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美味しすぎない「ブレンドコーヒー」

最近のコーヒーはフルーティーなものが多く、農園ごとの個性すらあると言う。輸送手段の進化により、コーヒー豆を劣化せずに輸入できるようになったかららしい。以前は傷んだ豆を誤魔化すために深く焙煎するしかなかったのだとか。サードウェーブなんて呼ばれる店で飲める一杯が、コーヒー本来の味なのだ。

なんて話しをよく聞くが、薄くて酸味の強いコーヒーはどうにも合わない。「桃の香りがする」なんて言いたいのなら、ネクターを飲めばイイのだ。やはりコーヒーはどっしりと強い苦味がしっくりくる。こんなブームなんて早く終わってしまえばイイのに。

大学が立ち並ぶ五橋に店を構える「皇琲亭」。その名の通り店内にあるのは自家焙煎のコーヒーばかりだ。夏はアイスコーヒーがあるとのことだが、2月ではそれも望めない。私の考えに深みがないのはインスタントのせいらしい。

シングルオリジンもあるが、喫茶店はブレンドに限る。遠い国の農園オーナーの蘊蓄よりも、近くの喫茶店オーナーの嗜好を尊重したい。店主があれこれ組み替えて工夫を凝らしたブレンドは、コーヒーを介したコミュニケーションを可能にする。皇琲亭ブレンド(400円)を頼み、謎の木製パズルの解読に勤しむ。

感想なんてない。解けないパズルを片付け、押し付けがましいコーヒーの効能を読む。ミルのスイッチがオンになる度に、店の照明が一瞬暗くなる。コーヒーを飲む。ラジオから流れてくる音は7割がノイズに塗れて聞き取れない。

喫茶ハードボイルドへようこそ。


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