今週とくに印象に残った本3冊たち
ご無沙汰しております。毎日更新をあらためて、のんびり本を読んでおります。
今週は読書会のテーマだったファインマン『光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学』に手こずった一週間でした。
なぜ『ご冗談でしょう、ファインマンさん』にしなかったのか!と内心思いつつも「わからない」のも味わい。これも後ほど書いておきたい。
さて、ちょこちょことジャンル問わず読んでいたなかで、とくに印象に残った3冊をご紹介します。
行動経済学まんが ヘンテコノミクス
マガジンハウス
佐藤雅彦、菅俊一、高橋秀明
『プチ哲学』でおなじみ佐藤雅彦さんが原作のひとり。合間のちょっとした4コマ漫画やダジャレ込みのビジネス用語解説に「らしさ」を感じます。
BRUTUSで連載後、マガジンハウスから出版。企画立案からプレゼン、書籍化までのプロセスはあとがきに記されています。
一見、不合理とも取れる経済行動をなぜかしてしまう。まさに「人間とはかくもヘンテコな生きものなり」。その行動原理を漫画形式でわかりやすく、おもしろく描く。
いまや行動経済学は企業側のノウハウのようになってきているけれど、本書は生活者の味方。
リチャード・セイラーの言う「ナッジ」のように、漫画というやわらかい表現を用いて、肘でそっと小突いて知らせてくれます。
ダン・アリエリーの著書タイトル通り、ぼくたちは予想どおりに不合理なのですね。
虐殺器官
伊藤計劃
ハヤカワ文庫
9.11以降の近未来、監視社会となり自由を引き替えに安全を手に入れた世界。主人公は暗殺を専門とするアメリカ情報軍に従事する白人。
現実と地続きに感じさせながらも圧倒的なスケールで描く。ただ、主人公の「語り」は妙に落ち着いていて冷めています。
やがてテロから世界を守る正義のロジックのもと使命を果たしていた彼の前に、ねじまがった極端な利他主義者が現れる。
キーワードは器官。スティーブン・ピンカーの『言語を生み出す本能』では「言語とは人間が生存に適応するための器官」という説が唱えられている。
つまり生きるための予測が他者との比較そして自我をつくり、予測した情報共有としての言語が誕生した。それでは虐殺と器官はどのようにつながるか?
小説の恐ろしい未来と、横たわっている現実に「ちがい」があるのかはわからない。知り得ないから。ただ、それでも現実世界は廻っていて、ぼくたちは今日も生きていく。
パルプ・ノンフィクション: 出版社つぶれるかもしれない日記
三島邦弘
河出書房新社
ミシマ社、ライツ社、ナナロク社、左右社。大手ではないけれど、名前をちょくちょく目にする出版社。従来にない手法でこれからの出版社のあり方を模索するのがミシマ社。
本書は、出版不狂を打破すべく、実験を重ねてきたミシマ社の「もがき」の5年間を記録した一冊。サポーター制度の導入、書店の利益率を上げる試み、新たなレーベル、雑誌づくり。
突き動かすのはプリミティブな衝動であり、社長三島さんが言うところの「マグマ」。原点こそ突破口があるのだ!とひたすら光の射す方へ。
熱烈サポーターのひとりが地元の天草にミシマ社を招き、あれよあれよと本屋をつくったエピソードは胸を打った。
「何を書くべきか」と「どうやって経営していくか」この二つの葛藤が絡みった、オリジナリティに溢れる一冊ではないでしょうか。
というわけで以上です!
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