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『Hej! Laere vol.9』:複雑で曖昧な「間」を受け入れ、前に進むために必要なマインドセットとは?(2021年8月配信)

本ニュースレターは、2021年8月6日に配信しています。

皆さまへ

暑い日々が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 7月末にオリンピックが開幕し盛り上がりを見せている一方、緊急事態宣言により再び行動に制限を受けている最中でもあります。心身の健康に気をつけながら、自分にとって心地よい生活を整えていきたいものです。

さて、8月のニュースレターは、6月末に開催された一般社団法人 AIDA DESIGN LABのローンチイベントのレポート記事『「間」を受け入れ楽しむことが、変化を生み出す一歩になる ━ AIDA DESIGN LAB ローンチイベント』から当日の様子をダイジェストでお届けします。また、デンマーク現地からお届けする「Voice from Denmark」ではデンマークの全寮制の学校フォルケホイスコーレから見た間・余白についてご紹介します。

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「間」を受け入れ楽しむことが、変化を生み出す一歩になる

新型コロナウイルスの世界的な拡大、気候変動など、さまざまな社会課題が複雑に絡み合う現代。これらの課題に立ち向かい、変化を先導できる人材を育てることを目的に、一般社団法人AIDA DESIGN LABを設立しました。弊社レアの共同代表である大本と坂本も当社団法人にて理事を務めています。2021年6月25日(金)、設立を記念してAIDA DESIGN LABがローンチイベントを開催いたしました。

▼AIDA DESIGN LABのHPはこちら
http://aidadesign.or.jp


「分かりやすさ」に飛びつかず、「分からない」を尊ぶ

イベントの前半は、テーマである「間(AIDA)のデザイン〜私と私たちの間から生まれるもの」にちなみ、大本がモデレーターとなり、理事のニールセン北村朋子氏と、ゲストスピーカーで妙心寺春光院副住職の川上全龍氏が「間」について語りました。


ゲストのお二人による対話の中で、日本はもともと婉曲表現など曖昧さを受け入れる文化を持つ一方で、現在はどれだけ端的にわかりやすく話すかが重視されやすい傾向にあるという話に。それに対し、ゲストの川上氏がとある課題意識を共有しました。


川上氏:「今、過剰に分かりやすさがもてはやされているのは、安定した心地よさを求めているからです。でも実際の世の中は、複雑で曖昧ですよね。それを嫌がる文化が生まれているのが怖いと思います。経験と時間がかからないと分からないこと、言葉だけではわからない曖昧なもの、「わかる」と「わからない」の間が欠落している(本文から一部抜粋)」


コロナによってより不確実な状況に直面していますが、「わかる」と「わからない」の間を怖がらずに楽しむこと、曖昧なものと上手に向き合うネガティブケイパビリティが必要だと語りました。

謙虚さと好奇心が、曖昧な時代を突き進める原動力に

後半では、AIDA DESIGN LAB理事の大場氏、小島氏、坂本も参加し、議題は「間をリードする人材育成」へ。複雑性や曖昧さ、多様な価値観を受け入れながら人々をリードするために求められるマインドセットについて議論しました。


キーワードにあがったのは、「自分は知らない」という謙虚さ、不快さに立ち向かう好奇心。そのマインドセットを培うヒントとして、デンマークの教育へと繋がりました。


北村氏: 「デンマークの教育で面白いのは、謙虚な姿勢を持ちながら、いろんな可能性を排除しないことです。学校の先生だから全部知っているわけではないことを、本人も周囲も理解しています。誰もが完璧ではないし、完成形を見ることもできない。それでも少しずつよりよくできる可能性を見つけるにはどうすればいいかを考えるんです。これは禅の思想とも通ずる『ビギナーズマインド』だと考えています。(本文から一部抜粋)」


デンマークの教育ではルールはできるだけ少なくして、子どもたちが挑戦できる可能性をたくさん残し、社会全体でその自由度を許容している印象があります。「自由」と聞くと「フリーダム(何をしてもいい、自分らしく生きるという考えに近い)」の印象がありますが、デンマークの教育は「リバティー(自分がやりたいことをできるように闘争や努力、かつ他人に迷惑をかけない)」に近いのかもしれません。


AIDA DESIGN LABでは、不安定な間を受け入れ、つなぎ、リードできる人材を育てる「人材育成プログラム」、間で生まれたプロジェクトの支援、また本イベントのような間にまつわるテーマを考え議論できる場所をつくっていきたいと考えています。

▼ 記事『「間」を受け入れ楽しむことが、変化を生み出す一歩になる
━ AIDA DESIGN LAB ローンチイベント vol.1』はこちら
https://workmill.jp/webzine/aida-design-lab-event-20210719.html

Voice from Denmark

Hej! Laereコペンハーゲンパートナーの坂本舞です。今回は「間」のトピックに併せて、デンマークの教育における余白についてお話したいと思います。


デンマークには「フォルケホイスコーレ」という教育機関があります。特徴は18歳以上であれば入学資格があること、入学試験や成績表が存在しないこと、生徒と先生が校内の寮で寝食を共にすること。「人生の学校」「大人のための学校」などの愛称を持ち、日本でも知名度を上げつつあります。(Laereメンバーには5名、フォルケホイスコーレ体験者がいます!)


デンマークでは約70校のフォルケホイスコーレが存在し、オルタナティブ教育に位置付けられています。大学や大学院に進学する前のギャップイヤー、もしくは社会人になったあとでも「自分が本当にやりたいことは何か」を追求し、また年齢や国籍の異なる人々と生活を共に過ごす中で「自分はどんな人間か」を知ることができます。私の場合は、大学に入学する半年前にアートやデザイン、ファッションに特化したフォルケホイスコーレに通い、その経験がファッションデザインの道を進むきっかけに。学校のさまざまなプロジェクトや多分野で活躍する講師を通して、多くのインスピレーションをもらいました。私がデンマークで主催する子どもたち向けのデザインワークショップ「Design & Sew Camp(デザイン&ソー キャンプ)」(※ 7月のニュースレターでご紹介)のなかでもフォルケホイスコーレで得た学びを存分に活用しており、現在の活動にもつながっている経験です。


デンマークは、学び直しの機会を得やすい環境にあります。余白の時間のなかで、一度立ち止まって自分をよく省みて、好きなことに没頭できるのはとてもパワフルなことだと思っています。

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『Hej ! Laere』は、毎月届く、株式会社Laere(レア)からのお便りです。レアの最新情報やレアで話題になっている北欧トピックについて、皆様にこっそりお届けしていきます。”Hej(ヘイ)”はデンマーク語の「こんにちは」で、”Hej Hej(ハイハイ)”とふたつ重ねると「バイバイ」という意味になります。


またお会いしましょう!Hej Hej 👋

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