Hej! Laere vol.27 人間を持続可能にするデザインとは?〜LEXUS DESIGN AWARD受賞作品から考える人間と技術の関係性〜
Laereコラボレーターのパヴェルス・ヘッドストロム氏が「LEXUS DESIGN AWARD 2023」を受賞しました!
2月2日に発表された「LEXUS DESIGN AWARD 2023」にて、Laereコラボレーターであるパヴェルス・ヘッドストロム氏の作品が受賞しました!
LEXUS DESIGN AWARDとは、レクサスが主催する世界中のクリエイターに焦点を当てた国際デザインコンペティションです。先見性があり、より良い社会に貢献するデザインアイデアを表彰しています。受賞作品はモビリティだけでなく、幅広いジャンルのアイデアが受賞しており、国際的にも注目度が高いコンペティションです。
2023年度受賞者のパヴェルス氏はスウェーデン出身。デンマーク王立芸術アカデミー(以下RDA)で建築学の修士号を取得した後、建築家としてキャリアをスタートし、様々なアイデアを発表しています。彼は以前ニュースレターで連載をしてくださっていた舞さんのパートナーであり、Laereにとって大切な友人・コラボレーターでもあります。
今回の受賞作品は、空気中の霧を集めて1日に10リットルの水を集めることができるモバイルデバイス「Fog-X」です。Fog-Xはテントに拡張できるモバイル住居機能もあり、水不足問題へアプローチするアイデアとなっています。
このアイデアはアフリカのナミブ砂漠に生息している「ナミブ砂漠カブトムシ」という甲虫が霧の中に空気中の水蒸気を背中で集め、そこから水分を得ている仕組みからヒントを得てつくったそうです。
ちなみに、受賞作品は世界で活躍するクリエイターがメンターとして伴走しながら、2023年春に最終プロトタイプが発表される予定です。パヴェルス氏の作品が最終的にどのような形になるのか、Laereメンバーもワクワクしています。
受賞作品から考える「サステナブル」のさまざまな側面
国際デザインコンペティションと聞くと、最新鋭のテクノロジーを搭載したプロダクトを思い浮かべます。しかし、今年の受賞作品は不必要になったセラミックを使用した電気を使わない加湿器や、視覚障がいを持つ人が地形を学ぶことができるパズルなど、意外と「ローテク」なものが多い印象です。
弊社共同代表の大本がニュースピックスの連載で、パヴェルス氏にインタビューした際、彼は常に既にあるローテクの技術を通したアイデアを考えていると話していました。ローテクなものを使うことで、誰でも使うことができ、壊れても簡単に修理することができるので、多くの人々の役にたつそうです。
持続可能な社会の実現への解決策として、テクノロジーの進化は欠かせません。ゴミにならない素材や、デジタルの普及に伴うペーパーレスの推進など、持続可能な社会を作るために、最先端テクノロジーはインパクトのある解決策の一つです。
一方で、デザインアワードの受賞作品から見えるのは「使う際に外部エネルギーが必要でないもの」や「修理がしやすいもの」といった、多くの人が長く使いやすいプロダクトです。
プロダクトや社会といった人間の外にあるものを持続可能にするだけでなく、プロダクトを使う人間が持続的に使い続けられるように、デザインする。受賞作品からは人間自身のサステナビリティをいかにつくっていくか考えさせられます。
パヴェルス氏の想いやプロダクトの背景については、弊社レアの大本がNewspicksで連載している「カオスの思考法」にてより詳しく紹介しています。制作の根底にあるパヴェルス氏の課題意識など、ニュースレターでは紹介しきれなかったエピソードも紹介されていますので、ぜひチェックしてみてください。
Voice from Finland
Moi! Hauska tavata!(こんにちは!はじめまして!)
フィンランド・アアルト大学の大学院にて、Collaborative and Industrial Design(CoID)の修士課程に在籍しているえりかです。
今月のニュースレターから、アアルトの先輩であり友人でもある吉田真理子さんが担当していた『Voice from Finland』の連載を引き継ぐことになりました。留学で得た学びや日々の生活で感じたことを、デザイナー視点で皆さまにお届けできればと思います!今回は連載第1回目ということで、「社会人を経て、なぜフィンランドにデザイン留学することになったのか」を自己紹介もかねて、ゆるりとお話しさせてください。
19歳、はじめてのフィンランド
高校まで、海外とは全く縁のない生活を送っていました。英語の成績は中の中くらい。子どもの頃から絵を描くことが好きだった私は、「将来は広告を作りたい!」と夢を見つつも、美大に進学する勇気はなく、地元の大学の言語表現学科に入学しました。
人生の転機となったのは、大学1年の夏。友人に誘われて参加した留学説明会で、コスパ高めの「交換留学(現地の大学への授業料免除、留年不要)」に惹かれ、その場で留学を決意します。英語の試験に苦しみながらもなんとか校内選考を通過し、翌年の秋から約1年間フィンランドに留学。南西部の街、トゥルクのアーボ・アカデミー大学で、社会学やフィンランド語を学びました。
当時、縁もゆかりもなかったフィンランドを留学先に選んだ理由は、世界でもトップクラスといわれる教育制度に興味を持ったからでした。子どもの教育水準が高く、大学院まで学費無償で、大人も「学び直し」ができる環境が整っているフィンランド。
大学では、仕事をしながら大学に通う人や、子育て中のお父さんやお母さんたちに出会いました。性別も肩書きも関係なく、何歳になっても意欲的に学び続けるフィンランド人の姿に、感銘を受けたことを覚えています。交換留学で得たのは、語学力や新しい知識の習得だけではなく、学ぶのに遅すぎることはないという、「学び」に対する前向きな姿勢だったかもしれません。
30歳、2度目のフィンランド
大学卒業後は専門学校で広告デザインを学び、広告制作会社でグラフィックデザイナーとしてのキャリアをスタート。地元の公立文化施設に転職し数年が経った頃、デザイナーとしての成長の行き詰まりから、「フィンランドでデザインを学び直したい」という気持ちが芽生え始めました。英語の勉強に再び苦戦しつつも、2022年にアアルト大学のデザイン修士課程に合格。大好きだった職場を退職し、昨年の夏、約10年ぶりにフィンランドに戻ってきました。
アアルトに入学してから早4ヶ月。今はまだ「点」でしかない大学での学びが、いつか出合う「何か」につながることを信じて、毎日を過ごしています。今後のニュースレターでの連載を通して、皆さまにフィンランドでの学びや発見をお届けできることを、心より楽しみにしています。
それでは、Nähdään!(また会いましょう!)
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