空白恐怖症

毎年、10月に手帳を買う。

未来を 誰よりも先に手にしたような気持ちになって、ワクワクする。

はじめに、大切な人たちの誕生日を書く。

1日1日埋めていく。自分がお祝いしたい人が、来年も傍にいてくれることを望みながら。

でも、こちらが覚えていても、相手は忘れている。そんなことは、今まで幾つもあった。

長年会ってない友人なら分かるが、今年は 祖母までもが忘れていた。

たいていは メッセージを送って、おしまいだからなのかもしれないけれど。それでも辛い。

何年も続くと、自分に友人など いなかったのではないか、という気さえしてくる。


話を戻そう。

空白恐怖症

もちろん、そんな病名はない。私が知っている限りでは、ない。

とにかく、手帳を埋めないと心配で、心配で仕方ない。

空白のスケジュール帳を見ると、自分が何もしていないみたいで、嫌になる。だから、どんな些細なことでも書く。

洗濯する・荷物を受け取る・誰かに連絡をする・預金する… 埋まっていく手帳を見ると、安心する。

寂しさを紛らわせているのかもしれない。私は一人が好きなくせに、独りになるのを嫌う。自分の脆さを、隠すのが上手いだけなのかも。

自分を幸せにできるのは、自分だけなのだと気づくことに、25年もかかってしまった。気付けたのが、早い方だと思いたいし、思うしかない。



手帳を見た同僚は、「びっしりだね。すごいね」と笑っていた。来年用に 表紙が黒いものを買ってしまったものだから、会社では「デスノート」と呼ばれている。


 


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