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『言志四録』 4巻『言志耋録』(げんしてつろく)

 最終巻『言志耋録』は、佐藤一斎が80歳から書き始め、83歳時(嘉永6年)に刊行されました。この年に黒船来航があり、時代は乱世に突入します。大国の清がアヘン戦争に敗れて植民地化されているのを、江戸幕府や雄藩の知識階級者は把握していました。日本もその後、西洋列強の軍事力による脅しで不平等条約を結ばされてしまいます。
 黒船来航から5年後に、88歳で佐藤一斎は死去しました。またこの年は正月に桜田門外の変が起きていて、幕府の威信は明らかに落ちていきます。昌平黌の儒官を務めた佐藤一斎は、直の幕臣ではなかったですが、職務上の立場的には幕府寄りの人だったでしょう。同時に、経世の目を持つ人物として世の趨勢を眺めていたんではないか、と『言志耋録』の条文からも推察できます。

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  天地間にはさまざまの現象が現れるが、それらはどのような道理に基づくか、その道理は如何に困難なものであっても究め尽くせないというものはない。また、世の中のことは千変万化するけれどもそれらがどのように変化しようとも応じられないということはない。

 

 世の中が混沌として大変な時こそ、自分の中に指針を持たないといけないなあ。と『言志四録』を読んで心に湧くものがありつつ、とりあえず今日を慎重に無理なく生きようと思います。

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