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みんなのリーダーシップが自然に発揮される、しなやかな組織文化へ ━ 日立Co-Creative Dojo対談インタビュー後編

Laere(レア)は2021年より、株式会社日立製作所にて社内向けリーダーシップ育成プログラム「日立Co-Creative Dojo」を共同開発してきました。対談前半では、株式会社日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタより丸山幸伸さん、小西正太さん、そして株式会社Laere 共同代表 大本綾が共に、プログラムが立ち上がるまでの物語、プログラム中の変容について振り返りました。

後半ではプログラム3年目に迎えた挑戦、そしてしなやかな組織に求められる「不確実性との向き合い方」について話します。

個人の意志と語りから始まる クリエイティブリーダーシップ ━ 日立Co-Creative Dojo対談インタビュー前編

3年目、プログラムを協創するプロセスで育むリーダーシップ

━ 2023年に日立Co-Creative Dojoの開催は3年目を迎えました。回を重ねるなかで変化はありましたか?

大本 綾: プログラムをつくる立場としては、毎年何かしら新しい挑戦をさせていただきました。3年目で印象的だったのは、カタリストの方もプログラムの設計段階に入っていただき、全体のテーマ設定やゲストスピーカーの人選を一緒に行ったことです。プログラム中の進行も一部お願いをして、プログラムを通して協創していきましたね。3年目を迎えて、丸山さんが意識されていたことはありますか? 

丸山 幸伸さん: 先にお話した通り、1回目は大本さんの物語に共感をした私が、2回目は共感度が高い人たちがカタリストとしてプログラムを社内へ広げていきました。そして3回目はあえて、それほど共感度は高くはないが関心がありそうな人、もしくは推薦で名前をあげてもらった人にカタリストをお願いしました。

3回目のカタリストのなかには、最初は少し戸惑った人もいたかもしれません。でも共感度が高い人の間だけにとどめてしまうと、組織全体には浸透しないと思ったんです。私たちはイノベーションを生み出すことを期待されている組織なので、自分では考えつかないことを考えられる人を育てるのも私の使命なんですよ。プログラムの内容を議論しているときになかなか決まらないシーンがあった時も、ぐっと待ってみようと。自分たちで停滞を乗り越えた時の力は想像以上のものを生むはずだから、見守ってみようと思ったんです。

株式会社日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタ 主管デザイン長 丸山幸伸氏

小西 正太さん:実は僕、3回目のカタリストをやりたいくらいだったんですけど、声がかからず少し残念に思っていました(笑)。 でも、そんな背景があったんですね。たしかに僕みたいな共感度が高い人だけで盛り上がってしまうと、尻すぼみになってしまうかもしれないです。

3回目のカタリストの方がみんなの前で話したり、ゲストスピーカーと対話していた姿は、その人の新たな一面や社会への眼差しを知る機会にもなりました。一部で盛り上がって終わるのではなく、プログラムを通してじんわりとクリエイティブリーダーシップが広がる契機になったと思います。今回はカタリストの活動をみて、カタリスト以外の過去の参加者がこのプログラムのよさを共有する動きもありました。それぞれが補い合っていましたね。

株式会社日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタ 小西正太氏

━ プログラムを一緒につくる過程を通して、それぞれのリーダーシップが自然と発揮される状態になっていた。

丸山さん: その通りです。行動様式としての「クリエイティブリーダーシップ」の育成で目指すのは、みんなが自律的に、自分なりのリーダーシップをとれるようになることです。大本さんとの対談記事でもありましたが、誰もがリーダーになれるし、そうなってほしい願いがあります。プログラムをつくる過程を通して、この感覚を共有したかったんです。

行動様式の基礎にある「ネガティブ・ケイパビリティ」

━  みんながそれぞれのリーダーシップを自然に発揮できる状態である「クリエイティブリーダーシップ」を育てるうえで、特にどのような力が必要だと考えますか。

丸山さん: ネガティブ・ケイパビリティ(答えがない事態に耐える力)ですね。不確実性が高い時代では、いつも順調というわけにはいきません。順調なとき、そうでないときも通用するリーダーシップを育む必要があります。

このプログラムを始めるときも、「1回でやめるつもりはない」と人事のチームに伝えていました。すぐに成果や答えがでるとは思っていないけれど、3年くらい続けると見えてくるものがきっとあるはずだと。今振り返ってみると、3年続ける意味を感じましたね。

小西さん: プログラムをつくる側にもネガティブ・ケイパビリティが求められていたんですね。僕がビジョンデザインの仕事に関わるときも、似たような感覚を覚えます。未来が完璧には分からない中で、生活者のありたい暮らしの姿と、そこに至るまでにプロセスを描くわけですが、実際には掲げたビジョンに最短距離で行き着くのは難しい。だから今をじっと耐えたり、回り道をしながらでも、できることから始めるのが大事だと感じます。

丸山さん:  巨大な企業なので計画経済に則っていますが、私たちは新規事業やイノベーションを起こしていく立場でもあるので、すべてが計画通りにいくわけではありません。数ヶ月後、数年後の想定を立てつつ状況を見てピボットしていくので、最短距離で辿り着けないことや中間生成物が予定と異なることもあります。計画経済とイノベーションのはざまに立つ私たちに求められるのは、最終的な成果に向かって、想定外に耐える力、逆風をかわす力を身につけながらやり抜くことです。

大本:  変化の多い状況であっても、そのプロセスを楽しめるといいですよね。そしてもやもやした時に戻ってこられるのが、「My will(社会や組織に対する個人の想い)」でもあります。日立Co-Creative Dojoは文字通り「道場」のように、継続的に自分の想いや使命を見直したり、対話の技を掛け合いながら磨いたりする場です。

自分の行動の支えとなる想いを持ったうえで、仲間と共に「楽しみながらもやもや」できる環境があれば、ネガティブケイパビリティを健全に育てられるのではないでしょうか。

不確実性の高い時代に生き残るため、組織の治癒力を高める

━ 3年間の「日立Co-Creative Dojo」プログラムを経て、今後デザインセンタでどのような文化を育んでいきたいと考えていますか。

丸山さん: クリエイティブリーダーシップが自然と発揮される状態が理想です。このプログラムも最初は私がボールを持って先頭で走る感覚だったんですけど、3回目でみんなが動かしてくれているように感じました。少し距離を置いてみて、周りのメンバーにそれぞれのリーダーシップが育まれていくようすを見ることができました。

大本: 回を重ねて、リーダーシップを委ねていかれたんですね。

丸山さん:究極的には、このプログラムも私が舵を切って進めるのではなくて、みんなが「このプログラムはやるべきだ!」と声をあげて、自然と立ち上がっていくといいですよね。 もしかすると、途切れることがあるかもしれないけれど、一度途切れることで復活の力学が働くかもしれない。

何かアクシデントがあるとそれを補う治癒力が生まれて、組織はさらに強くなっていくと思います。これからは自分の手が離れた状態で、どれくらいこのプログラムの遺伝子が残るのか見ていきたいですね。

小西さん: プログラムのなかでも、クリエイティブリーダーシップの考え方の一つとして「4つのリーダーシップの型」を紹介いただきました。何か穴が空いてしまったとき、誰かをフォローするための行動もリーダーシップだと学びました。社会も組織も浮き沈みがあるはずだから、柔軟に対応できる人財がいるチームのほうが、最終的には生き残っていけるのだろうと思います。

大本: このプログラムで交わされた想いや感情は、小西さんのように記憶してくれている方も多くいるでしょう。最初に想いを持って始めた人の関与が下がることで、新たに吹き込まれる命もありますよね。次に想いを持って飛び込んでくれた人たちがまた新たな文化をつくっていく。私たちもその時にまた、一緒に仲間として加われたら嬉しいです。


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