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Hej! Laere vol.34 旅、人々との出会いから学ぶ

こちらのnoteでは、Laereが定期的にお届けしているお便り『Hej ! Laere』をダイジェストにして公開しています。本ニュースレターは、2023年9月29日に配信しています。

産総研デザインスクール 欧州スタディツアー

2023年9月8日〜18日、弊社レアが企画・運営支援業務を担当する産総研デザインスクールにて、欧州スタディツアーを開催いたしました。このスタディツアーではオーストリアのリンツにて「Ars Elecrronica(アルスエレクトロニカ)」への視察、およびデンマーク(コペンハーゲン・オーフス)の視察が含まれており、弊社は企画とコーディネートを担当しました。産総研デザインスクールが始まった2018年より導入されている視察研修プログラムですが、アルスエレクトロニカへの訪問を合わせた完全体で開催されるのは4年ぶりとなりました。

アルスエレクトロニカとは、オーストリア・リンツで40年以上続くメディアアートの祭典です。その時々の時勢を反映したテーマに沿って、アートとデザイン、テクノロジーを融合した作品が街全体に展示されます。今年は「Who owns the truth?」というテーマで、フェイクニュースへの抵抗、AIと人間の共存に関する示唆ある作品が並びました。作品そのものからインスピレーションを得られることはもちろん、参加者どうしが交わす対話のなかで未来がうまれていく空間でした。

オーストリア・リンツで開催された「アルスエレクトロニカ」

その後デンマークでは教育機関や公的機関、民間企業の訪問、および多様な若者や市民との対話の場を設け、”人間中心の社会デザイン"を探求する一週間を過ごしました。さまざまな訪問先での出会いと対話を通して、受講生のみなさん一人ひとりの社会への眼差しを振り返り、自分たちが日本で果たすべき社会的使命について考えます。

自身の個人的な志と社会的使命を合わせていくプロセスは一筋縄でいくものではありませんが、多くの刺激やインスピレーションを受けて有意義な視察研修になりました。帰国後は本研修で得たインスピレーションを活かしながら、共創リーダーとして次のプロジェクトに進んでいきます。

デンマークの訪問先でワークショップを実施しました

産総研デザインスクールは、日本最大級の研究所「国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)」が、2018年よりスタートした先駆的な取り組みです。産総研の研究者や企業派遣技術者や新規事業担当者を対象に“共創リーダー”の育成を目指し、リーダーシップやデザイン思考を中心とした講義、プロジェクト実践を通して学んでいきます。また開講期間中、国内外で活躍しているゲストスピーカーを招聘して公開シンポジウムも開催予定です。ご興味がある方はぜひご参加ください。


Voice from Finland

「Voice from Finland」では、アアルト大学デザイン修士課程Collaborative and Industrial Designに在籍中のえりかさんにご寄稿いただきます。今回はえりかさんが夏休みに体験したサマーコース「Living colour」の様子、得た学びについて共有いただきます。

色を通して自然と触れ合う

Moido!(こんにちは!)フィンランドのアアルト大学に留学しているえりかです。前回のニュースレターでは、「フィンランドに一年間暮らして変わったこと」について、紹介させていただきました。今回は、今年の8月に受講したサマーコース「Living colour」について、ゆるりとお話しさせてください。

天然染色コース「Living colour」

第3回の記事「ウェルビーイングなアート授業」でもご紹介した、アアルト大学のアート系選択授業「TAITE」。この授業では、絵画やコミックアート、彫刻、版画、美術史、現代美術、色と知覚など、理論と実践を組み合わせた多彩なコースが毎年開講されています。

「Living colour」は「TAITE」が提供するサマーコースのうちの一つで、正式名称は「Living colour - an intensive, experimental, cross-disciplinary course on natural dyes and dyeing」。その名の通り、天然染料と染色について実践的に学ぶことができる、3週間集中のサマーコースです。

学生から非常に人気が高い「TAITE」は、どの授業も倍率が高く落選することもしばしば。このサマーコースにも、16人の生徒枠に、なんと60人以上の希望者が集まったそうです!そんな人気授業、「Living colour」を運良く受講することができたので、今回はこちらの授業を紹介したいと思います。

森で採取したソリダゴの色素を抽出し、ウールを染色

基礎から応用まで体験する3週間

コースには、テキスタイル、ファッション、コンテンポラリーデザイン、映画、建築など、異なるバックグラウンドの学生たちが幅広く集まりました。午前はレクチャー、午後は午前中に学んだことをラボで実践する、というのが一日の流れです。1週目は、基本的な天然染色の知識や技術についての講義からスタート。ラボの時間には染色前の下準備としてウールやコットンなどの繊維に染料を定着させる媒染作業を行いました。

2週目は、インディゴ、アントシアニン、アントラキノンやフラボノイドなどの色素を利用した染色実習がメイン。天然色素を抽出するため、スーパーで玉ねぎの皮を集めたり、晴れた日には、キャンパスの敷地内の森をみんなで散策して、様々な植物を採取したり。煮出して染液を作るだけでなく、植物の色や形をそのまま布地に転写する「エコプリント」にも挑戦し、実践を通して天然染色への理解を深めました。

さまざまな植物を組み合わせたエコプリント

3週目は、インディゴで染めた素材を使った3Dプリントや、異なる染料を組み合わせた染色など、これまでに学んだことを応用した実験実習です。最終日にはプレゼンテーションを行い、3週間の成果をまとめたポートフォリオをクラス内で発表しました。

映画専攻の学生はフィルムを染色したり、コンテンポラリーデザイン科の学生は貝殻を使ったオリジナル素材を染色したり、学生によってアプローチの仕方はさまざま。各自の専門分野と、天然染色を掛け合わせて作られたポートフォリオは、どれも見応えがあってワクワクするものばかり。私は配色デザインに興味があったので、今年の夏にパリの美術館で見たモネの絵画を参考に、「印象派カラーパレット」を作りました。

約70色の色見本を作成

フィンランドの自然と密着した授業

豊かな自然を満喫できる夏に行われた「Living colour」のおかげで、今まで以上にフィンランドの自然を身近に感じるようになりました。植物を採取するために訪れた森では、「この葉っぱはお茶にすると体に良いんだよ」「これは食べられるキノコだよ」と、フィンランド人のクラスメイトや先生に、豆知識をたくさん教えてもらいました!私にとっては、天然染色の知識や技術の習得よりも、フィンランドの自然と向き合う時間に、価値を感じる3週間だった気がします。

フィンランドでは、短い夏が終わりを迎え、9月の中頃から肌寒く感じる日が増えてきました。フィンランド語で紅葉は「ruska(ルスカ)」。フィンランドの森が、黄色やオレンジ、赤色と、色とりどりに輝く季節です。自然の色の変化を楽しみながら、秋のフィンランドを満喫したいと思います。

それでは、Nähdään!(また会いましょう!)

植物採取のために、クラスメイトと森を散策

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それではまたお会いしましょう!Hej Hej 👋

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