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音楽家の愛情表現

ある日本人音楽家の引退公演を聞いていた。プログラムの中この演奏会で初めて公開される新曲があった。
クラシック業界の新曲は鬼門だ。私たちは古いものがすきで何百年も前の物を掘り起こしては、嘗め回して楽しんでいるタイプの人間だ。メロディーや調性を楽しんで、一定のリズムやその移り変わりをこよなく愛している。どっこい現代音楽とは不協和音や、奏法を逸脱した音、人を不安にさせるようなリズムが書いてあることが多い。(主に演奏家を不安にさせる。)
その中にも時々、印象に残るものはあり、百年たったらものすごく評価されている、ということは歴史のなかで何度も起こっているから邪険にはできないのだが、往々にして現代曲をやると客も入らない。

その夜の新曲はなかなか良かった。曲に色彩や、温度があった。そして曲の一番最後になにか知っているメロディーが聞こえた。日本の歌のなにかだ。混沌のおくからすっと現れたシンプルなメロディー。
懐かしい気持ちになった。作曲者から演奏者にたいするオマージュだ。聞いていた日本人はみんなきがついていたはずだ。
作曲家と演奏者は長い時間一緒に音楽を共にしてきた仲間だった。
わかる人には、わかるんだよ。という表現がある。すべての人に向けているわけではない。でも、確実に伝わる。
このメロディーは君に。
引退公演にふさわしい演奏でよい夜だった。作曲家から演奏家への親愛の情に心がきゅっとなった。





























































































































































































































































































































































































































































































































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