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美味しすぎない「ナポバーグ」

ナポバーグ。ナポリタン+ハンバーグでナポバーグ。その分かり易いネーミングセンスと、嫌われないメニューツートップの評価も過大ではない組み合わせ。そして何よりこの見た目である。

このコンビネーションだけでも反則なのに、洋食を過度に美味そうに見せてしまう魔法の鉄板に盛られている。これは流石に「美味すぎない」では済まないのだろうとお思いではないか。否、しっかりと美味すぎないのだ。

ハングリーハングリーの名物メニュー「ナポバーグ(920円)」。チーズが乗ってたり目玉焼きが乗ってたりする亜種もあるが、まさに看板、まさに名物。多くの人がオーダーする。

給仕のお姉さまがナポバーグを運んでくる。到着を待ちわびた客は、歓声と共に言葉をこぼすのだ「美味しそう…」と。

そしてこの一言がピークタイムになる。最高に「美味しそう」な瞬間なのだ。言ってしまえばナポリタンにハンバーグが乗っただけである。ノスタルジーは大人の心を狂わせる。ナポリタンを適量巻き取ることに集中すると、人は冷静になる。そして魔法は解けていく。

シャンデリアの下で感じる刹那の「美味しそう」は、耽美派の文学作品のようですらある。鉄板で熱され過ぎたナポリタンが地獄のように熱い。粉チーズが溶けてしまうほどの温度だ。隣の席のおばさまは鬼のような顔で食べている。子どもの眉間に皺が寄っている。高い天井に設置されたシーリングファンが、浮かんでは消える「美味しそう」を攪拌していく。


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