要素を新政権による政策・景気動向・市場環境・社会構造変化、等が打ち消し、あるいは、打ち勝つことができれば、格好のバリュー投資すべきセクターになると言えましょう。

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